「ここだけはおさえて」ポイント
この本が届く人・届いてほしい人
- 毎日タスクをこなすことに追われ、ふと気づけば「効率よくやること」だけが目的になってしまっている
- 評価されるため、成果を出すために、がむしゃらに努力してきたはずなのに、どこかで「これでいいのか」と立ち止まってしまう
- 忙しい毎日の中で、「もっと早く」「もっと上手く」を求めるばかりに、やりがいや人とのつながりを感じる余裕がなくなっている
効率的 = 結果が出る、なのか?
必要以上に、生き急いでいないだろうか。
短時間で多くの物事をこなすことは、確かに価値のあることだ。現代人にとって時間はいくらあっても足りない。だからこそ、「効率的であること」は正義のように語られる。
けれど、本当にそれだけでいいのだろうか。
望んでいる以上に効率を追い求め、必要以上の成果を目指して、走り続けてはいないだろうか。
特に、誰かと一緒に成果を出したいと願うならば——つまり「他人を巻き込む力」が求められる場面では、効率だけでは立ちゆかなくなる瞬間がある。
たとえば、すぐに成果に結びつかない雑談の時間。無駄に見える根回し。答えが決まっていない状態で、あえて人と話しながら考えるプロセス。
そういった行動は一見「非効率」だ。でも、それらがなければ動いてくれない人がいる。むしろ、そういったプロセスを経るからこそ、周囲が本気で巻き込まれていく。
それでもなお、効率を優先するべきなのか?それとも、一見遠回りに思えることのなかに、成果への本質があるのか?
今回紹介するのは、そんな問いに真正面から向き合った一冊だ。
【非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方】(黒田剛・著)
黒田剛
書籍PRの専門家であり、株式会社QUESTO代表取締役。1975年、千葉県の書店経営者の家庭に生まれる。大学卒業後、書店の外商部門を経て、2007年に講談社に入社。数々の書籍の広報・宣伝を手がけ、2017年に独立。PR会社「株式会社QUESTO(クエスト)」を設立した。
講談社在籍時には、『妻のトリセツ』(黒川伊保子)、『いつでも君のそばにいる』(リト@葉っぱ切り絵)、『続 窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子)など、累計数十万部を超えるベストセラーを多数輩出。現在もKADOKAWA、マガジンハウス、主婦の友社、岩崎書店などで書籍PRを担い、業界内外から高い信頼を得ている。
“あなたのため”が、人を動かす
営業マンであると仮定してほしい。
あなたの手元には、顧客リストがある。各企業に営業メールを送るとき、どうするだろうか。
効率を重視するなら、テンプレートを作り、一括送信するのが理にかなっている。作業時間は短縮でき、タイパも抜群だ。
だが、それで相手の心は動くだろうか。
「私に向けた提案だ」と感じられない限り、人は興味を持ってくれない。リンクをクリックしてもらう以前に、目を通してすらもらえないこともある。
転職を経験した人なら、転職エージェントから届くメールを思い出してほしい。似たような文面の「おすすめ求人のご紹介」が毎日のように届くが、その大半はスルーされてしまう。
逆に、「この人に会って話を聞いてみよう」と思うのは、自分の経歴や志向を踏まえて、具体的な企業やポジションを提案してくれるエージェントだ。そこには、あなたに向き合った痕跡がある。
つまり、人を動かすアプローチには、「効率的であること」を一度手放す勇気が必要になる。
一見、遠回りに見える「相手ごとに内容を変える」手間こそが、信頼や共感を生むのだ。
これは、営業メールだけに限った話ではない。すべての仕事に通じることだ。
仕事とは、本質的には「誰かの困りごとを解決すること」だ。同じ商品を売る場合でも、相手が抱える悩みやニーズは一様ではない。それを見極めずに一律の提案をしても、「届いた感」は生まれない。
だからこそ、「私のために考えてくれた」と思ってもらえるような、丁寧なコミュニケーションが必要になる。そしてそれは、ときに非効率的に見える。
けれど、その“非効率”を積み重ねた先にこそ、大きな成果が待っている。
他人と違う道を選ぶという戦略
効率的に行動することが、必ずしも大きな成功をもたらすとは限らない。
そう分かっていても、「あえて非効率な選択をする」のには、勇気がいる。
なぜなら、効率的であることは見た目にも分かりやすく、「良いこと」として広く受け入れられているからだ。効率性を追求する行動は、他の多くの人とも足並みがそろいやすく、安心感がある。つまり、効率的な行動とは「多数派がとりやすい行動」でもあるのだ。
だが、仕事で成果を出すには、人と同じことをしているだけでは足りない。誰とも違う結果を出したいなら、誰とも違うプロセスを選ばなくてはならない。突き抜けた能力があるわけでもない限り、他人と同じルートでは似たような成果しか出ないのが現実だ。
つまり、自分だけの成果を求めるなら、自分だけのやり方を見つける必要がある。
多数派から外れるのは怖い。非効率に見える行動は、不安を伴う。だが、それこそが他人と差がつく領域でもある。
非効率思考とは、「他人と違う道を選ぶ」という勇気を後押ししてくれる考え方だ。効率一辺倒の時代において、忘れられがちな本質を思い出させてくれる。
まとめ – 成功とは、「人と違う道」を歩んだ先にある
「効率的に動くこと」は、現代社会において強く求められている価値観である。タイパ・コスパが重視され、「最短距離で成果を上げること」が当然のように良しとされる。
しかし、私たちが心を動かされた瞬間や、印象に残っている体験を思い出してみると、それらが必ずしも効率的なプロセスから生まれたわけではないと気づく。遠回りで、面倒で、相手のために手間をかけたときこそ、人の心が動き、物事が深く届いていたはずだ。
本書が繰り返し伝えているのは、「あえて非効率な行動を選ぶことの価値」である。
それは、ただの逆張りではない。多くの人が効率性を追い求める時代において、「非効率に見える行動」は少数派になる。だからこそ、そこに差別化の余地があり、価値が宿る。
人と同じ行動をすれば、似たような結果になる。人と違う行動をとれば、違う景色が見えてくる。
成功とは、「自分にしかたどり着けない場所」に向かうことだとすれば、効率性から一度距離を置くことは、その第一歩になりうる。非効率思考とは、他人と違うやり方を肯定し、あなたなりの道を照らしてくれる考え方なのである。
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