「ここだけはおさえて」ポイント
どんな人にオススメの1冊?
- 日々の時間の使い方を見直したい人
「なんとなく過ごしている時間が多い」「もっと充実した時間の使い方をしたい」と思っている人 - 後悔しない選択をしたい人
「あの時ああすればよかった」と後悔しがちで、選択の仕方や考え方を変えたいと思っている人 - 身近な観点から哲学的を学び、その視点を日常に取り入れたい人
「時間の概念」や「選択の価値」といった抽象的なテーマに興味があり、それを実生活で役立てたい人
ポイント①:人生を4つの時間に整理すると、その時間を過ごす意味が生まれる
私たちは毎日、さまざまな時間を過ごしている。しかし、それを「ただ過ぎる時間」として捉えるか、「意味のある時間」として捉えるかで、人生の充実度は大きく変わる。時間に名前をつけることで、「何のために過ごしているのか?」が明確になり、日々の満足感を感じることができる。
ポイント②:後悔しないために、選択した時間の「価値」を強化すべし
選択した時間の価値を強化し、後悔を減らすためには、その選択の意味を意識的に見出すことが重要。選んだ行動を積極的に肯定することで、その時間の価値を高め、後悔を避けることができる。
ポイント③:やりたいことが見つからない時には、「今」の「心が喜ぶ時間」をつくっていくことも効果的
「やりたいことをしなければならない」というプレッシャーに縛られず、今の自分の心が喜ぶ時間を大切にすることが大切。無理にやりたいことを見つけようとするのではなく、まずは満足感や充実感を感じる小さなことを積み重ねることで、それが自然と大きな「やりたいこと」へと繋がる可能性がある。
オススメ度:★★★★★
自分の人生を豊かにするためには、確かに「行動」も必要だが、「意識」を変えるだけでも効果があることを実感することができる1冊。読みやすく、実践も容易で、誰にとってもオススメできる。
名前を付けると、時間は意味を持つ
多くの人にとって、人生で最も接する機会が多い文字列の一つが名前である。これは気分によって毎日変わるものではなく、幼少の頃から長い時間身近に存在する文字列だ。
その名前が与えられたということは、それ相応の理由がある。おそらく家族やその周りの人たちから、「こんな人になって欲しい」と、生き方の意味を込められているのではないかと思う。そして本人である我々も、その意味を意識してしまう。潜在的にであるのかもしれないし、「後から振り返ったらそうであった」という結果となってしまうのかもしれないが、なんとなく名前に与えられた意味を体現するような生き方をしようとするのではないかと思うのは自分だけだろうか。
では、時間の場合はどうだろうか。「平日の19:00-20:00は資格取得を頑張る時間」と名前をつけて、意味を込めると、それを体現するような時間となるように行動するのではないか。「今日はとことん自分を甘やかす1日」と決めたら、1日中家で好きなことをして過ごしたり、チートデイとして好きなものを欲望のまま口にしたりするのではないか。
名前をつけると、時間は意味を持つ。そしてこの性質を使うと、あなたは意味を持った時間の過ごし方ができるようになる。
【このプリン、いま食べるか? ガマンするか? 一生役立つ時間の法則】(柿内尚文・著)
柿内尚文
日本の著名な編集者であり、株式会社アスコムの常務取締役編集局長を務めている。1968年、東京都町田市に生まれ、聖光学院中学校・高等学校、慶應義塾大学文学部を卒業後、読売広告社に入社。その後、ぶんか社やアスキーを経て、2002年にアスコムに入社し、2008年より取締役に就任。これまで手掛けた書籍やムックの累計発行部数は1000万部を超える。
2020年に初の著書『パン屋ではおにぎりを売れ 想像以上の答えが見つかる思考法』を刊行。続いて、2021年には『バナナの魅力を100文字で伝えてください 誰でも身につく36の伝わる法則』を発表し、話題を呼んだ。
人生には4つの時間が存在する
本書曰く、あなたの人生には4つの時間が存在する。
- 幸福の時間:やりたいこと、喜びを得られることをしている時間
- 投資の時間:目的のために努力をしている時間
- 役割の時間:やらなければならないことをしている時間
- 浪費の時間:無意識に過ごしている時間、ついやってしまう、ムダだと感じる時間
4つの時間の配分は、工夫次第で変えることができる。そして、人生の目的は「幸福な時間」を増やすことである。
もちろん、あなたの24時間を全て「幸福の時間」だけで満たせば良い、というわけではない。仕事や学校など「役割の時間」を避けることは難しいし、将来の「幸福の時間」を優先するために、今は「投資の時間」を過ごす必要があったりもする。
ただ、自分自身の時間のポートフォリオを知っておくことは大切だ。今のポートフォリオはどのような状態か、理想のポートフォリオの割合と、それに近づけていくためにはどこを変えなければならないか。
なんとなく日々を過ごすと、どうしても「役割の時間」「浪費の時間」の割合が大きくなりがちだ。しかも、その選択が無自覚であるが故「やりたいことができない」「時間を無駄にしてしまった」とネガティブな感情を抱いてしまうのだ。
では、どうすれば上手に時間を使うことができるのだろうか。
時間を選択し、価値を強化するという発想を持つ
あなたがもしダイエットを試みていたとして、友人から「ご飯に行こう」と誘われたとする。しかも誘われたお店は、あなたの好物が有名なお店である。
この時、あなたには2つの選択肢が与えられている。
- 誘いに乗り、好物を食べる
- 誘いを断り、ダイエットを優先する
この時の思考や行動パターンを考えてみる。
もしあなたが誘いに乗った場合、当日は「好きなものを食べられた」と満足するだろう。しかし次の日に体重計の数字を目の当たりにして「なぜ誘いに乗ってしまったんだろう…」と後悔する。しかもダイエットに対するモチベーションまで下がり、さらにマイナスの循環に入ってしまう。
一方誘いを断った場合は、「せっかく誘ってもらったのに、なぜ行かなかったんだろう…」「予約がなかなか取れないのだから、こんな時くらいは好きなものを食べたもうがよかったのではないか…」とやっぱり後悔する。結局は我慢ができなくなり、別のもので食欲を満たそうとして、やっぱりダイエットが中途半端になってしまう。
これはいずれも良くない時間の使い方、正確には、良くない時間の「捉え方」である。
では、ここの4つの時間の思考を取り入れてみると、次のようになる。
- 「誘いに乗り、好物を食べる」ことは、幸福の時間。今、喜びを享受する時間として捉える。
- 「誘いに乗り、ダイエットを優先する」ことは、投資の時間。将来「痩せた自分」になって喜びを享受するための時間として捉える。
行動は何も変わっていない。やったことといえば、時間に名前を付け、自主的に選択する思考を取り入れたことだけだ。それなのに、なんだかポジティブな印象を抱くのではないだろうか。
なぜかというと、これはあなたが自分で選んだからだ。どちらのメリットを享受するかを明確にし、主体的に選択をしたからこそ、その後の行動をポジティブに捉えることができる。
そうは言っても「食べなきゃよかった」「行けばよかった」と選ばなかった選択肢の方に目がいくのでは、と感じる人もいるだろう。そこで有効となるのが「価値の強化」である。具体的には、自分が選んだ選択肢の価値をしっかりと認識することである。
「誘いに乗り、好物を食べる」を選んだ場合、それをSNSに投稿したり、雑談のネタにするなど、「美味しい」以外の側面でも価値を見出せるようにする。「誘いに乗り、ダイエットを優先する」の場合は、ダイエット期間後にそのお店に行く予定を入れたり(=将来の「幸福の時間」をより強く認識する)、日記に残して我慢したことを可視化して自分を褒める(=今の時間を「幸福の時間」化する)など、しっかりとメリットとして受け止める。
このようにすると、意識が選ばなかった選択肢ではなく、選んだ選択肢に向くようになり、後悔をせずに済むのだ。
ちなみに「実はどちらも自分の幸せにつながっている」という捉え方をする方法は、以下で紹介している1冊からも学ぶことが可能だ。
必ずしも「やりたいことをしなければならない」訳ではない
著者は「幸福の時間」を増やす大切さを説いているが、それは必ずしも「やりたいことをしなければならない」ということではない。むしろ「やりたいことをしないといけない」という考えに知らず知らずのうちに心が侵食されてしまうことを懸念視している。
やりたいこととは、無理してつくるものではなく、自然と生まれてくるものである。あたりまえと言われるとそうなのだが、SNSでさまざまな情報が目に飛び込んでくる現代においては、このあたりまえを忘れてしまうこともある。
そんな時に本書で推奨されているのが「やりたいこともどき」を育成することである。方法は簡単だ。
- 大小や思いの強さに関わらず、やりたいことを全て書き出す
- それを大・中・小のボックスに分ける
この時の分類は【大:将来できたらやってみたいこと】【中:すぐにはできないけれど、準備して近い将来やってみたいこと】【小:すぐにでも行動に移せそうなこと】となる。 - 次のように捉える
大:今の自分と距離がありすぎて、実現する心の準備ができていない
中:現状の「やりたいこともどき」だが、「やりたいこと」になりうる願い
やらずに後悔するな、と感じるものを、実践していく
小:すぐに実践する
もし気持ちが乗らず、できないのであれば、思い切って捨てる
ただ、ここまでやっても「やりたいことが思い浮かばない…」と手が止まってしまうあなたに対し、著者は「今の自分の心が喜ぶ時間をつくりましょう」と薦めている。
満足感、充実感、達成感、快感、安らぎ感。これらを感じるものが、あなたの心が喜ぶものである。美味しいものを食べる、温泉に入る、家族でキャンプに行く、仕事で結果を出すなど、なんでも良い。今の自分の心にフォーカスをあてて考えることで、それがやがて大きな「やりたいこと」になったりすることもあるのだ。無理にやりたいことを探して焦る必要はない。「やりたいことをしないといけない」という考えに縛られていることを思い出すと、視界はクリアになる。
まとめ – 時間の価値は、あなたが決めよう
同書のタイトルの通り、「プリンをいま食べるか、ガマンするか?」といった日常的なことから、時間の価値を考えることができる1冊。時間に対して抱く「過ごす」というイメージを「ポートフォリオを構築する」というイメージに変えることで、自分自身の時間の主導権を握り、よりその時間に意味を見出せるようになる。時間そのものに「無駄な時間」と「無駄ではない時間」が存在する訳ではないのだ。
意識が持つ影響の強さを実感できる1冊。あなたもぜひ手に取ってみてはいかがだろう。
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