正しさを手放せば、夫婦関係はもっと円満になる

人間関係

「ここだけはおさえて」ポイント

どんな人にオススメの1冊?

🔹 夫婦関係を改善したいが、方法がわからない人
 - 話し合いをしているつもりなのに、いつの間にか口論になってしまう
 - 相手を変えようとしてもうまくいかず、関係が停滞している

🔹 仕事ではうまく対話できているのに、家庭ではギクシャクしてしまう人
 - 職場では冷静に対処できるのに、パートナーには感情的になってしまう
 - 論理的に正しいことを伝えているはずなのに、なぜかパートナーには伝わらない

🔹 相手を尊重しながらも、自分のモヤモヤを解消したい人
 - 相手に歩み寄ろうとしているのに、気づけば我慢ばかりになっている
 - 自分の気持ちを大切にしつつ、パートナーと良い関係を築きたいと考えている

ポイント①:目的は「正しさ」ではなく、良い関係を築くこと

夫婦関係では、自分の正しさを証明することがゴールではない。価値観の違いがある以上、どちらかが100%正しいことはほとんどない。
自分の意見を押し通すよりも、お互いが納得できる形を目指すことで、より良い関係へと近づいていくことができる。

ポイント②:愛情が伴ってこそ、良い関係が続く

関係が続いているだけでは「円満」とは言えず、お金や容姿だけでは関係は保てても、本当に満たされることはない。夫婦関係の土台には、お互いへの思いやりや愛情が必要であり、それがあることで関係はより深く、安定したものになる。

ポイント③:思考を柔軟にし、自立した姿勢で関係を築く

白黒をつけたがるクセを手放し、相手の立場を尊重することで、無用な衝突を避け、円滑な関係が築ける。
さらに、自分の幸せを相手任せにせず、自立した姿勢を持つことで、関係改善に向けて主体的に行動できるようになり、結果として関係も改善していく。

オススメ度:★★★★☆

「なるほど」と思わせてくれる事実が目白押しで、読んでいて面白い。ページ数がそれほど多くはないため、読みやすい1冊となっており、結婚していない人にとっても「良い人間関係を築くための方法」に関する学びを得られる内容となっている。

正しさをぶつけ合っていませんか?

「夫婦喧嘩の理由は?」と聞かれたら、どんな場面を思い浮かべるだろうか。

「子どもの受験方針が違う」「マイホーム購入をめぐる意見の対立」といった人生の大きな分岐点での喧嘩が思い浮かぶかもしれない。

しかし、実際に起きる喧嘩はもっと些細なことが多い。「なんとなく言い方が嫌味っぽい」「靴下を裏返したまま洗濯に出す」「ドアを閉める音がうるさい」「いざという時に何もしてくれない」など、日常の行動や態度が引き金になるケースがほとんどだ。

これらは些細なことに見えて、実は非常に厄介だ。なぜなら「感覚や価値観」に関わる部分であり、意識しても直すのが難しいからである。

さらに、この積み重ねによるストレスは離婚の原因にもなりやすい。一方で、「家を買うかどうか」「子どもの進学先」といった大きなテーマは、意外にも決定的な引き金にはなりにくい。

では、どうすれば日常の些細な喧嘩を減らし、より良い関係を築けるのか。本書はそんな「夫婦円満」を叶える伝え方を教えてくれる。

なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか? 夫婦関係を改善する「伝え方」教室】(岡野あつこ・著)

岡野あつこ

日本の夫婦問題研究家、公認心理師、結婚・離婚カウンセラー、著作家。 

立命館大学産業社会学部を卒業後、36歳で自身の離婚経験を機に夫婦問題の研究を開始。1991年に「岡野あつこの離婚相談室」を開設し、以降、夫婦問題のカウンセリングや離婚カウンセラーの育成に尽力。 

「離婚しないに越したことはない!」を信条に、これまでに累計4万件以上の相談に対応。また、YouTubeチャンネル「岡野あつこチャンネル」を通じて、夫婦問題に関する情報発信も行っている。 

仕事は結果、家庭は関係がゴール

仕事で求められるのは「結果を出すこと」である。もちろん、部署やチーム内で良い関係を築くことも重要だ。しかし、それはあくまで結果を出すための手段であり、最終目的ではない。時には意見を激しくぶつけ合うことが、より良い結果を生むこともある。

一方、家庭では「良い関係を築くこと」自体がゴールである。この違いが、夫婦関係における大きな落とし穴になる

夫婦喧嘩がこじれるのは、互いに「自分が正しい」と信じて譲らないからだ。

健康を重視する人なら、「野菜中心の食事や低脂肪の料理が良い」と考える。

一方で、「食事は楽しみの一つ。普段から好きなものを我慢しすぎたくない」と思う人もいる。

どちらも正しい。しかし、その正しさは普遍的なものではなく、「自分の価値観にフィットしている」という意味での正しさだ。相手にとっては正しくない場合も少なくない

仕事の場合、意見を戦わせることで良い結果につながることもある。最終的に上司の意見が採用されることもあり、それで物事は前に進む。

しかし、家庭での「正しさの主張」は、必ずしもうまく機能しない。お互いが「自分が正しい」と思い続けると、関係がギスギスしてしまう。相手に譲り続けるのもストレスが溜まり、モヤモヤが残る。

この違いを理解せず、「仕事ではうまくやっているのに、家庭ではギクシャクする」という状況に陥る人は多い。自分の正しさで相手に勝とうとすることは、結果的に関係を悪化させてしまうこともあるのだ。

関係のゴールに必要なのは「愛情」

「良い関係を築くこと」、これがゴールである。前章で述べたように、これは単なるプロセスではない。

では、このゴールを見失わずに歩み続けるために必要なものは何だろうか。それは「愛情」である。

少しクサいかもしれないが、次の問いについて考えてみてほしい。

Q1. あなたがパートナーと関係を築く理由は?

Q2. あなたがパートナーと良い関係を築くための要因は?

Q1の答えには、多くの人が「愛情」と答えるだろう。しかし、「お金」や「容姿」といった現実的な要素も、理由の一つに挙げられるかもしれない。

一方で、Q2の答えはどうだろうか。ここでも「愛情」は当てはまる。しかし、「お金」だけでつながっている関係は、果たして「良い関係」と言えるだろうか。また、「相手の容姿が気に入っているから」という理由も、そこに愛情が伴わなければ、やはり「良い関係」とは呼べないはずだ。

このように、「関係を続けること」だけが目的であれば、「愛情」は必須ではない。しかし、「夫婦円満」とは「ただ婚姻関係を続けていること」とは違う。そこに愛情があることで初めて、関係は「円満」と呼べるものになるのだ。「愛情」面での歩み寄りが必要不可欠になるのである。

関係改善に必要な3つの思考法

ここでは、夫婦関係を改善するために必要な「3つの思考法」を紹介する。

「白黒ハッキリさせるクセ」をやめる

夫婦関係を改善するためには、「白黒ハッキリさせるクセ」を手放すことが大切だ。

仕事では「グレーを許さず、白黒ハッキリさせるべき」という考え方が求められることも多い。しかし、家庭でも同じ感覚を持ち込み、「自分が正しい」と主張するのは関係改善の妨げになる。

夫婦間の喧嘩は、価値観や考え方の違いによるものが多い。自分が100%正しく、相手が100%間違っているという状況はほとんどない。仮にそうであっても、良い関係を築きたいなら、自分の主張を押し通すより、相手の意見を尊重した方が、結果的にゴールに近づけることがあるのだ。

相手の機嫌を損ねない「したたかな思考」

相手の機嫌を損ねないことが、関係を改善するのための第一歩だ。しかし、相手の意見をすべて受け入れていると、こちらの気持ちが持たなくなる。

そこで本書が勧めているのが、「したたか」になることである。

具体的には、自分は相手より「ちょっとだけ器が大きい」とかまえる意識を持つことだ。例えば、仕事で疲れて帰ってきたのに、先に帰宅していたパートナーが家事をしていなかった場合、「家事をやらない怠け者」と思うのではなく、「今日は余裕がなかったのかもしれない」と、少し広い心で受け止める。もちろん、口に出して責めないことが前提だが、心の中でこのくらい余裕を持って構えることで、自分の気持ちが楽になる。

夫婦は「対等」であるべきだと考えがちだが、機嫌を損ねないためには、時には「対等でない」と割り切る柔軟な姿勢も必要なのだ。

「自立した人」になる

関係にモヤモヤを感じているとき、「自分は夫婦関係の犠牲者だ」と思っていないだろうか?

もしそう感じるなら、自分の幸せを相手任せにしてしまっている状態、つまり「自立できていない状態」になっている

自分の幸せを相手に依存していると、関係改善への主体的な努力ができなくなる。さらに、相手をコントロールすることはできないので、結果的に状況は変わらない

結局のところ、自立するしかないのだ。良い関係を築きたいなら、「ここから先は相手の領分」と線引きをして、相手が決めるべきことには口を出さないようにする。この意識が芽生えることで、自分の思考や行動が主体的になり、ポジティブな変化が生まれていく。

まとめ – 変わるのは自分、変わるのは未来

夫婦関係の改善は、相手を変えることではなく、自分の思考と行動を変えることから始まる。白黒ハッキリさせようとせず、相手の価値観に理解を示すことで、不要な対立を避けられる。また、愛情を土台にしながら、自立した意識を持つことで、関係のバランスが安定する。こうした小さな変化の積み重ねが、未来の関係をより良いものへと導いていく。変わるのは自分、そして変わるのは未来、ということなのだ。

夫婦円満に向けては、以下の記事も参考にしていただきたい。こちらは仕事と家庭との共通点に関してフォーカスしている1冊を紹介しているため、今回紹介した1冊と組み合わせることで、より深い理解ができるのではないかと思う。

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