「ここだけはおさえて」ポイント
どんな人におすすめ?
- キャリアに対する意識が高いビジネスパーソン
常に仕事に追われていて、どこかで自分の時間を作る余裕がないと感じている。忙しさに埋もれて、自分のキャリアやライフスタイルに対して長期的な視点を持ちたいと思っている人。 - 生産性や効率に悩む人
常に時間に追われているが、なかなか仕事が終わらず、成果が上がらないことに不安を感じている人。効率的な働き方を探し、改善したいと考えている人。 - 自己成長とスキルアップに関心がある人
現在の働き方を見直し、自分のスキルを向上させるための方法を模索している。自分の時間をうまく活用し、キャリアアップにつなげたいと考えている人。
ポイント①
「間接コスト」が忙しさを増す。複数の仕事を同時進行すると、効率が落ちる。
一度にたくさんのことをやろうとすると、それぞれに余計な時間や手間がかかり、最終的には全体の生産性が低下する。メールや会議などの隙間時間も、仕事の進行を遅らせる「間接コスト」として積み重なってしまう。
ポイント②
スケジュールを限界まで詰め込むと、パフォーマンスは落ちる。
仕事を詰め込みすぎると、精神的にも肉体的にも疲れ、集中力が落ちる。その結果、どんなに時間を確保しても、仕事の質は下がり、結局は効率が悪くなることがある。
ポイント③
スキルを磨くと、仕事の主導権を握ることができる。
スキルを高めることで、自分の仕事をコントロールしやすくなる。結果的に、仕事のペースを自分で決めることができ、結果的により効率的で充実した働き方ができるようになる。
読みやすさ:★★★☆☆
忙しくて余裕がないあなたに向けて、仕事との付き合い方を教えてくれる1冊。少し極端に感じる実践法もあるが、すぐに取り入れられる方法も多く、実行に移しやすい内容となっている。文章はシンプルで分かりやすく、長期的なキャリアを考えるきっかけにもなるため、忙しい毎日を送る人にオススメ。
あなたが忙しい本当の理由
「なぜこんなに忙しいのか。」そう思ったことはないだろうか。生産性向上が叫ばれているのに、なぜか仕事が減る気配はない。
気づけばスケジュールは埋まり、忙しさが当たり前になってしまう。さらに、予定通りに進まないことで余計に時間を取られ、ますます忙しくなる悪循環に陥る。
なぜいつもこんなにも忙しいのか。解決策はないのだろうか。今回はそんな疑問を解消してくれる1冊のご紹介。
【SLOW 仕事の減らし方――「本当に大切なこと」に頭を使うための3つのヒント】(カル・ニューポート・著/高橋璃子・訳)
カル・ニューポート
ジョージタウン大学の教授であり、働き方や生産性の研究者。SNSを使わず、集中力を武器に研究と執筆を続ける異色の存在である。
著書は世界40か国以上で翻訳され、ベストセラー多数。現代人の働き方や集中力の重要性を説き、より充実した人生を送るための方法を提案している。そのシンプルで本質的な考え方は、多くのビジネスパーソンに支持されている。
なぜこんな状況が続くのか。その答えのひとつが「間接コスト」にある。
たとえば、リサーチとレポート作成に合計7時間かかるとしよう。そこにメールやミーティングなどのやり取りが1時間加われば、合計8時間になる。
では、4つのレポートを並行して進めた場合はどうなるか。
1日の作業時間を8時間とすると、
- レポートA、B、C、Dの作業時間:各1時間
- 各レポートに対するメール・ミーティング等の時間:各1時間
合計8時間が費やされる。
各レポートの完成には7時間必要なので、これを繰り返せば7日間かかる。一方、1つずつ順番に仕上げれば4日間で済む。
つまり、仕事を増やすほど「間接コスト」が積み上がり、結果として生産性が低下するのだ。
「仕事を減らすとアウトプットが増える」というのは直感に反するかもしれない。しかし、間接コストを意識しない限り、忙しさから抜け出すことは難しい。
まずは、自分の仕事にどれだけの「間接コスト」がかかっているのかを見直してみよう。
忙しいのに成果が出ないのはなぜ?
スケジュールが埋まった状態で、最大のパフォーマンスを発揮できるだろうか。
絶対に遅らせることのできない仕事が4つあり、それぞれ2時間以内に完了させなければならない。この状況では、ほとんどの人が最高のパフォーマンスを発揮できない。
まず、「実現できるかどうか」というリスクが大きすぎる。適度な緊張感はプラスに働くが、これが日常的に続くとマイナス要因に変わる。
さらに、仮に実現できたとしても、仕事のクオリティを最大限まで高めることは難しい。たとえ同じ2時間の仕事でも、「絶対に遅れられない」というプレッシャー下と「2時間で終わらせよう」という意識下では、アウトプットの質が変わる。しかもこれを4回繰り返すとなれば、脳のリソースが不足するのは明らかだ。
脳のリソースは見えないため、一見すると無限にあるように思われがちだ。しかしながら、半永久的に高いパフォーマンスを維持し続けることは不可能だ。どこかで脳に余裕を持たせなければならない。限界までスケジュールを詰め込みすぎると、生産性は悪くなってしまうのだ。
「スケジュールに空きや余裕があると、よくないものだと感じてしまう。」この意識が厄介なのである。余裕のあるうちは仕事を増やすというスタンスをとってしまうと、実は生産性は落ちる。一見すると矛盾があるように思えるが、自分自身のパフォーマンスを振り返ってみると、納得できるのではないだろうか。
そうはいっても、このバランス調整はなかなか難しい。そんなあなたにとって参考になるのが、「ゴールは1日1つだけにする」という考え方だ。
それは「ゴールは1日1つだけ」という前提を置くことである。あなたがどれだけ優秀であったとしても、脳の性質上、2つ以上のゴールを達成できないものとして働くのである。実際はそのようなことはないと思う一方、「生産性を高める」といった観点では、この考え方は大変参考になるのではないかと思われる。
仕事の主導権を握れるようになるために
仕事に余裕を持つために、本書では「クオリティを最優先にすべき」と述べられている。
理由の1つ目は「クオリティの追求は多くの場合、仕事のペースを落とすことに直結しているから」である。簡単に言えば「質を優先すると速度が落ちる」である。よく言われる「早く実践し早く失敗することを繰り返せば、最終的には効率よく成功できる」とは反対の考え方なので、人によっては賛否両論があるのではないかと思う。
もう1つの理由は、「スキルが持続可能なライフスタイルを可能にする」からだ。クオリティを上げ、スキルを磨けば、年収アップや昇進につながるだけでなく、「自分のペースで働く自由」も得られる。スキルが高いほど時間単価を上げやすくなり、労働時間をコントロールしやすくなるからだ。
この考え方は、いわゆる「サラリーマン的な働き方」とは異なる。だが、副業やフリーランスが一般的になった今の時代にはフィットしている。「とにかく早く行動し、試行錯誤を重ねる」やり方に違和感があるなら、クオリティ重視の働き方を考えてみてもいいのではないか。
まとめ – 仕事を減らすことが、パフォーマンス向上の鍵? –
可能な限り多くの仕事をこなすことが、パフォーマンスの最大化につながるとは限らない。むしろ、仕事は増えがちだからこそ、「量をこなせば成果が出る」という考え方を見直してみるべきかもしれない。
本書では「スキルを磨くには、とにかく量をこなすことが必要」というスタンスをとっている。つまり、やみくもに仕事を減らすことを推奨しているわけではない。 しかし、「今の仕事量は本当に適切か?」と考えてみることは重要だ。
本書には、「仕事の減らし方」を実践する具体的な方法も多数紹介されている。 パフォーマンスを高めるヒントを得るために、一読してみてはいかがだろうか。
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