幸せについて

幸福・心の成長
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「ここだけはおさえて」ポイント

  • 幸せには「セロトニン的幸福」「オキシトシン的幸福」「ドーパミン的幸福」の3種類がある。
  • 3つの幸福には優先順位があり、順番を間違えると、幸福を十分に享受できない。
  • 読みやすさ:★★★(イラストが多く、スムーズに読み進められる。内容は難しすぎないものの、ページ数は約400ページとやや多め。)

幸せにも、種類がある

今回は、幸せについて脳科学の観点から論じる1冊を紹介する。脳科学と聞くと難しいイメージを抱くかもしれないが、内容は予想ほど難解ではないので安心してほしい。

精神科医が見つけた3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法】(樺沢紫苑・著

セロトニン的幸福
心と身体の健康に関連する幸福だ。具体的には「体調が良い」「リラックスできる」「爽やか」「健康である」「平常心でいられる」といった感覚が該当する。

オキシトシン的幸福
「つながり」に根ざした幸福である。夫婦や親子の関係、友人とのコミュニケーション、帰属意識、ペットとの触れ合いなど、深いつながりを感じることで得られる幸福だ。

ドーパミン的幸福
何かを「得る」「達成する」ことによって得られる幸福。お金や名誉、目標達成、学び、褒められることなど、目に見える結果や成果によって感じられる幸福だ。

多くの人が「幸せになりたい」と思うが、上記のように幸せにはさまざまなタイプがあることを理解すると、どの幸福を追い求めているのかがより具体的にイメージできるだろう。本書では、各種類の幸福の特徴や、それが欠乏した場合の状態についても詳しく触れており、「幸福は3種類に分類できる」という点を頭に入れておくと役立つだろう。

3つの幸福には、満たすべき順番が存在する

「自分のメンタルが落ち込んでいる時、人に優しくしたり、アクティブに活動してリフレッシュしたりすることが難しい」と感じることは、誰しも想像できるだろう。このような状況にある人にとっては、まず自分のメンタル回復が最優先となる。

つまり、幸福を追求するには優先順位がある。確かに、周囲の人々に優しく接することで一体感を得たり、自己研鑽をしてモチベーションを高めることは幸福を感じるために重要な行動だ。しかし、メンタルが整っていないとこれらを実行することすら難しくなる。

そのため、幸福は次の順番で満たしていくのが良い。

  1. セロトニン的幸福
  2. オキシトシン的幸福
  3. ドーパミン的幸福

簡潔に言うと、「健康」→「つながり」→「成功・お金」となる。

「成功・お金」を手に入れるためには“頑張り”が必要だ。仕事を考えると分かりやすいが、自分の能力を高めたり、給料を増やしたり、副業で稼いだりするためには必然的に努力が求められる。そのため、頑張るための基盤である「健康」が欠かせないことが著者の主張だ。「頑張りすぎればなんとかなる」といった根性論が原因で、睡眠を削ってハードワークを続けるうちに、精神疾患や身体の不調が現れることも少なくない。まず「健康」を確保することが最も重要であることを意識してほしい。

また、「成功・お金」が「つながり」より優先されるべきではない。仕事ばかりに没頭し、家族との時間を犠牲にしたり、子どもとの関係が悪化することは、最終的に人々の幸福感を奪う。ドーパミン的幸福は、良質な人間関係(つまりオキシトシン的幸福)によって支えられているということを覚えておこう。

最後に、「健康」と「つながり」について。著者によると、精神疾患の患者に「たまには友人とお茶でもどうですか?」と提案すると、必ず「こんなに調子が悪いのに、人と会えるわけがない」と返答されるという。精神的な不調があると、人と接することすら苦痛になり、つながりを築くのが難しくなる。まずは「つながり」より「健康」を優先するべきだ。また、セロトニン的幸福を失うと、オキシトシン的幸福も失うというドミノ的な影響があることを覚えておこう。

ちょっとした行動や考え方の変化で、幸せになれる

同書に紹介されている、簡単に実践できて効果が高い幸福を得る方法をいくつか紹介する。

今にフォーカスする

セロトニン的幸福を得るための方法の一つは、「今にフォーカスする」ことだ。

メンタル疾患に悩む人は、「過去」や「未来」にどうしても意識を持っていかれがちである。過去の嫌な出来事や、未来に対する不安で頭がいっぱいになり、心が乱れてしまう。あなたも、眠る前に「今日は嫌なことがあったな…」や、「明日の仕事が不安だな」と考え込むことがあるだろう。そのような思考の中では、幸せを感じるのは難しい。そんなときには「今にフォーカスする」ことが重要だ。今、あなたがやっていることだけに意識を向けるのである。例えば、青空の下を散歩するだけで人は幸福感を得やすいが、その際に過去や未来を考えていては、今の幸せを感じることはできない。過去の出来事は変えられないし、未来を考えてもどうにもならない。だからこそ、今の瞬間に集中することが大切だ。

気づく

これもセロトニン的幸福を手に入れるために有効な方法である。同書では、セロトニン的幸福を「Doの幸福」ではなく、「Beの幸福」として捉えている。要するに、行動だけでなく、精神的な状態から得られる幸福のことだ。普段は意識しない小さな幸せに目を向け、「プチ幸福」を感じ取っていくことで、日々を幸せに感じるようになる。例えば、「ご飯が美味しかった」「信号が多く青だった」「定時で帰れた」といった些細なことがその一例である。これらに意識を向けることが、長い目で見れば「幸せな人生」へとつながっていく。

3つの日記をつける

同書では、次の3種類の日記が推奨されている。

  • ポジティブ日記: 1日の終わりに、楽しかったことを3つ書き残す(セロトニン的幸福)
  • 感謝日記: その日の感謝の出来事を3つ書き記す(オキシトシン的幸福)
  • 親切日記: 自分が行った親切な行動を3つ書き記す(オキシトシン的幸福)

一見簡単に思えるが、意識して取り組まないと難しく感じることもある。そこで、最初はポジティブ日記から始めるのがオススメだ。その後、慣れてきたら感謝日記、さらには親切日記に進んでいくことを推奨する。最初は「日記を書くこと」に意識を向けるかもしれないが、続けるうちに「今にフォーカスする」「気づく」という思考が自然に身についていく。そして、気づけば、日記を書くことで、幸せを感じやすくなる自分に変わっているだろう。

まとめ – 幸せの解像度を上げて、少しだけ思考とアクションを変えてみよう –

本書は、自己肯定感を高めるための“励まし”ではなく、脳科学の視点から幸福の感じ方を論理的に解説している一冊だ。『セロトニン』や『オキシトシン』など、普段耳にする言葉がどう幸福に影響を与えるのかを明確に理解できる。また、少しの思考の変化や簡単なアクションで幸福を感じる方法が実践的に示されている。ライトな読書家でも理解しやすく、「本って他人を幸せにするんだな」と感じられる内容だ。オススメの一冊である。

ああ、あと数十分で今年も終わりである。みなさま、お疲れ様でした。来年は今年蒔いた種がすくすく成長するように”質”という名の水やりにこだわる1年にしようかと。良いお年を。

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