“キャッチコピー”は誰のためのもの?

技術・考え方を学ぶ

この三連休、精神的にもの凄くGoodな三連休となりそう。友人のおめでたいイベントもあれば、自分が好きな時間を過ごせたこともあり、秋の気候が心地良すぎることも然り。もう少しすると“食欲の秋”感が出てくるのだろうか。

そういえば、数日前スーパーでシャインマスカットが売られているのを発見し、手にとってしまった。ふるさと納税だと、シャインマスカットは夏頃までに申し込みが締め切られる認識であったので、ブドウと異なりすでに売られていないものだと思ったのだが。昨年初めてシャインマスカットと出会い、その美味しさに感動し、「来年のふるさと納税はシャインマスカットにしよう」と自分に誓いを立てていたのにも関わらず、このような形での再会となってしまった。人間の意志の弱さを痛感しつつも、美味しかったから良しとする。

さて、果物売り場でも本屋でも街中の至るところでもそうなのだが、特に購買が生まれる場において、POPを目にすることは少なくない。「種無し大粒」であったり、生産者さんの声、書店員さんの感想など、それだけで購買につながることはない気がするものの、それが購買の後押しになったりする。

POPなどの実物を目にするものに限らず、自分は人の購買意欲を掻き立てる言葉“キャッチコピー”にやられてしまうことが多いタイプの人間だと思う。例えばこの言葉。

「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」

何回見てもやられてしまうこの言葉。おそらく一番好きなキャッチコピー。おそらく同じ人も少なくないのではないだろうか。結婚情報誌は食料品のように何年、何十年も買い続けるものではないが、もしこのくらい心踊らされるキャッチコピーに武装された食料品が存在していたら、ずっと応援してしまうのだろうなと想像してしまう。

なぜこんなに揺さぶられてしまうのだろう。売れるためのキャッチコピーとは、どのように紡ぐのだろうか。言葉のセンスはどのように培うのだろうか。

【キャッチコピー力の基本 ひと言で気持ちをとらえて、離さない77のテクニック】(川上徹也・著)

同書はタイトルの通り、人の気持ちをとらえ、グッと掴むためのキャッチコピーのテクニックが集約された書籍である。マーケティングや校正などのベーシックな知識がない自分にとっては、なるほどなと感じるテクニックが多かったが、

– 相手を想像し、思いやることで、良いキャッチコピーを紡ぐことができる –

これに尽きるのではないかと思う、というのが自分の所感だ。

例えば、

「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」

これは相手の心に「なぜ」を作り出すキャッチコピーである。「会計って何だか難しそうだな」と感じてしまう人たちにとって、ここまで心理的な抵抗感がなく手に取ろうを思えるキャッチコピーはなかなかないのではないだろうか。お勉強する書籍ではなく、心に作り出された「なぜ」を解消するための書籍として打ち出すことで、読者の購買意欲を掻き立てることにつながっているのではないかと思う。

キャッチコピーの中に、得になることや効果を入れることも効果的であるそうだ。

「あなたの店の売上が1ヶ月後に30%増える画期的な方法とは?」

商品やサービスの説明は一切していないのにも関わらず、気になると感じる人は少ないないのではないだろうか。「売れる営業マンは自社サービスや商品のスペックや長所より、お客様のメリットやポジティブな変化を伝え、購買のための背中を押してあげる」と言われているが、同じロジックで説明できる。「売れること」を目指してしまうと自社サービスや商品に目が行きがちであるが、その先に存在するお客様のことを想像しなければ、心を掴むことは難しいのだろう。

「35歳からの『友だち』のつくり方」

こんなふうに、ターゲットを絞るのも効果的だという。要は自分事と思わせられると“刺さる”のだそうだ。自己啓発書や保険などに特にこの傾向が強いように思えるが、やはり「あたりまえだけどなかなかできない25歳からのルール」「28歳からのリアル」などと書かれると、目に飛び込んでくるのは頷ける。

上述の他にも細かなテクニックがあり約70個程度存在しているが、いずれも相手となる買い手を思い遣っているが故の刺さるテクニックばかりであると感じた。どちらかというと“自己啓発!”といった気張った心意気ではなく、単純な「なるほど」が欲しくて手にとったのだが、結果的に自己啓発させられてしまった一冊となった。裏切りが嬉しい読書の秋。

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