ブラックフライデーに関する情報が流れてきている傍ら、福袋に関する情報ちらりほらり。人気の福袋などは結構気になったりするものの、毎年なんだかんだ忘れてしまう気がする。「値段で躊躇っているなら買え!値段で買おうとしているならやめろ!」はそれなりに真理だと思うので、ムダ使いにならないのは良いのだが。とはいえ、あのお正月感にお金を出す価値があったりもするので、難しい。徐々に徐々に寒くなってきたのことは実感しつつも、ちょっと前の三連休が恋しくなるくらいには、まだ正月は遠い。
いつも狙っている訳では決してないのだが、今回は冒頭のつぶやきに関連した、”モノを売る”ことに関する一冊のご紹介。
もしあなたがある企業のマーケティング責任者となった際、自社商品の値付けはどのような方針で実施するだろうか。
- 原価から逆算する
- 同業他社よりも可能な限り安くする
- 値上げは基本的には良くないことで、ネガティブな外的要因以外では実施しない
「これ、よくよく考えるとおかしくない?」と疑問を提示してくれるのが同書である。
【厚利少売 薄利多売から抜け出す思考·行動様式】(菅原健一・著)
価値の高め方—価格と提供する変化で差をつける方
商品や個人の価値はどのように高めるべきか。同書では次の3つの方法が示されている。
- 価格を上げる
- お客さんを減らす
- 高い価値を提供する
これらは「厚利少売」という考え方に則っている。
商売の本質は、困っていることを助けることである。そして、「困っている人を助ける」という行為を抽象化すると、それは相手に与えるプラスの変化を大きくすることになる。この変化の大きさこそが、同書で定義される「本質価値」である。
与える変化が大きければ、本質価値は高くなり、その結果、顧客は購入を決断する。これは売り手と買い手双方にとって喜ばしいことであり、原価や同業他社の価格設定は一切関係ない。自社の商品を販売する際は、本質価値に見合った価格を設定するべきということだ。
ポイントは「売上脳」から「利益脳」へのスイッチ
「価格を上げたら誰も買ってくれなくなり、売上が落ち込んでしまう」という考えに対する解決策も同書には記載されている。
提示した価格に対して「高い」と言われることもあるだろう。このとき、お客さんは「売上脳」的思考に陥っている。目先の金額のみが思考を支配している状態である。一方、提示された金額を“コスト”ではなく“投資”として捉えてもらえた場合、反応が一変する。要するに、提示された金額に対して生まれる変化量に目を向けてもらえるようにすることがカギとなるのである。
このスイッチングを実現するため、著者は「異常値になり、お客さんを減らせ」と説いている。他者には真似できない異常値になることで、ターゲットとすべきお客さんを敢えて減らし、限られたお客さんと本気で向き合う状態を創ることを薦めているのである。たとえ対応できる供給量に余裕があったとしても、決して売上脳に支配されず、徹底的にお客さんと向き合うことで、高い本質価値を提供し続けることができるのだ。とにかく多くのお客さんに、可能な限り安くという薄利多売の考えに至りがちな私たちが思い出すべき“モノを売る”ことの楽しさは、ここにあるのではないだろうか。
「付加」価値と「本質」価値
価格を上げるためには、付加価値と本質価値の違いを理解しておく必要がある。本質価値とは「商品やサービスの核心に迫る価値」であり、付加価値とは「商品やサービスの本質価値に追加される俯瞰的な価値」である。同書で紹介されているマッサージを例にとると、以下のようになる。
本質価値:施術の技術
付加価値:リラックスできる環境、アフターケア、個別カウンセリング、フレキシブルな営業時間、など
著者は、まずこの2つの価値の違いを理解しておくことが重要であることを示しつつ、付加価値(と思っているもの)が本質価値となり得ることも示している。
例えば、朝方や夕方に施術を受けたいと感じている人のみをターゲットとし、そのターゲットに対して大きな変化を与えることができるならば、それは付加価値ではなく、本質価値と言えるのである。夜遅くまで働いているビジネスマンが気軽に立ち寄れる空間とは? 毎日疲れているが、どんな時により強く癒されたいと感じるのか? 与える変化の大きさを考えることで、より異常に、より本質的な価値を高値で提供することができる。
まとめ
当たり前だが意外と忘れがちな”モノの売り方”を通して、価値についての学びが得られる一冊である。考え方は自分自身のスキルアップにも転用でき、納得感もあり、読みやすい一冊だ。ちなみに自分は、
【顧客の数だけ、見ればいい 明日の不安から解放される、たった一つの経営指標】(小阪裕司・著)
を読んでみたくなった。真逆の考え方が紹介されているのか、それとも核となる部分は通じているのか。ガチっと何かがつながったら嬉しい限りだ。
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