親子関係を築くために、今こそ見直したい「否定」の習慣

コミュニケーション

「ここだけはおさえて」ポイント

どんな人にオススメの1冊?

🔹忙しい日常に追われ、つい感情的になりがちな
 - 子どもとの会話で叱ることが多く、冷静に接する方法を学びたい
 - 子どもとのコミュニケーションをもっと穏やかに、理解を深める形にしたい

🔹 子どもの成長を支えたいが、否定的な態度を取ってしまうことが心配な親
 - 自分が無意識に否定的な言葉をかけていることに気づき、改善したいと思っている
 - 親子の関係性を見直し、より尊重し合える関係に育て直したい

🔹 職場で部下や同僚との関係を改善したいビジネスマン
 - 自分のコミュニケーションのクセに気づき、それを改善したいと思っている
 - 自己成長や人間関係の向上に関心があり、日常の言動をより意識的にしたい

ポイント①:親は“つい”子どもを否定しがち

特に小さい子どもに対して、親は無意識のうちに否定的な言葉を使ってしまうことが多い。この否定は意図的なものではなく、無意識のうちに子どもの自己肯定感を傷つけてしまうことがある。子どもを健全に育てるためには、まず自分が無意識のうちに否定的な言葉を使っていることに気づくことが大切

ポイント②:たとえ自分の子どもであっても、1人の人間として向き合うことが大切

子どもに対しては、ただ言うことを聞かせようとするのではなく、1人の人間として尊重し、彼らの意見や選択を大切にすることが重要。自主性を促し、良い関係を築くためには、伝え方や聞き方を工夫して、子どもを主体的に考えさせることが必要となる。

ポイント③:否定せずに接するための実践実践法

子どもに対して否定的な言葉を避け、建設的なコミュニケーションを取るためには、具体的な方法を実践することが重要である。「Iメッセージ」や「無条件に許す」といったアプローチを取り入れることで、子どもの気持ちに寄り添いながら、より良い親子関係を築くことができる

オススメ度:★★★★☆

「子どもを否定してしまう自分」に気づき、改善するための第一歩を踏み出すための1冊。つい感情的になってしまう瞬間、どうしても子どもに対して否定的な言葉をかけてしまう自分に悩んでいる方にとって、具体的な改善策が得られる内容になっている。子育てをしている中で「自己肯定感や自主性を育てたい」と思っている方にぴったり。自分の接し方を見直し、より良い親子関係を築くために必要な考え方やヒントが詰まっている。感情に流されず、子どもを1人の人間として尊重する視点を養える一冊

「叱る」つもりが「否定」になっていませんか?

「プラモデルなんかつくっていないで、勉強しなさい!」
「片付けしなさい!片付けないとソレ捨てるからね」
「つまらないもので遊んでないで、家の手伝いしてよ」

こうした言葉は、子育ての過程で何度も飛び交うものだ。子どもがなかなか勉強を始めなかったり、部屋を片付けなかったりすると、つい感情的に口をついて出てしまう。

では、これらは「否定」と「叱る」のどちらに該当するのだろうか。否定」と「叱る」の違いを、正しく認識できているだろうか

今回は、そんな子どもとの接し方に関する一冊を紹介する。

子どもを否定しない習慣】(林健太郎・著)

林健太郎

日本のエグゼクティブ・コーチであり、リーダー育成の専門家。2013年に一般社団法人 国際コーチング連盟 日本支部の創設に関わり、初代代表理事を務めた。企業向けの研修講師としても活躍し、フェラーリ社の日本における認定講師を8年間務めるなど、多くのビジネスリーダーの育成に貢献している。また、著書『人間関係の悩みがなくなる 期待しない習慣』では、人間関係の悩みを解消するための実践的なアドバイスを提供している。

  • 子どもの言葉や意見を頭ごなしに否定する、勝手に言い換える
  • 子どもが話したいと思っていることに真剣に耳を貸さない
  • 話を聞いているようで、相手の目を見ていない
  • 子どもの提案(やりたいこと)を聞かず、大人の提案に合わせる
  • 子どもの悩みや迷いを「些細なこと」という態度で扱う

これらはすべて、子どもを「否定」する行為だ。冒頭の言葉を振り返ると、子どもが大切にしているものを無下に扱い、否定する感情や態度が含まれていることがわかる

  • プラモデルなんかつくっていないで、勉強しなさい!」
  • 「片付けしなさい!片付けないとソレ捨てるからね
  • つまらないもので遊んでないで、家の手伝いしてよ」

厄介なのは、「否定であることに気づきにくい」という点だ。発言した本人には否定の意図がなくても、子どもは「否定された」と感じることがある。これが「無意識の否定」だ。

一方で、「叱る」ことが必要な場面もある。たとえば、子どもがスーパーから飛び出して駐車場へ向かおうとしたとき、「走らないで!」と叱るのは当然だ。経験や知識が少ない子どもに対し、大人が危険であることを教えてあげる必要があるからである。

多くの大人は、「叱る」ことの重要性を理解している。そして、子どものためを思うあまり、知らず知らずのうちに「否定」してしまう。しかし、この否定」は子どもの自己肯定感を下げ、ネガティブなセルフイメージを形成する要因になりうる

親には、子どもを危険から守り、他人に迷惑をかけないようにする責任がある。だからこそ、つい子どもを否定してしまう。まずはこの仕組みに気づくことが、「否定しない習慣」を身につける第一歩となる。

子どもを1人の人間として向き合うことが大切

では、どのようにすれば否定しない習慣づくりができるのかということだが、本書によると、子どもを1人の人間として扱うことが大切なのだという。

たとえば、子どもが寒い日に薄手で出かけようとしているシーンを想像してほしい。

「コートを着て行きなさい!」
「着ていかない!」
「夜寒くなるから着て行きなさい!」
「寒くないから大丈夫!」
「いいから着て行きなさい!」
「絶対イヤだ!」

このように否定してしまうと、子どもはその否定に対し拒絶反応を起こす。

それをこんなふうに言い換えてみる。

「今日はその格好で出かけるんだね。コートは着ていかない感じ?」
「うん。これで行きたい。」
「そうか、それでいいんだね(承認)。どうして?」
「だって学校に行くとコートが邪魔だから」
「夜は寒くなりそうだけど、塾の帰りはそれで大丈夫?」
「寒くなるの?」
「夜は冷えて風が冷たいって天気予報で言っていたよ」
「じゃあ、コートを着て行って、途中で暑くなったら脱ぐことにする」

先ほどのように、「コートを着て行きたくない」という子どもの発言を否定してはいない。むしろ、一度その発言を承認したのち、子どもに追加で情報を与えることで、子ども自身が「今何をしようとしているのか」をしっかりと認識し、その上で改めてコートを着ていくかどうかを判断するように働きかけている

要は本人に決めさせているのである。「他人からやれ!と言われると、やる気がなくなる」「他人が決めたことより、自分が決めたことをやりたがる」。これは大人だけでなく、小さな子どもにもあてはまる。これがわかると、子どもは「否定された」と感じず、自分の頭で考えられるようになり、良い親子関係を築けるようになるのである。

「ゲームをやめて片付けしなさい!」ではなく「何時までゲームしたら、片付け始めようか?」と尋ねる。ゲームをやめて片付けをしてもらうというゴールは一緒でも、聞き方次第で、子どもが主体的に行動を決められるようになるのだ。

なお、このような工夫をすんなりとやってのけるのは、実は意外と難しい。時間がなかったり、日々の生活でバタバタすることの方が普通で、なかなか子どもに対する「接し方」について深く考える時間がないからである。

しかし、だからこそ次のようなことを振り返ってみることが大切なのだという。

  • 最終的にどんな会話にたどり着きたいか
  • どんな関係性になっていたいか
  • 子どものどんな行動に結びつけたいか

「叱る」とき(または「叱ろうとする」とき)、人はいつの間にか「否定」しがちである。そんな時にこそ振り返りを実践することで、次に同じような場面に遭遇した際、前よりも子どもを尊重することができるようになる。感情に任せて「否定」してしまいがちだからこそ、どうなりたいかを振り返ってみるクセをつけると、1人の人間として子どもとコミュニケーションを取れるようになるのだ。

否定しないためのテクニック

ここでは、子どもを否定せずに接するための具体的な方法を紹介する。

「子どもには子どもの都合がある」ことを理解する

親は豊富な知識や経験を持っているため、子どもより正しい判断ができることが多い。しかし、たとえ自分の考えが正しいとわかっていても、それを一方的に押し付けると、子どもは「否定された」と感じてしまう

人間関係において、相手の都合を無視して自分の意見を押し付けることは、関係の悪化を招く。これは友人や職場の部下との関係だけでなく、親子関係にも当てはまる。

たとえば、次のようなやりとりを考えてみよう。

「早くご飯を食べて、宿題をやっちゃいなさい!」
「えー、やだ」
「どうして?」
「まだやりたくないから」
「だからどうして、やりたくないの?」
「わかんない」

このように、子どもは理由をうまく説明できないことがある。ここで大切なのは、親がすぐに答えを求めるのではなく、「子どもなりの都合がある」と理解しようとすることだ。

「後で理由を教えてね」と伝え、考える時間を与えるだけでも、子どもは自分の気持ちを整理しやすくなる。大切なのは、親の正しさを押し付けるのではなく、まず子どもの気持ちに耳を傾けることなのだ。

「Iメッセージ」「Weメッセージ」を活用する

  • 「〇〇は、お姉ちゃんなだからしっかりしなさい」
  • 「〇〇は、何度言ってもわからないよね」

このように、子どもを主語にして伝えるメッセージを「Youメッセージ」と呼ぶ。主語を省略した場合も、同様にYouメッセージとなる。

  • 「しっかりしなさい」
  • 「何度言ってもわからないよね」

Youメッセージは、子どもに「責められている」「否定されている」と感じさせ、反発を招きやすい。そこで、主語を「I」や「We」に変えることで、伝わり方を柔らかくすることができる。

具体例を見てみよう。

  • 「私は今、あなたに対してすごく怒っているんだけど」(Iメッセージ)
  • 「○○が言うことを聞いてくれなくて、ちょっと悲しい」(Iメッセージ)
  • 「私たちは、こんな関係性をつくって行きたい」(Weメッセージ)
  • 「私たちは、こんな家庭にしていきたい」(Weメッセージ)

Iメッセージを使うのは、相手を1人の人間として捉えるからだ。自分の感情を素直に伝えることで、子どもも親の気持ちを理解しやすくなる。子どもにとって親の機嫌は大きな関心事であり、こうした伝え方が親子の理解を深める。

慣れてきたらWeメッセージを活用し、子どもに「家族の一員である」という意識を持たせる。すると、それまで主観的な視野しか持っていなかった子どもも、「宿題は食事の前に終える」「ゲームは長時間しない」といった家族全体での視点を持てるようになり、客観的に物事を捉える力が育っていく

「無条件に許す」という選択肢を持つ

「無条件に許す」という選択肢を持つことも、否定しないためには重要である。

大人が失敗しにくいのは、子どもの頃に失敗を経験し、そこから学んだからだ。つまり、子どもはミスや失敗をするものだと受け止めることが大切である。

「今日は許してあげよう」「まあ、そういうこともあるよね」と気持ちを切り替える習慣をつけると、子どもを頭ごなしに否定せずに済むようになる。

実際、子どものミスや失敗が原因で、親子関係が修復不可能になることはほとんどない。しかし、そのミスや失敗に対する親の態度次第では、関係が悪化してしまうことがある

子育て中は、つい視野が狭くなり、自分も子どもも責めがちになるものだ。しかし、「子どもは失敗するもの」と捉え直せば、親自身も冷静に対応でき、より良い関係を築けるようになる。

まとめ – 心に響く「否定しない習慣」の力

子どもとの関係を築くために大切なのは、「否定しない」という習慣を身につけることだ。この習慣は、子どもをただ叱るだけでなく、共感し、理解し、成長を支えるための重要な基盤となる。子どもを1人の人間として尊重し、感情に流されずに冷静に接することが、親子の信頼関係を深める。

無意識の否定を避けるためには、まず自分がどのような言動をしているのかを認識することが第一歩だ。そして、「Iメッセージ」や「Weメッセージ」を使うことで、子どもに対して責めず、共感の気持ちを伝えることができるようになる。さらに、失敗を無条件に許すことで、親子間に理解と絆が深まる。

子どもにとって、親は最初の「人間関係」の手本であり、その影響は一生にわたるものだ。子どもとの接し方が変わり、より良い親子関係を築く手助けになる1冊。ぜひ手に取ってみてはいかがだろう。

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