「ここだけはおさえて」ポイント
どんな人におすすめ?
・生成AIをもっと使いこなしたい、活用方法を知りたいと思っている人
・「生成AIって要約ツールでしょ?」と思っている人
ポイント①
生成AIの台頭は「成長」や「成功」のあり方を変えた
ポイント②
生成AIはあなたの強力なパートナーであり“共創”のツール
ポイント③
内なる声に耳を傾けることが、価値創出のカギ
読みやすさ:★★★★☆
「生成AIが何をもたらしたのか」を明確にしてくれる1冊。難解な部分もなく、読後には「使ってみよう」という気持ちにさせてくれる。生成AIに対する理解が深まると同時に、活用方法がイメージできるように。
ChatGPTを、ただの便利ツールだと思っていませんか
「生成AIのすごいところは?」と問われたら、あなたはどう答えるだろう。
- 大量の情報をもとに、即座にそれらしい答えを出してくれる
- 作業の効率化が図れる
- 何度もやり取りをすることで、カスタマイズができる
このような回答が多いのではないだろうか。つまり、多くの人は「ものすごく便利なツール」として捉えている。
しかし、生成AIがもたらした変化は、単なる効率化にとどまらない。その変化について教えてくれるのがこちらの1冊だ。
【努力革命 ラクをするから成果が出る! アフターGPTの成長術 】(尾原和啓/伊藤羊一・著)
尾原和啓
1970年生まれ。IT批評家。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座を修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げを支援した。
その後、リクルート、KLab(取締役)、サイバード、オプト、Google、楽天(執行役員)など、多くの企業で事業企画や新規事業に従事。現在はシンガポールやバリ島を拠点に活動し、内閣府の新AI戦略検討会や経済産業省の対外通商政策委員などの公職も歴任している。
著書には『アフターデジタル』や『プロセスエコノミー』などがあり、IT業界における深い知見と多彩な経験を基に、現代のビジネスや社会の在り方について鋭い洞察を提供している。
伊藤羊一
東京大学経済学部を卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)で企業金融や企業再生支援に従事。その後、プラス株式会社で事業再編を手がけ、2015年にヤフーへ入社。Zアカデミア学長として次世代リーダー育成に取り組む。
2021年には武蔵野大学アントレプレナーシップ学部を開設し、学部長に就任。2023年には「Musashino Valley」を立ち上げ、スタートアップ支援を行う。
著書には、ベストセラー『1分で話せ』をはじめ、『1行書くだけ日記』『僕たちのチームのつくりかた』などがある。
著書には、60万部を超えるベストセラーとなった『1分で話せ』や、『1行書くだけ日記』、『FREE, FLAT, FUN』、『僕たちのチームのつくりかた』などがある。
生成AIは、誰もが80点を獲得できる時代をもたらした
あなたは生成AIをどのように活用しているだろうか。
- 議事録の作成
- 画像生成
- プログラミング
- ナレーション
活用の幅は広く、私たちの業務を肩代わりすることで多くのメリットをもたらしている。
しかし、少し考えてみてほしい。これらのメリットが誰にでも得られるということは、もはや差別化にはならない。つまり、誰もが80点の仕事をできる時代になったのだ。
言い換えるならば、会議の要旨を短時間でまとめることや、動画に上手なナレーションをつけることは、もはや大きな価値ではない。むしろ、**「どのような目的で生成AIを活用すれば良いのか」**を考えられる人こそが、他者との差別化を図れる。
生成AIの台頭を「便利なツールの登場」と捉えるだけでは不十分である。求められるのは、「80点を目指す世界」から「80点を100点にする世界」へとシフトする視点なのだ。
生成AIは“敵”ではなく“味方”
生成AIに仕事を取られてしまうのではないか。
最近よく耳にする懸念である。同書の立場に則ると、答えはYESだ。80点を取る仕事が、人の仕事からAIの仕事に変わるのである。
しかし、これはマイナスを意味する変化ではない。単に、人間の役割が変わっただけだ。これからの時代に求められるのは、80点を100点にする仕事である。つまり、生成AIにはできない、あなた固有の価値を提供することだ。
あなた固有の価値とは、言い換えるならば“尖った価値”だ。万人にちょっとだけ響くようなものではなく、あなたと同じものを好きな人たちに強く刺さる、こってりとした価値である。一見「マニアックすぎる」と揶揄されるような嗜好が、むしろ重宝される時代となるのだ。
一方で、他人の価値観に委ねて生きてきた人にとっては、分岐点が訪れている。「良い大学に入ることが良い」「大企業に入れば将来が保証される」といった価値観に基づいた努力が、差別化や価値創出につながりにくくなっているのだ。
ただ、焦る必要はない。これからの時代の流れに適応していけば良い。
あなたが熱中しているものは何だろうか。アイドル、インフルエンサー、コンテンツ——さまざまだろう。しかし、多くの場合「これをビジネスに活かそう」という意識はないはずだ。要は、“純粋に好きだからハマっている”のである。
この“純粋に好きだからハマっている”が、これからの時代の価値となる。生成AIには、ハマることによる知識の濃さや偏りがないため、どうしても普遍的にならざるを得ない。言い換えると、あなたの専門性が、最大の強みになるということだ。
そして、80点から100点を目指すために必要なのが「共創」という考え方となる。あなたの“好き”を社会のメリットに転嫁する方法を、生成AIと共に探る。そんな時代が、今まさに到来しているのだ。
社会の尺度に身を任せてはいけない
前述の通り、生成AIの登場により、あなたの“好き”が差別化要素となる時代が訪れた。これからは「年収」や「大企業」といったわかりやすい尺度が、成功や幸福の指標ではなくなっていくということだ。
社会が提示する普遍的な尺度ではなく、あなた自身が活き活きとできる尺度を大切にすべきである。要するに、定量的で普遍的な基準ではなく、あなたの“好き”を判断基準にしようということだ。それはつまり、美意識に基づくものだ。
上記の記事でも紹介している通り、あなたの“好き”がこれから非常に重要視される時代になった。昨今、アート思考が注目されたり、自分らしい生き方が推奨されている背景には、この時代の流れがある。もしあなたが、「これまで誰にとってもわかりやすい“成功”を目指して努力してきた」と感じているのであれば、その考え方を刷新することで、現状のモヤモヤがかなり軽くなるかもしれない。
まとめ – 「生成AI = よく分からない怖いモノ」という解釈はもったいない –
一言で言えば、「生成AIは本当にすごい」。それが今、私たちが直面している現実だ。これまでの成長や成功の概念を根本から覆す力を持っていることは明らかであり、私たちの仕事の一部がAIに置き換わる可能性は、もはや避けられない。
しかし、これをネガティブに捉えるのは実にもったいないことだと強調したい。重要なのは、普遍的な価値ではなく、あなた自身の個性や“好き”を発信することだ。この変化こそが、これからの時代における「幸せ」なのではないだろうか。
あなたが心から愛しているものは何だろうか。
それが社会に喜びをもたらす価値となる。あなたの「好き」を大切にし、変化を前向きに受け入れよう。あなたの個性こそが、今の時代に求められている。
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