今、我が家のキッチンにはりんご、梨、バナナ、キウイフルーツがあり、毎日がちょっと幸せだ。比較的安価なのに、高い幸福度を感じるし、食べ過ぎなければ身体にも良い。コスパも抜群で、生活の質が上がった気分になれる。最近では、スーパーでイチゴやみかんもよく見るので、次はそれに挑戦しようかと思っている。シャインマスカットもまだあるのは嬉しいけれど、季節柄少し高いのでちょっと引いてしまう。
果物はあくまでブームで、常にあるわけではない。でも、誰しも、普段よく食べている「好きな食べ物」ってあるはず。あなたの好きな食べ物、その魅力を言葉で表すとしたら、どんなふうに伝えますか?
「深い味わいと冷たい刺激、二つの魅力が織りなす至福の瞬間。」
自分のはコレである。自作ではなくChatGPT作。シンプルだけど、説得力があって、食欲をしっかり引き出す。言葉に「高級感」や「清涼感」といったキーワードは使っていないけれど、見事に食べ物の魅力を伝えていると思う。これがパッケージに書かれていれば、ほぼ間違いなく手に取ってしまうほどの魅力だ。
今回は、このような「クリエイティブな力」を磨くための一冊をご紹介。
【クリエイティブジャンプ 世界を3ミリ面白くする仕事術 】(龍崎翔子・著)
クリエイティブな思考にも「型」は存在する
「クリエイティブ」と聞いて、どんなイメージが浮かぶだろうか。ひらめき、独創性、インスピレーション—才能がある人だけが発揮できる力のように感じるかもしれない。しかし、クリエイティブな思考にも、実は「型」が存在する。
例えば、ビジネス書に紹介されるロジカルシンキング(論理的思考)は、型やフレームワークに基づいた思考法だ。それに対し、「クリエイティブジャンプ」と呼ばれる思考方法は、直感的で非連続的なもののように思えるが、決して型がないわけではない。実際には、非連続な思考にも特有の型が存在する。
「クリエイティブジャンプ」とは、「現状と理想の間にギャップがあり、ロジカルシンキングだけではその差を埋められないとき、非連続な思考でその差を飛躍的に埋め、理想を実現させる思考法」と定義されている。
この思考法は、以下の5つの要素に基づいている。
- 本質を掘り下げる
- 空気感を言語化する
- インサイトを深堀りする
- 異質なものを組み合わせる
- 誘い文句をデザインする
これらの要素は、「順番通り」に使うものではなく、「重層的に重なり合いながら」互いに作用し合うことで、クリエイティブジャンプが起こる。そのため、一見すると型がないように見えるが、実際には明確なルールに従っているという訳だ。
今回は、その「型」について、特に重要だと感じたポイントをいくつかまとめてみる。
必ずしも「良い」=「選ばれる」とは限らない
本書の著者はホテル経営者で、北海道の富良野でペンションを運営していた際、Wi-Fi環境の改善に奔走していたエピソードが紹介されている。ある日、著者は「スプウン谷のザワザワ村」という美瑛町の宿泊施設の話を耳にする。この施設も著者のペンションと同様、Wi-Fiが使えない場所にあるが、施設は大人気で予約が取れないほどだ。
「スプウン谷のザワザワ村」は、北海道の自然に囲まれ、日常の喧騒から離れて、まるで絵本や物語の世界に入り込んだような空間を提供している。このことから著者が学んだのは、「良いこと」を追求するのではなく、「選ぶ意味がある」ホテルを作る大切さだ。
通常、ホテル予約サイトでは、部屋の広さや食事の質、清掃状態、設備などが指標となり、口コミやスコアで他のホテルと比較される。この場合、「選ばれる」=「他より優れている」という考え方になりがちだ。しかし、上記の例からわかるのは、選ばれることが必ずしも「設備(例:Wi-Fi環境)が優れている」という意味ではないことだ。むしろ、設備が劣っていても、そのホテルならではの魅力をうまく伝えれば、十分に選ばれるということだ。
他との違いが伝わっているからこそ「選ばれる」
著者は良いホテルを作るためには、その土地のブランドイメージを固めることが大切だと語っている。そして、ホテルが「選ばれる」ためには、単に「良さ」を追求するのではなく、「違い」に注目することが重要だと言う。
「豊かな自然」「美味しい食事」「温かな人々」といった魅力は、どこでも見られるものだ。これらから一歩抜け出すためには、他の土地との比較を通じて独自性を際立たせたり、その土地ならではの景色や空気感を言葉で表現することが大切だ。こうして、絶対的な特徴と相対的な特徴を組み合わせ、土地の「違い」を明確にすることで、「選ばれる」状態を作り出すことができる。
さらに、「異質なものとマッシュアップする」という発想も有効だ。
著者は自分の強みである「ホテル」を軸に、さまざまな変数を組み合わせることで消費者に響くホテルのコンセプトを生み出している。すべてを変えると、予測がつかない結果になったり、ありきたりなものになったりする恐れがある。しかし、強みを生かしながら変数を組み合わせることで、独自性を持ったビジネスを作り出せるのだ。また、同書では「発信すること」よりも「発信してもらうこと」の重要性が語られている。新しい変数を消費者が実感すると、それが自然に広まり、ブランドが広がっていくという考え方だ。
まとめ – クリエイティブであることは「違う」ということ –
一見、クリエイティブな思考は才能ある人の特権のように思えるかもしれない。しかし、クリエイティブであるということは、「魅力的な違いを正しく創り出す」ことに他ならない。なぜなら、クリエイティブであるとは、他とは違って選ばれるということだからだ。
ところで、「この文章、頭がいい人が書いたな」と感じる文章を見たことはないだろうか。私もこの本を読んで、そう感じた。同書では、難しい言葉を使わず、抽象的な概念をそのまま伝え、ニュアンスがズレることなく表現されている。そんな文章を読んで、改めて自分の文章力の足りなさを感じた。
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