起業を成功させるには、あなた自身の”ワガママ”を愛そう

人生設計・目標設定

12月9日。3週間って、絶妙な期間である感じる。ちょっと手が届きそうで届かない、そんな距離感の目標を掲げる期間としてぴったりだと思う。個人的には、「目標」と呼ぶほど大げさなものではなく、「年内にあれを食べに行きたい、いや、行かなくては」といった、少し面倒だけど自分の欲求に素直になるようなこと。年末に向けて自分を労う意味も込めて、それを目標にするのがいいのではないかと感じている。もちろん、努力を伴うものだけど、「〇〇の整理をしたい」とか「大掃除を少しずつする」とか、今から始めると後々の負担が下がりそうな目標でもいいかもしれない。ちなみに、私は昨日「今年中に会っておきたい人に会う」という目標を達成できて、ちょっと嬉しい気持ちになった。クリスマスプレゼントを交換する流れにもなって、素敵な悩みが余計に気分を明るくしてくれた。やはり持つべきは友。

他の人に喜んでもらえる、つまり、何かに貢献できると実感することは、とても価値のあることだと思う。しかも、それが自分のやりたいことであればなおさらだ。その感情は頻繁には味わえないかもしれないけれど、大切な人への贈り物を選んでいるとき、悩ましくも嬉しいその感覚は、きっと誰もが一度は経験しているのではないだろうか。

【エニシング・ユー・ウォント―すぐれたビジネスはシンプルに表せる】(デレク・シヴァーズ・著/児島修・訳)

「すべての法則を自分でコントロールできる小さな宇宙をつくること」―この言葉を聞いて、どんなイメージを抱くだろうか? これは、同書のテーマである「起業」を別の言葉で表現したものだ。同書を読むと、その意味がすぐに腑に落ちるはずだが、私はそれを「ワガママと貢献が交差する環境の創造」と言い換えると、もう少し具体的にイメージできる気がする。

「起業」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのはお金を稼ぐこと、つまり、より多くの人に貢献することではないだろうか。ならば、生成AIやビットコイン、量子コンピューターなど、今後世の中で役立ちそうなものを使ってビジネスを立ち上げるのが良さそうにも思える。しかし、誰もが分かっている通り、それだけではうまくいかない。大事なのは、起業した本人が持つ「〇〇がしたい」という強いワガママだ。そんな一見当たり前に思えるけれど、実はついつい忘れがちな大切な感情を教えてくれる本、それが同書である。

あなたのワガママは、本当にただの”ワガママ”か?

本書の著者はプロのミュージシャンだ。1997年、インディーズの楽曲をオンラインで販売するのは難しく、大手流通業者を通すのが一般的だった。流通業者には、販売用のCDを何千枚も渡し、その対価を1年後にようやく支払われる状況。高額な広告枠を買うことはできても、最初の数ヶ月の売れ行きが悪ければ、システムから排除されることもあった。著者はその仕組みには関わりたくなかった。「資本力に関わらず、売れ行きが安定し、適切な支払いがされる仕組みがあればいい」と思い、立ち上げたのがCDベイビーというオンラインストアだ。

当時、これは業界の常識からはかけ離れた発想であり、著者の”ワガママ”ともいえる。だが、その”ワガママ”が著者の本当の願いだった。あなたも、世の中の常識やルールに対して不満を感じたことがあるだろう。「もっとこうなれば」と思ったことがあるのではないか。そうした感情は、初めは自分だけのワガママだと思うかもしれないが、果たしてそれは本当にあなただけが感じているものだろうか?他の人たちも同じように感じているかもしれない。LUUPなどの事例がまさにその例だが、思いがけない「ワガママ」が、多くの人々に利益をもたらすビジネスへと発展することがあるのだ。

内なるエネルギーだからこそ、頑張れる

ワガママは、自分の内なる感情から生まれるものだ。人に言われて出る感情ではなく、自分の意思で湧き出てくるものである。生成AIやビットコインのように、一見役立ちそうなものを事業として起業するだけでは成功できない。なぜなら、それらは自分のワガママに寄り添っていないため、ビジネスを続けていくうちに興味を失ってしまうからだ。「流行りのものをビジネスにして成功したい」と考えることは、一見正しいように思えるが、もしそうなら、流行が変わるたびにビジネスモデルを変えなければならなくなる。著者は「あなたがハッピーになれるかどうかが大事」と述べているが、自分のワガママに沿った仕事でない限り、仕事は楽しく続けられないのである。

あなたのワガママが、他にはない価値を届ける

あなたのワガママが「世の中で、あなた以外の誰もが抱かない感情」でない限り、それにはニーズが存在し、ビジネスとして成功する可能性がある。

ワガママの普遍性、つまりどれだけ多くの人が同じ感情を抱くかによって、そのビジネスの市場規模は変わってくる。そのワガママが「万人が抱く感情」であれば、それはもうワガママではないだろう。ワガママに基づいてビジネスを立ち上げると、万人に好かれるビジネスを作ることはできないが、同じワガママを持つ人たちを助けることができるのである。

「自分が過去にした苦しい経験と同じ経験をする人を減らしたい」といった形でビジネスを立ち上げた話はよく耳にする。これも、そういったワガママの表れだろう。そして、マーケティングでは「ペルソナ設定が大事」と言われるが、万人を助けることはできないと認識すると、「自分が助けたい、助けられる人はどんな人か」という観点からペルソナを明確にすることができるのではないだろうか。

まとめ – お金に惑わされず、心に従ったビジネスを  –

「すべての法則を自分でコントロールできる小さな宇宙をつくること」、つまり「ワガママを貫き、自分もハッピーになりながら、同じワガママを持つ人々を救うこと」が起業の本質だと同書は教えてくれる。お金はあくまで結果であり、起点としてビジネスを考えるべきではないということだ。この考え方は、よくあるビジネス書でも同様の結論にたどり着くが、同書の流れを踏まえると、改めて納得できるメッセージだと感じる。

本書は、いわゆる”熱量を持って正しさを伝えてくる”系の自己啓発書の中でも、特に読みやすさを感じた。おそらくその理由は、「暑苦しすぎない」からだと思うのだが、この表現はやや微妙かもしれない。つい本日、感情の言語化に関する1冊を読んだのだが、今感じている感情を正しく伝えるニュアンスの言葉を紡ぐ能力が足りていないことを痛感してしまう。伝えたいことを良質に表現したい、そんなことを思ってしまうものである。

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