“センス”の正体

知見を広げる

ブックカフェって、どんな人がどんな時に訪れる場所なのだろうか。基本的には本屋より敷居が高いので、本好きが多いのかなと推測する一方、友人同士やカップル、海外の方など、一見すると“ザ・読書家”オーラを放っていない人も少なくない気がする。ソファでゆっくりとした時間を小説で満喫しているような人もいれば、デスクで熱心に自分の知識を身につけている人、カウンターで旅行雑誌を眺めつつ、ワクワクした気持ちを膨らませている人など、人だけでなくシチュエーションもさまざま。しかしながら、自分にとっては「本屋やwebサイト上の本棚とは違う本棚を眺め、小説と出会って没頭して読みたい気分の時に訪れる場所」以外の場・シチュエーションになったことはなかった気がする。先週久しぶりにブックカフェを訪れた際も、同じ場・シチュエーションを求めてのこと。

そんな時に出会った書籍が本書である。

【センスは知識からはじまる】(水野学・著)

本屋で見たことがある表紙であるような気もするし、ということは平積みであるのだから、有名な本なのだと思う。カレーが食べたい時に、友人からカレーを提案されると、カレーの口になってしまうように、小説の口(目)であったのにも関わらず、なんとなく引かれた。自身の自己啓発・ビジネス書に対する読書スイッチと、小説の読書スイッチは異なっている。そのため、知識をインプットするつもりではなく「センスってなんぞや」と雑学の答えに触れにいくような感覚で手に取った。

クリエイティブなお仕事をされている方がご自身の血肉とすることを目的とする場合もあれば、自分のように教養として読む場合もあるのだと思うが、本書を読了したのちに「センスとは何か?」と問われれば、自分の答えは以下の通りである。

ー “普通”を知っており、ほんの少しの差により、画期的に異なっている状態を生む、後天的な力 ー

まず、センスを培うには、“普通”を知っていなければならないのだという。著者曰く、センスとは「数値化できない事象の良し悪しを判断し、最適化する能力」であるそうだ。数値化できないものが相手であるからこそ、“普通”を知っているかどうかが、センスを発揮できる可能性を変えるのだという。自身が解釈できない、よくわからないものに惹かれないことからわかるように、人は自身の知っているものの延長線上にある対象物にしか魅力を感じることができないからこそ、一般的な感覚を養う必要がある。

“普通”を知るためには

①王道から解いていく

②流行を知る

③今あるものの共通項・一定のルールを探る

の3stepを踏んでいくと良いのだそうだ。文字にするとあたりまえのアクションばかりな気もするが、実際にやってみると、その分野において最適化されている王道の魅力を改めて説明することや、流行っているものの理由をうまく説明することはなかなか難しいのだろうなと思う。

また、センスを発揮した企画を目指すにあたり「あっと驚くヒット企画を目指すこと」ではなく「あまり驚かないけど売れる企画を目指すこと」が重要なのだという。びっくりさせたいのではなく、売れることが本質なのであれば、この考え方は覚えておきたい。

すでにあるものに目を当て、ほんの少し飾ってあげることで、画期的なものが生まれることも、同書には記してあった。具体的には“シズル感”を創出するのだとか。人が美しいと感じる背景には、その人がもつ知識に結びついた背景があり、その知識をしっかりと演出してあげられるかどうかが、知識の量・深さにかかってくるのだという。センスが知識からはじまる後天的なものである、というのも頷ける。

仕事に直結する内容なのかどうかはまだわからないが、自分にはない、新しい1つの考え方に触れることができた読書になり、小説とは違うベクトルでの読了感があった。ちなみに、読了後に感化され書籍デザインの資料集を眺めることとなった。結局はその後、小説に戻ってしまったのだが。

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