「あぁ、この人と自分は大事にしているものが違うんだな」という俯瞰ができるようになったのが最近である。良いとか悪いとかではなく、その事実を客観的に捉えることができるようになったというか。世の中って「正義 vs 悪」より「正義 vs 正義」によるすれ違いの方が圧倒的に多いんだなっていうのを大人になって知ることができたからだと思う。どっちも正しいから白黒つけるのが難しいし、ともすると白黒つけることが正しくない場面もあると思うし、「大事にしているものに違いがある」という事実が明白になったことはポジティブに捉えることができるだろうし。
喧嘩した訳ではないのでご心配なく。今回の著者のメッセージとは少し乖離してしまうのかもしれないが、自分はこの1冊を読んで「自分の大事なものをしっかり持っておくことって大事よな」と感じたのである。思考停止するのであれば、他人軸をそのままインストールしてしまうのが楽なのだけれども。ついつい流されてしまうし、その方が良い意味で目立つこともないのだけれども、やっぱり自分軸を持っていないと、今の社会を生き抜く上で一回は迷子になってしまう気がしてしまう。じゃあどうすればいいの、に対するアンサーをくれるのがこちらの1冊。
【誰にも何にも期待しない 行動力と幸福度を同時に高める練習】(長倉顕太・著)
同書は【移動する人はうまくいく】の著者である。良い意味で言葉がオブラートに包まれておらず、ストレートに「環境を変えることって大切なんだな」と感じた人も多かったのではないだろうか。そんな著者が、今回の1冊では「期待しないこと」の重要性を説いてくれている。
「やりたいことがない」のはなぜなのか?
やりたいことがないのはなぜなのか?現代社会において、同じような悩みを抱える人は少なくないだろう。でも、冷静に考えてみると、地球上に何かしら興味のある仕事や趣味が存在しそうなものである。ではなぜ「やりたいことがない」と感じてしまうのか。この悩みは実は「(自分の知っている世界の中に)やりたいことがない」という状態なのである。知らないだけだからこそ、著者は「やりたいことに期待しない」ことを推している。同書によると、やりたいことというものは、他人の選択や過去の価値観により形成されるのだという。
- 他人が欲しがっているものを自分も欲しがる
これを社会的証明と呼ぶのだそうだ。あるあるである。流行りの商品を購入しがちなのも、他人の選択を重視するこの心理現象によるものである。
また、親の影響も大きい。
- 親の期待に応えよう
ある意味当たり前の感情である。しかし冷静に考えると、「親が大事にしている価値観」=「自分が大事にしている価値観」が常に成立するとは限らない。幼少期は特に両親の影響を受けやすく、それが知らず知らずのうちに自分の価値観だと認識してしまうこともあるのだという。
これらを踏まえると「他人の選択や過去の価値観に基づいた”やりたいこと”の実現より、新たな価値観や興味を見出すことが大切」ということになる。自分が知らないものに触れないと、新しい価値観も芽生えないよね、である。確かに。ちなみに何をするにも腰の重い自分は「新しい価値観や興味をどう見つければ良いのか、と感じてしまう」が、これはやはり、環境(の変化)の力に頼ろう、というアンサーに落ち着く。本を跨いでフラグ回収された感覚である。
努力と偶然
著者は努力にも期待しない方が良い、というメッセージを発信している。この部分だけ切り取ると「努力するな」感も出てしまうが、少し語弊がある(かつ、自分が同書の中でビビッときた内容であった)ので、説明させていただく。
まず、認識しておくべきは「どんなに嘆いても生まれもっとものを変えることはできない」という事実である。このような事実がある中で、人生を好転させていくために必要なのが「偶然を呼び込むこと」である。
偶然を呼び込むことをもう少しわかりやすく言うと、「偶然の機会を積極的に増やし、生かす」ということである。著者の前作にもあるが「行ったことのないところに赴くなど、偶然が起こりやすい環境に身を置く」が1つの例である。そのほかにも「失敗を恐れず行動する」が挙げられる。失敗をマイナスなこととして恐れすぎず、何か新しい行動を起こすことを、偶然に出会うためのアクションとして捉え、とりあえず行動することが大切なのだそうだ。
個人的には「自己理解のために生まれつきの能力があることを知る」という文書が刺さった。得意・不得意や嗜好は比較によって明らかになるものだから、「できない=マイナス」と捉えるのではなく、それを知ることで自分自身を客観的に理解できることを頭においておこう。その上で、努力ではなく、偶然に出会うためのアクションを起こすのである。
まとめ - ”他人の価値観の魔法”との戦い方を教えてくれる1冊 –
誰にも何にも期待しない、といったタイトルからは想像しづらいが、同書は「知らず知らずにかかってしまっ”他人の価値観の魔法”から抜け出し、自分が大切にすべきものの探し方を教えてくれる1冊」である。わかっているようでわかっていない”他人の価値観の魔法”との戦い方。知るべきことを知ると、ストンと気持ちが楽になって、自分の本質向き合うことができるようになるだろう。
コメント