「ここだけはおさえて」ポイント
どんな人にオススメの1冊?
- 仕事での出世や評価を意識しつつ、家庭も大切にしたい人
- 家庭内のコミュニケーションを改善したいと考えている人
- 自己啓発書は難しそうに感じているが、ストーリー形式で学びたい人
ポイント①:「他人と協力して、物事をより良い方向に進めていく」のは、仕事も家庭も同じ
仕事での成功や家庭内の円満な関係は、どちらも他人との協力にかかっている。上司や同僚との円滑なコミュニケーション、家族とのしっかりした連携が、物事をスムーズに進める鍵となる。
ポイント②:カギとなるのは、やっぱりコミュニケーション
相手の感情を理解し、伝えたいことを上手に伝えるコミュニケーションスキルが、仕事でも家庭でも重要だと本書は教えてくれる。感情をコントロールし、意見をしっかり伝える力を高めることで、問題解決力や協力体制が整う。
読みやすさ:★★★★★
「仕事」と「家庭」という、一見すると異なっているように思える環境の共通項を見出し、「なぜ出世できる人は、家庭も円満なのか?」という疑問の答えを提示してくれる一冊。内容としては自己啓発書だが、コンサルタントと家庭不和に悩む社員という登場人物のやりとりに沿って解説が進められるため、良い意味で“勉強させられている感”を感じず、スラスラと読み進められる。
仕事ができる人は、なぜ家庭もうまくいくのか?
あなたの周りで仕事ができる人は、どのような能力を持っているだろうか。頭の回転が速い、交渉力や調整力がある、ポジティブで周囲に良い印象を与える、相手の気持ちを思いやる……。さまざまな特徴が思い浮かぶ。
では、そんな人のプライベートはどうだろうか?「家族と仲が良さそうかどうか」を想像してみてほしい。仕事ができる人と聞くと、「家庭を犠牲にして働いているのでは?」と思うかもしれない。しかし、本当に成功している人は、家庭でも愛されていることが多い。
「あんなに仕事ができるのに、なぜ家庭も円満なのか?」と疑問に思ったことはないだろうか。能力が高いから?それとも、エネルギーが人一倍あるから? いや、どうやらそれだけではないようだ。
【なぜ出世する人は家庭も円満なのか?】(片山牧彦・著)
片山牧彦
オールリーダーコンサルティング株式会社の代表取締役社長で、人材育成と組織開発の専門家。住友林業株式会社での人事・経営企画部門の経験を経て、デロイト トーマツ グループで100社以上のコンサルティングに携わった。2023年に独立し、現職に就任。6児の父として、家庭と仕事の両立を実践し、その経験を活かした研修やコンサルティングも手掛けている。
なぜ「仕事ができる人」は家庭も大事にできるのか?
仕事と家庭を両立できる人は、確かにスペックが高いように見える。しかし、彼らが特別に体力があるわけでも、家族に費やせる時間が多いわけでもない。
では、なぜうまくいくのか?それは、「仕事で活かせる能力を家庭にも応用している」からだ。
一見、仕事と家庭は別物に見える。仕事ではデータや論理的分析をもとに意思決定をし、上司・部下・同僚との関係がある。一方、家庭では感情や人間関係が中心になる。
しかし、よく考えてみると、仕事も家庭も「他人と協力し、より良い方向へ進めていく」という共通点がある。
たとえば、仕事では「目標売上を達成する」「納期までにプロジェクトを完了させる」といった明確な目標を設定する。同じように、家庭でも「子どもを大学まで行かせたい」「夫婦の関係をギスギスさせたくない」といった目標がある。
仕事と家庭を両立している人は、必ずしもスーパーマンではない。
彼らは、どちらにも応用できるテクニックを持ち、それを活用しているにすぎないのだ。
家庭も職場も「チーム」—円満な関係を築くためのコツ
仕事と家庭、一見異なる環境に見えるが、上述の通り、「他人と協力して、物事をより良い方向に進める場」という共通点がある。
仕事では、仲間と連携して成果を出す。同様に家庭でも、個々の役割を果たしつつ、お互いを支え合う関係を築いていく。そしてこの「協力関係」を円滑にするためには、コミュニケーションが鍵を握っている。
しかし、「コミュニケーション能力を高めよう」と言われても、具体的に何をすべきか分かりにくい。そのため、ここでは、家庭と職場両方で活用できるコミュニケーションの工夫を紹介する。
感情のコントロール
職場では、感情的なコミュニケーションを避ける意識が高まっている。例えば、「怒鳴る」「強制的な指示」といった行為は減少している。一方、家庭ではどうだろうか?「家族だから」と甘えが出て、つい感情的になってしまうのではないだろうか。
そこで活用したいのが、「6秒ルール」だ。怒りを感じたとき、6秒間こらえることで衝動的な言葉を防ぐことができる。このテクニックは、職場でも家庭でも有効だ。
もう一つの方法が、「マインドフルネス」だ。呼吸に意識を向け、心を落ち着けることで、感情に流されず冷静に話せるようになる。日常的に数回実践するだけで、気持ちの切り替えが上手くなり、家庭や職場での対話が変わるだろう。
3つの役割を共存させる
円満な家庭を築いている人は、「奉仕者」「経営者」「冒険者」の3つの役割をうまく使い分けている。
- 奉仕者—相手に寄り添い支える
職場では「上司が部下をサポートする」や「チームメンバーが助け合う」などの行動が該当する。家庭では、「相手のお願いを先回りする」「感謝の気持ちを伝える」「弱みを見せて信頼を築く」ことが大切だ。 - 経営者—家庭のビジョンを定める
職場で企業理念を掲げるように、家庭でも「どんな家庭を築きたいか」という方針を持つことが重要だ。例えば、「家族全員で助け合う家庭」「挑戦を支え合う家庭」などが挙げられる。こうしたビジョンを持つことで、家庭内のコミュニケーションも変わる。 - 冒険者—相手の世界を広げる
職場でも、新しいスキルを学ぶ機会を提供することが大切だ。家庭でも同じように、子どもやパートナーに新しいことに挑戦する機会を提供することが、相手の成長を支える方法となる。
この3つの役割を「奉仕者:経営者:冒険者=50%:40%:10%」の割合で使い分けると、家庭の雰囲気がより良くなるだろう。
継続こそが信頼を築く
コミュニケーションの改善は、一朝一夕で実現するものではない。関係性がギスギスしている状態で、突然態度を変えても、相手は戸惑うかもしれない。例えば、今まで掃除をしてこなかった人が、急にトイレ掃除を始めたら、家族は「何か裏があるのでは?」と疑うだろう。
だが、大切なのは 「継続」 だ。信頼関係は時間をかけて築かれる。どんな関係でも、長期的な視点を持って接することで、少しずつ変化が生まれていく。
家族もまた、職場のチームと同じように、相手の態度に影響を受ける。あなたの努力が相手の態度を変え、より良い関係へとつながっていくのだ。小さな行動を積み重ねることが、最終的に大きな変化を生み出すのである。
まとめ – 仕事も家庭も、協力して物事を進める力がモノを言う
仕事と家庭、異なる環境に見えるが、どちらも「他人と協力して物事を進める場」だという共通点がある。上司や同僚とは仕事で、家族とは日常生活で関わるが、どちらも人間関係を築き、協力し合うことが基本だ。コミュニケーションを円滑にし、お互いを支え合うことで、物事が自然と前に進んでいく。
成功している人が家庭でも仕事でもうまくいっている理由は、その人がこの共通点に気づき、実践しているからだ。家庭で活かすべきスキルや、仕事で必要な考え方は意外と重なる部分が多いことを理解することで、より良い関係を築けるだろう。
本書で紹介した内容はその一部に過ぎない。もっと多くの実践的な知識を学び、実生活に活かすことで、仕事も家庭も両立し、より充実した毎日を送ることができるだろう。
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