「話が通じない」の正体は、相手の“前提”にある

コミュニケーション
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はじめに — 読む前に押さえておきたいこと

あなたはこんな悩みを抱えていないだろうか?

仕事をしていると、「なぜこの人とは話が噛み合わないのだろう」と感じることはないだろうか。

こちらは合理的に説明しているつもりなのに、相手には伝わらない。むしろ話せば話すほど、お互いの認識がズレていく。

営業とエンジニア。企画と開発。現場と経営。

組織の中では、立場や役割が異なる人同士の衝突が日常的に発生している。

もちろん、単なる知識不足やコミュニケーション不足で説明できるケースもあるだろう。しかし、それだけでは片づけられない“根深さ”を感じたことがある人も少なくないはずだ。

互いに会社を良くしたいと思っている。サボろうとしているわけでも、相手を困らせようとしているわけでもない。それにもかかわらず、なぜすれ違ってしまうのか。

そして厄介なのは、多くの場合、自分の主張にも相手の主張にも、それぞれ一定の合理性があることだ。

だからこそ、「どちらが悪いのか」という話に落とし込もうとすると、かえって議論が進まなくなる。

我々はなぜ、これほどまでに“分かり合えない”のだろうか。

本書が示すこと(著者の主張)

本書が扱うのは、単なるコミュニケーション術ではない。

営業とエンジニアの対立を題材にしながら、人がなぜすれ違うのか、その構造そのものを整理している。

印象的なのは、「すれ違いをなくすべきもの」として扱っていない点である。

一般的には、組織の衝突は悪いものとして捉えられがちだ。しかし本書では、すれ違いを「多様性の発露」として位置づけている。

立場や役割が異なれば、見えている景色も変わる。異なるコンテクストを持つ人間同士が議論するからこそ、多様な意見が生まれる。そして、その多様性こそが、より良い意思決定につながっていく。

問題なのは、すれ違いそのものではない。

人は「アウトプット」の段階で対立しているように見えるが、実際には、その前提となるコンテクストやゴールの時点ですでにズレている。

だからこそ必要なのは、「どちらが正しいか」を決めることではなく、「なぜその考えに至ったのか」を理解しようとすることなのである。

本書では、そのための思考法として「仲介思考」が提示される。

謙虚さを持ち、相手のコンテクストとゴールを理解し、そのうえで双方にとってより良い解決策を発見する。このプロセスを通じて、対立を“潰す”のではなく、“活かす”という視点が示されている。

本書を読んで感じたこと(私見)

印象的だったのは、「分かり合えなさ」を前提としている点である。

これまで、「コミュニケーション能力が高ければ衝突はなくなる」「優秀な人同士なら議論は噛み合う」と考えてしまいがちだった。しかし実際には、経験や専門性を積み重ねた人ほど、自分の前提に強い合理性を持っている。

だからこそ、衝突は起こる。

そして、その衝突を単なる“相性の悪さ”として片づけてしまうと、本来得られたはずの多様な視点まで失われてしまう。

重要なのは、「相手を言い負かすこと」ではなく、「相手には相手の前提がある」という事実を受け入れることなのだろう。

特に印象に残ったのは、「アウトプットではなく、その前提を理解する」という視点である。

我々はつい、相手の発言内容や言い方ばかりに注目してしまう。しかし、その背景には、それぞれ異なるコンテクストやゴールが存在している。

この構造を理解するだけでも、「なぜ話が噛み合わないのか」に対する見え方は大きく変わるはずだ。

本書は、営業とエンジニアの関係を扱っているが、内容自体はあらゆる組織やコミュニケーションに応用できる。

「なぜ毎回同じような衝突が起きるのか」
「なぜ相手の考えが理解できないのか」

そんな違和感を抱えたことがある人にとって、多くの示唆を与えてくれる1冊である。

なぜ、営業とエンジニアはすれ違うのか

営業とエンジニアは仲が悪い。

これは半ば“組織あるある”のように語られるテーマであり、多くの人が共通認識として持っているものでもある。「A部門とB部門の関係が良くない」という状況自体は、組織である以上どうしても発生しうる。しかし、その代表例として真っ先に挙がるのが、営業とエンジニアの関係性だろう。

とにかく売上を伸ばしたい営業と、リスクを抑え、安定稼働できる状態でリリースしたいエンジニア。この両者の関係がギクシャクしてしまうことは想像に難くない。

一方で、このような「一見すると二律背反に見える関係性」は、営業とエンジニアに限った話ではないようにも思える。会社の中では、立場や役割の違いによって、同じ目標を掲げているはずの人同士が衝突してしまう場面が少なくない。

では、なぜこのような軋轢が発生してしまうのか。それは「解決できなくて当たり前」のものなのだろうか。そして、当事者や仲介者となる私たちは、どのように向き合っていけばよいのだろうか。

今回は、そんな問いに向き合う1冊を紹介したい。

話が長いエンジニア、答えを急ぐ営業 すれ違いを武器に変える「仲介思考」の育て方】(水谷 享平  著)

水谷 享平

東京大学大学院工学系研究科修了後、Googleに入社。技術営業・技術コンサルタントとして、エンジニアリングとビジネスの双方を横断するプロジェクトに携わる。その後、XRスタートアップSTYLYで執行役員を務め、プロダクトマネジメント、人事、経営企画、資金調達など幅広い領域を経験。さらにAI半導体スタートアップTenstorrentでは官公庁向けプロジェクトを推進し、現在はAIスタートアップBring OutでVP of AIとして新規事業開発を担っている。加えて、事業構想大学院大学の客員教授としても活動している。

「すれ違い」は、本当に悪なのか

品質を求めて工数をかけたいエンジニアと、利益を求めて原価を抑えたい営業。
技術的負債を解消したいエンジニアと、新機能を作ってほしい営業。
固まっていない仕様を外に出したくないエンジニアと、製品をデモしたい営業。

同じ会社に所属し、同じように会社の成長や社会への貢献を望んでいるにもかかわらず、営業とエンジニアはこのようにすれ違ってしまう。

そして、この構図は営業とエンジニアに限った話ではない。組織の中では、立場や役割の違いによって、どこかしらでギスギスした関係が生まれ、日々小さな衝突が発生している。

では、この状態は本当に“悪いもの”なのだろうか

同書の答えは“No”である

しかも、「エンジニアと営業はすれ違ったままでよい」という消極的な話ではない「エンジニアと営業は、すれ違っている方がよい」というスタンスなのである

多くの人は、関係性が良好であるほど組織にとって望ましいと考えるだろう。しかし同書は、この“すれ違い”を「多様性の発露」として捉えている

多様な視点を持つ集団の方が、最終的な意思決定の質は高くなりやすい。そして、営業とエンジニアのように立場や役割が大きく異なる関係は、自然と多様な意見が生まれやすい。

一方で、その多様性をうまく扱えなければ、仕事が滞ったり、関係性が悪化したりと、デメリットだけが表面化してしまう。

だからこそ、まず必要なのは、「すれ違い=悪」という前提を疑うことだ

この前提を持ったままでは、目の前の衝突をなくすことばかりに意識が向き、本質的な課題の解決が難しくなってしまう。

同書では、すれ違いに対して多くの人が抱いている“3つの誤解”を指摘している。

① すれ違いには犯人が存在する

営業とエンジニアの対立に代表されるように、片方が完全に正しく、もう片方が完全に間違っているというケースは、実際にはそれほど多くない。

多くの場合、それぞれの主張には、その立場から見れば合理性がある。

つまり、「自分が正しくて、相手が間違っている」という認識自体が、自分の立場から見た解釈に過ぎないのである。

しかも厄介なのは、多くの場合そこに悪意がないことだ。「相手を困らせたい」と思って発言しているわけではない。だからこそ、お互いに“なぜ伝わらないのか”が分からず、議論が平行線になってしまう。

② すれ違い自体を完全になくすべき

組織の中で衝突が起きると、「原因となっている人を教育しよう」という方向に進みがちである。

しかし、すれ違いが構造的に発生するものである以上、それは表面的な対処にしかならない

さらに言えば、「まったくすれ違いが発生しない状態」が理想とも限らない

営業とエンジニアでは、そもそも期待されている役割が異なる。その両者が常に同じ意見しか出さないとすれば、どちらか、あるいは双方が遠慮し、本来出すべき意見を飲み込んでいる可能性もある。

すれ違いとは、「存在しない方がよいもの」ではない。むしろ、発生することを前提に、それをどう乗り越えるかを考えるべきものなのである

③ すれ違いは放置しても問題ない

一方で、「すれ違いは避けられないのだから、放っておけばよい」という考え方も危険である。

営業とエンジニアの衝突は、「喧嘩するほど仲が良い」といった根性論で自然解決するものではない。

特に、「なんだかんだ上手く回った」というケースでは、その裏側で誰かが必死に調整を行い、無理や負担を引き受けていることが少なくない。

つまり、“放置しても問題なかった”ように見える状態は、実際には誰かの献身によって成立しているだけなのである

すれ違いとは、多様性の発露である

だからこそ、うまく乗り越えることができれば、より良い解決策につながる可能性がある。一方で、その構造を理解しないまま対処しようとすると、本来必要のない根回しや社内調整に追われ、「ギスギスした状態をゼロに戻すこと」にばかりエネルギーを使うことになってしまう。

その結果、本来たどり着けたはずの、より良い意思決定を逃してしまうのである。

すれ違いは「前提」から生まれている

なぜ、営業とエンジニアはすれ違ってしまうのか。

この問題を考えるうえで重要なのは、「人はどこですれ違っているのか」という構造を理解することである

私たちはつい、「相手の言っていることが間違っている」「認識にズレがある」「論理的ではない」といった形で、相手の“発言内容”に注目してしまう。また、「言い方がきつい」「文章が攻撃的だ」といったように、“伝え方”に問題を見出すこともある。

しかし、ここに大きな落とし穴がある。

私たちはアウトプットの段階ですれ違っているのではないそのアウトプットに至る“前提”の段階から、すでにすれ違っているのである

たとえば、営業側が「何を犠牲にしても今期の売上を達成しなければならない」と考えていたとする。一方で、エンジニア側は「現在のシステムは崩壊寸前であり、数か月単位でメンテナンスを行わなければ重大な障害が発生する」と認識しているかもしれない。

両者は、それぞれの立場から見れば合理的な判断をしている。しかし、そもそもの前提認識が異なるため、議論が噛み合わなくなってしまうのである。

同書では、コミュニケーションを

「コンテクスト → ゴール → アウトプット」

という流れで整理している。

つまり、アウトプットは突然生まれるものではない。その手前にある「どのような前提で物事を見ているか」と「何を目指しているか」が、最終的な発言や行動を決定しているのである。

そして私たちは、この“前提”を確認しないまま、アウトプット同士だけで議論してしまっている。だからこそ、すれ違いを根本的に解消できないのだ。

同書では、コンテクストを「ストック型コンテクスト」と「フロー型コンテクスト」の2つに分けて説明している。

ストック型コンテクストとは、育ってきた環境、受けた教育、キャリア、スキルなど、“今の自分を形作っているもの”の総体である。

これは、物事に対するイメージや解像度を大きく左右する。

たとえば、「テニス」「カレー」「化粧水」「ビットコイン」といった言葉を聞いたとき、なんとなく知っている人と、その種類や構造まで理解している人とでは、見えている世界が大きく異なる。

重要なのは、他人のストック型コンテクストは、完全には理解できず、変えることもできないという点である。

“他人”と“過去”は、もっともコントロールが難しい対象だ。だからこそ必要なのは、「相手も自分と同じ前提を共有しているはずだ」という思い込みを手放すことである。

一方、フロー型コンテクストとは、「現在どのような状況だと認識しているか」という現状認識にあたる。

たとえば、「今の自社における最大の課題は何か」と問われたとき、営業は「クライアント側の責任者変更によって契約見直しのリスクが高まっていること」と答えるかもしれない。一方、エンジニアは「ユーザー離脱率が上昇しており、数か月以内に改善しなければならないこと」を挙げるかもしれない。

この違いは、フロー型コンテクストの違いによって生まれている。

そして実際には、フロー型コンテクストによる現状認識が、「ストック型コンテクストのどこに注目するか」を決めている。

たとえば、人事部内で「離職率の高さが課題である」という認識が共有されたとする。この時点では、フロー型コンテクストは一致している。

しかし、その解決策として、

  • 表彰制度を導入すべき
  • 働く場所を自由にすべき
  • 福利厚生を見直すべき

と意見が分かれるのは、それぞれが異なる経験や価値観、つまりストック型コンテクストを持っているからである。

この構造を理解していないと、私たちは「なぜ相手がそんな考え方をするのか」を理解できず、コミュニケーションでつまずいてしまう。

さらに重要なのが、「ゴール」の違いである。

コンテクストが異なれば、当然ゴールも変わる。そしてこのゴールは、単なる役職や担当業務だけでは決まらない

営業もエンジニアも、「会社に貢献したい」という思い自体は共通している。しかし、それぞれ異なるコンテクストを通して世界を見ているからこそ、

  • 一刻も早く新規案件を受注すること
  • 将来起こりうる重大事故を回避すること

と、優先すべきゴールが変わってくるのである。

そして、その違いはアウトプットの「内容」だけではなく、「伝え方」にも現れる

エンジニアのゴールは、多くの場合「正確に開発・導入すること」にある。そのため、曖昧さを避け、厳密な定義や専門用語を用いる必要がある。

一方、営業にとっては“適度な曖昧さ”が重要になる場面も少なくない。

自社製品のあらゆるスペックが競合より優れているとは限らない以上、「相手のニーズを満たせる」と感じてもらえるかどうかが重要になる。そのためには、エンジニアから見れば危うく感じるような、“断定的な表現”が必要になる場面もあるのである。

このように、営業とエンジニアのすれ違いは、単なる性格や相性だけの問題ではない。

アウトプットの違いは、その手前にあるコンテクストとゴールの違いから生まれている。この構造を理解することが、すれ違いを乗り越える第一歩になるのである。

すれ違いを乗り越える「仲介思考」

このような“すれ違い”に対する打ち手として、同書では「仲介思考」が提示されている。

仲介思考は、

  • 謙虚さ
  • 理解
  • 発見

という3つのステップから構成されており、この順番で実践することで初めて機能する。

・謙虚さ

まず必要なのは、「相手には相手なりの背景があり、そのうえでこの発言に至っている」という事実を受け入れることだ。

これは簡単なようでいて、実際にはかなり難しい。

特に、専門性や経験を積み重ねてきた人ほど、自身のコンテクストやゴールに強い合理性を持っている。営業のプロとベテランエンジニアが衝突しやすいのは、双方がそれぞれの立場で成果を出し、その考え方を“成功体験”として積み上げてきたからでもある。

そして、自分の前提が正しいと評価され続けてきた人ほど、「相手にも何か理由があるはずだ」と考えることが難しくなる。

相手が若手社員であればなおさらだ。経験や役職の差によって、相手の背景を理解する前に、自分の正しさで押し切れてしまうからである。

同書では、謙虚さを身につける方法として、

  • 脊髄反射的に批判しない
  • 越境経験を積む
  • 他者に教えを請う

といった行動を挙げている。

特に“越境経験”は重要だ。

異なる職種や立場に触れることで、自分のコンテクストが絶対ではないことに気づきやすくなる。また、自分が「教わる側」に回る経験を通じて、他者の前提を尊重する感覚も育まれていく。

・理解

次に必要なのが、「理解」である。

ただし、ここでいう理解とは、単に相手に共感することではない。同書では、「相手のフロー型コンテクストとゴールを理解すること」と整理されている。

フロー型コンテクストとは、現在の状況認識のことである。

ストック型コンテクストのように、その人の人生や過去をすべて理解する必要はない。そのため、「今どのような状況を見ているのか」を確認するだけでも、コミュニケーションは大きく変わる。

具体的には、

  • 現在どの業務を優先しているのか
  • なぜその意見に至ったのか

を確認することだ。

こうした会話を通じて、私たちは初めて“アウトプットの裏側”にアクセスできるようになる。

さらに重要なのが、「ゴール」の理解である。

ゴールには、役職や担当業務によって与えられる“外的なゴール”と、その人自身が大切にしている“内面的なゴール”が存在する

外的なゴールは比較的見えやすい。営業なら売上、エンジニアなら安定稼働など、役割によってある程度共有されているからだ。

しかし、実際にアウトプットへ大きな影響を与えるのは、むしろ内面的なゴールである。

たとえば同じ営業でも、

  • 数字を伸ばしたい
  • 顧客に喜んでもらいたい
  • 自社製品の魅力を伝えたい
  • 営業プロセスを効率化したい

など、モチベーションの源泉は人によって異なる。

外から見れば同じ役割を担っているように見えても、内面的なゴールが違えば、発言や意思決定も自然と変わってくるのである。

・発見

最後のステップが、「双方にとってより良い解決策を発見すること」である。

その第一歩として重要なのが、「それは何のためか?」と問い直す癖を持つことだ。

目の前のタスクだけを見るのではなく、そのタスクが何を目的として存在しているのか、一段上の視点から考えるのである。

たとえば、「この機能をいつリリースするか」という議論で対立していたとしても、その目的が「顧客離脱を防ぐこと」なのか、「競合との差別化」なのかによって、選択肢は変わってくる。

上位の目的まで視点を引き上げることで、初めて「別の解決策はないか」を考えられるようになるのだ。

営業とエンジニアは、一見すると相反する存在に見える。しかし、謙虚さを持ち、相手を理解しようとすることで、「どちらかが我慢する」のではなく、双方が納得できる落としどころを見つけやすくなる。

そして重要なのは、最初から完璧に実践しようとしなくてよいということだ。

相手がいる以上、自分ひとりでは解決できない場面も多い。しかし、普段からこうした思考プロセスを意識しておくだけでも、衝突が起きたときに建設的な議論へ持ち込みやすくなる。

仲介思考とは、単なるコミュニケーション術ではない。すれ違いを前提としたうえで、多様な立場をつなぎ直し、より良い意思決定へ導くための思考法なのである。

「分かり合えなさ」と、どう向き合うか

仕事をしていると、「なぜこの人はこんなことを言うのだろう」と感じる場面がある。

営業とエンジニア、企画と開発、現場と経営。立場が異なれば、優先順位も、見えている景色も変わってくる。そして私たちは、その違いを“性格”や“相性”の問題として片づけてしまいがちだ。

しかし同書は、そうしたすれ違いを単なる対立ではなく、「異なるコンテクストとゴールから生まれる構造的な現象」として整理している。

だからこそ重要なのは、「どうやって相手を論破するか」ではない。

相手には相手の合理性が存在することを認め、どのような前提からそのアウトプットに至っているのかを理解しようとすること。そして、その違いを消そうとするのではなく、“異なるまま接続する”ことなのである。

これは決して簡単なことではない。

むしろ、経験を積み、専門性を持ち、自分の成功体験を積み重ねてきた人ほど難しい。自分の見ている世界に合理性があるからこそ、他者の前提を想像する余白を失ってしまうからだ。

それでもなお、異なる立場の人間が協働しなければ、複雑化した組織や社会の問題は解決できない。

本書で語られる「仲介思考」は、単なるコミュニケーション術ではない。分かり合えなさを前提としながら、それでも対話を諦めず、多様な意見をより良い意思決定へつなげるための思考法である。

組織の中で、
「なぜこんなに話が噛み合わないのか」
「なぜ毎回同じような衝突が起きるのか」
と感じたことがある人にとって、本書はその“違和感”を整理する助けになってくれるはずだ。

そして何より、本書の魅力は、「すれ違いをなくそう」としない点にある。

違いを消すのではなく、違いが存在する前提で、それでもより良い解決策を探していく。その視点は、営業とエンジニアの関係に限らず、あらゆる組織やコミュニケーションに応用できるものだろう。

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