転職して半年が経ち、最も大きな気づきの一つは「通勤にこんなに時間を使っていたのか」という点だ。転職前は、ドアtoドアで40〜50分かかり、最寄りの始発駅から各駅停車で座りながら爆睡できていた。精神的な負担は感じなかったが、現在ではその時間が睡眠に使えていることが大きなメリットになっている。その他にも、ランチタイムの混雑に並ぶことが減り、時間の使い方が柔軟に調整できるようになった。これにより、過去30年弱の中で、平日は学校や仕事、休日には遊ぶという価値観に無意識のうちに縛られていた自分を再認識することができた。
「1日24時間」という平等な時間は誰にとっても同じである。これは誰もが知っていることだ。だからこそ、時間の使い方を改めて考える必要があるというのも当たり前のことである。
では、あなたは時間を上手に使いこなせているだろうか。新しいことに挑戦しようとした時、現在していることをやめずに、その時間を作り出すことができるだろうか。
多くの人が、時間を上手に使うことの重要性を意識しながらも、それを実行するのは難しいと感じているだろう。少なくとも私自身、器用に時間を使いこなすことができるわけではない。通勤時間が減ったおかげで、今は平日にランニングの時間を確保できるようになった。それも、この時間を「何かをやめる」ことで得られた余裕のおかげだ。
改善や成長は、何かを足すことで実現できると思われがちだが、実は時間の使い方のように「何かをやめる」ことでこそ、より大きな変化をもたらすことができる。その重要性は、つい忘れがちだ。
【「やめる」という選択】(澤円・著)
この本は、「何をやめることで、人生がうまくいくようになるか?」という疑問に対する答えを教えてくれる一冊だ。
生きやすくなるための改善・変化・成長を生むためには?
今の生活をより良くするためには、行動を変え、改善や変化を起こし、成長していくことが必要だ。この本にはやめるべきアクションや考え方が多く紹介されているが、自分が特に重要だと感じた2つの本質的なポイントを挙げてみたい。
- 他人の考え方を軸にすることをやめる
- 決めつけや思い込みで、自分の視界を狭めることをやめる
「それって精神論じゃないか」と思われるかもしれない。実際、自分も文章にしてみて、そんな印象を受けた。しかし、やはり「考え方が変われば、アクションも変わる」という意見に同意する部分もある。あまり気負いすぎず、フラットに受け入れてもらえたら嬉しい。
1. 他人の考え方を軸にすることをやめる
他人の考えを軸にするメリットは何だろうか?少し抽象的な質問かもしれないが、意外と答えるのは難しい。逆に、デメリットは明確だ。「自分の人生を生きられないこと」が最大の問題である。受験や就職、結婚、転職といった人生の大きな選択肢において、自分の人生が豊かになるか、好きだと思えるかを基準に判断することが、その後の人生をどう生きるかに大きく影響する。自分も受験の実体験を通じて、この考え方に納得している。
とはいえ、自分が本当に好きなことや、大切にしたいことの軸を見つけるのは簡単ではない。現代人は多くの人がそう感じているだろう。そんな人たちへの著者からのアドバイスは「さまざまな価値観を持つ人と会いなさい」というものだ。自分自身は成功者ではないので実体験として語ることは難しいが、「成功した人(自己啓発書を出版できるような人)は他人との関わりが多い」と聞けば納得できる。彼らは「友達が多い」わけではなく、社会や世の中との接点が多い印象だ。価値観に限らず、アイデアや発想の源も多くの接点から得られやすい。やはり、これは真理に近いのだろう。
2. 決めつけや思い込みで、自分の視界を狭めることをやめる
この本は特に、今の自分をポジティブに変えたいと思っている人に読んでほしい。そのためには、過去の経験や価値観に囚われずに、考え方を柔軟にすることが大切だ。過去の常識や決まりきったやり方に縛られてしまうと、アクションが限定され、新しい視点や方法に気づくのが難しくなってしまう。その結果、ポジティブな行動に結びつきづらくなるのだ。
「理解はできる。でも難しそう。」と感じる。そんなあなたへ。
「やめる」と聞くと、どうしてもネガティブな印象が強い。自分にとってもそうだ。だからこそ、そのネガティブな感覚を払拭できる問いかけをいくつか紹介したい。
- 何かをやめずに、新しい変化を起こせるの?
- 大切なのは目標の達成であって、プロセスではないでしょ?
- なりたい自分は、自分の中にしかないよね?
あえて少し厳しい問いかけにしたが、きっと心に刺さるはずだ。
1. 何かをやめずに、新しい変化を起こせるの?
最初に挙げた時間の話が、これに最も当てはまる。新しいことを始めるためには、何かをやめるのが一番効率的だ。もちろん、効率化して時間を生み出す方法もあるが、その過程で「やめるべきもの」が見つかるのではないだろうか。
2. 大切なのは目標の達成であって、プロセスではないでしょ?
この問いかけは、少し具体的なレベルで考えさせられる。仕事において、プロセスを重視しすぎるあまり、その遂行が目的化してしまうことがある。同書では、そのような思い込みを「やめるべきだ」と説いている。プロセスを効率化したり、必要ないプロセスをなくしたりすることで、無意識的な思い込みから解放される。この本には、”〇〇するべき”という言葉をやめるといった、具体的なアクションの提案も多いので、是非一度手に取ってみてほしい。
3. なりたい自分は、自分の中にしかないよね?
最後に、この問いかけについて補足したい。前述で「沢山の人と触れ合うべし!」と言ったばかりだが、それは「沢山の人や価値観と触れ合った上で、自分のなりたいものを自分の軸で考えるべきだ」という意味だ。少し回りくどくなったかもしれないが、要は他者の影響を受けながらも、最終的には自分自身の軸を大切にしてほしいということだ。
まとめ
自分のポジティブな変化は、単にプラスを積み上げることだけでなく、「一度マイナスする(=既存の何かをやめる)ことで、新しいプラスを追加できる」という視点を教えてくれる一冊だ。現代人は脳も時間も体力もいっぱいいっぱいになりがちだからこそ、軽やかさを取り入れることが重要だと感じさせられる。
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