面白いアイデアを生み出すために、偶然をコントロールする

クリエイティブ思考

「ここだけはおさえて」ポイント

どんな人にオススメの1冊?

  • アイデアを生み出す仕事に携わっている人
  • 新しいアプローチでクリエイティブな発想を身につけたい人
  • 「閃き」や「クリエイティブ」に自信がないと感じる人

ポイント①:面白いを生み出すためには「似ていないこと」と「よくわからないことを避ける」ことが重要

面白いアイデアを生み出すための鍵は、他と似ていない視点を持ち込むことにある。加えて、誰でも理解できる単語を選ぶことが、その面白さを際立たせる。

ポイント②:「面白さ」は発散から始まり、削ることで見えてくる

「面白い」を生み出すには、思いつく限りのアイデアを発散させて、その中から面白くないものを削るというアプローチも存在する。アイデアは偶然思いつくものである、という前提のもと、正しくアクションすることがカギ。

読みやすさ:★★★★☆

アイデアに対して持っている「クリエイティブ」「閃く」というイメージを覆えさせてくれる本。閃けないと感じている人に対して、地道かつ正攻法的なアイデアの生み出し方を教えてくれる。スラスラ読め、「次に何かを考える際、この方法でやってみようかな」と思わせてくれる1冊。

「面白い」って、どういうこと?

面白い」とは、どういうことだろうか?

この言葉は人によって解釈が大きく異なるため、捉え方もバラバラだ。映画のジャンル一つ取っても、アクションやホラー、ミステリーなど、好みは人それぞれ。料理や漫画、音楽など、面白いと感じるものは多種多様であり、同じ映画を観ても感じ方が違うのは当然だ。このように、「面白い」という感覚は個人に依存している

しかし、クリエイティブな仕事に従事している人々、特に広告業界の人たちは、多くの人々に響く「面白い」アイデアを生み出さなければならない。それでは、彼らはどのようにしてその「面白い」を見つけているのだろうか。

では、彼らはどのようにして面白いアイデアを思いついているのか。天才的な閃きを発揮しているのだろうか。その答えを教えてくれる1冊をご紹介。

面白いって何なんすか!?問題――センスは「考え方」より「選び方」で身につく 】(井村光明・著)

井村光明

博報堂のクリエイティブディレクター兼CMプランナーとして活躍する広告界の第一人者。東京大学農学部を卒業後、1991年に博報堂に入社し、以来、多くの著名な広告キャンペーンを手掛けた。特に、日本コカ・コーラ「ファンタ」やロッテ「クランキー」、UHA味覚糖「さけるグミ」などのCMは、多くの人々の記憶に残る作品となっている。

多くの人が憧れる広告代理店に勤めている著者によると、何が面白いかなんてわからない」のだそうだ。確実に面白いことを思いつける考え方などは存在しない

ただ、面白くない」ことの判断は、多くの人にできるのではないだろうか。例えば、スマホの広告を見てみよう。

A:「圧倒的なスペックと進化したデザイン!」
B:「1秒のラグも許さない。指に吸い付くような操作感を体験せよ。」

なんとなくBの方が興味をそそられやすくはないだろうか。「スペック」「デザイン」といった誰もがイメージする単語を使うより、「操作感」という普通とは異なる部分に着目した単語の方が、少し面白いと感じるのだ。

魅力を伝えようとしても、他と似てしまうと、心を捉えることは難しい

また、「よくわからないこと」を避けることも重要だ。次の例ではどちらがすぐれているコピーだと感じるだろうか。

A:「牛肉×バター。最強。」
B:「当店では、厳選された国産牛に濃厚なバターを合わせ、香ばしい香りとジューシーな味わいが絶妙に絡み合うメニューをご用意しています。」

Aの場合、魅力を伝える言葉は「最強」だけだ。しかしBには、「厳選された」「濃厚な」「香ばしい」「ジューシーな」「絶妙に」など、形容詞が沢山盛り込まれている。にも関わらず、Bの方がわかりにくく感じるのではないだろうか。「最強」というワードは普通食べ物には使わないが、魅力は真っ直ぐ伝わる。

「面白い」の反対は「面白くない」ではなく、「よくわからない」だ。面白いと感じてもらえる単語を足していっても、「よくわからない」を招いてしまうと、心に残らない

普段とは逆のアプローチで、「面白い」を目指す

前章では、「他とは似ていないものが面白い」「よくわからないものは面白いと感じてもらえない」と述べた。とはいえ、最初からオリジナリティあふれるものをつくろうと意気込んでも、なかなかうまくいかない。

そんな多くの人に向けて、同書で提案しているやり方が面白くないものを削る」という、普段とは逆のアプローチだ

人は「面白くない」、つまり「他と似たり寄ったりだな」「メッセージや魅力がよくわからないな」といったことは理解しやすい。この特性を活かし、面白くないと感じる部分を削っていくことで、面白いものを残すのである。

ポイントは、アイデアをとことん発散させること。数多く出すことだ

ディスカッションでアイデアを絞る際、発散→収束というアプローチを取ることも少なくない。この時、収束、つまりまとめることが重宝されがちだが、発散したアイデアの中に良いものがなければ、それをまとめても面白いものにはならない。また、収束は「まとめる」という性質上、どうしても多くのアイデアの共通点似ている部分を軸にする傾向がある。全員の意見を一言でまとめることが目的であれば問題ないが、面白いことを考えようとしているのであれば、

とにかくアイデアを沢山出す → 似ている部分、よくわからない部分を削る

というアプローチをとってみてはいかがだろう。

こう考えると、「閃く」という単語とは少し縁遠い印象を受ける。どちらかというと地道だ。著者も、「面白いものとは、何らかの考え方に基づいて必然的に生まれてくるものではなく、偶然生まれてくるものという前提のもと、やれることをやるのが大切」といったスタンスをとっている。「クリエイティブ」な仕事とは、こういう仕事のことだと気付かされてしまった。もちろん、天才的な閃きを発揮する人もいるものと思うが、そうではないと感じる人たちに対し「クリエイティブ」を示してくれる1冊となっていることがとても励みになると感じた。

まとめ – 「面白い」の本質を知ることで、アイデアを生み出す新しいアプローチが学べる

決して難解な本ではなく、むしろエッセイ風で読みやすい1冊であるにもかかわらず、学びが詰まった内容が多い同書。特に、「面白いものとは、何らかの考え方に基づいて必然的に生まれてくるのではなく、偶然生まれてくるものという前提のもと、やれることをやるのが大切」という考え方に、非常に心強さを感じた。アイデアを生み出す仕事に従事していなくても、誰にでも役立つ1冊だと感じるので、興味のある方にはぜひ手に取っていただきたい。

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