「ここだけはおさえて」ポイント
どんな人にオススメの1冊?
🔹「頑張る or 頑張らない」で迷っている人
- ストイックに努力するか、ゆるく生きるか悩んでいる
- どちらの極端にも違和感を感じる
🔹 努力しているのに成果が出ない人
- 才能や努力だけでは報われない現実にモヤモヤしている
- 何を軸に頑張るべきかを知りたい
🔹 キャリアや生き方に迷っている人
- 「このままでいいのか?」と漠然と不安を感じている
- 成功に必要な「独自性」と「タダ乗り」のバランスを知りたい
ポイント①:「ストイックさ」と「ゆるさ」のバランスが現代の努力を支える
高い理想を掲げ、自己実現を追求し、グローバルな競争に挑む姿勢は、時に挫折を生みやすく、他者に価値観を押し付ける要因にもなり得る。一方で、「ありのまま」を重視し、頑張りすぎないスタイルに偏ると、将来の方向性が見えず、不安を抱えたまま立ち止まってしまう。現代をうまく生き抜くには、周囲の意見を柔軟に受け入れる「ゆるさ」と、自分の目標に向かって粘り強く努力する「ストイックさ」を両立させることが不可欠だ。
ポイント②:「独自性」と「タダ乗り」が成功のカギ
自分だけの「独自性」を磨くことで、努力や才能は最大限に生かされる。しかし、それだけでは成功は約束されない。運を味方につけるためには、すでに存在する仕組みや環境を賢く活用する「タダ乗り」の視点も欠かせない。独自性を極めることと、時には流れに乗ること。その両方を組み合わせることで、より大きな成果へとつながっていく。
オススメ度:★★★★☆
特に「生き方迷子」や「キャリア迷子」に陥っている人におすすめの一冊。将来を真剣に考えるからこそ、不安やモヤモヤを感じやすい現代において、自分に合ったスタンスを見つけるヒントが詰まっている。ページ数も多すぎず、わかりやすい内容が多いため、手に取りやすいのも魅力だ。
がんばる?がんばらない? その間にある生き方
あなたは社会的な成功を目指して努力し続けるタイプだろうか。理想と現実のギャップを埋めるために、ひたむきに努力し、成長を重ねていく。そんな生き方もある。
ジャンケンでずっと勝ち続ける人がいるように、競争がある土俵においては、勝者であり続けられる人は確実に存在する。しかし、これは一部の人だけがなせる業だ。競争の世界では、誰もが勝者になれるわけではなく、努力すれば報われるとも限らない。
今の時代、「社会的な地位や評価よりも、自分なりの目標を持って生きること」が重要視されている。他人と競い続けるよりも、自分のペースを大切にしたいと考える人が増えている。
とはいえ、「がんばりすぎない」スタイルも簡単ではない。ずっと「今の自分らしく」を継続しようとすると「このままでいいのか?」と疑問を抱くこともあるだろう。「がんばりすぎなさすぎて、どちらに人生を推し進めていくべきか、描くことができない」という不安を感じてしまうかもしれない。
「がむしゃらにがんばるか」「がんばらないで、どう休むか」。この二択では、今の時代をうまく生き抜くのは難しい。その間の選択肢として、本書が提案する「ゆるストイック」という考え方がある。
【ゆるストイック――ノイズに邪魔されず1日を積み上げる思考】(佐藤航陽・著)
佐藤航陽
1986年生まれの日本の実業家。15歳から独自に商売を始め、生活費を稼いでいた。福島県立福島高等学校を卒業後、早稲田大学法学部に進学するも中退。2007年にイーファクター株式会社(現メタップス)を設立し、2015年に東証マザーズ上場を果たした。2017年には宇宙開発を目的とした株式会社スペースデータを創業。
著書『お金2.0 ―新しい経済のルールと生き方―』は20万部を超えるベストセラーとなった。また、2022年には『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』を出版し、メタバースの概念や活用方法について解説している。
現代を力強く生き抜くためのポイントは、「淡々と自分のペースで歩み続けること」。競争に振り回されず、かといって怠惰にも流されない生き方が可能になる。
価値観をアップデートする
「がむしゃらにがんばるか」「がんばらないで、どう休むか」の二択ではなく、その間のバランスを取る。それが「ゆるストイック」な生き方だ。そのためには、まず価値観をアップデートする必要がある。
- 公正世界仮説:人間の行いに対して公正な結果が返ってくるという考え方。「努力は報われる」などが代表的。
- 被害者意識:不快な状況やトラブルに遭遇したとき「何が悪かったのか」「誰の責任か」と、外部に原因を求める意識。
- 自己責任論:起こった結果は全て自分の責任であるという考え方。
- ゼロリスク思考:リスクが全くなくなるまで、行動を起こさないようにする思考。
- ゼロ失敗思考:失敗を避けたり、それを認めないようにする思考。
- ロジカルシンキング信仰:物事を合理的に考えること、合理的な判断を最も正しいとする考え方。
これらの考え方は、新しい時代に適応し、自分らしく生きることの妨げになってしまうのだという。
例えば、「努力は必ず報われる」という公正世界仮説を抱いていると、「努力は必ず報われる訳ではない」と冷静に現実を受け止めることができなくなる。被害者意識や自己責任論に沿って、うまくいかなかったときに「誰が悪かったのか」「全て自分の責任」と考えてしまうと、「自分ができることは何か」というポジティブな思考を巡らせることができなくなる。
まずは、これらの考え方をアップデートすることが大切だ。このアップデートにより「願望」と「現実」をしっかりと区別できるようになると、正しさの罠から抜け出すことができる。
「運」を味方につける
価値観をアップデートすると「運」の影響を正しく認識することができるようになる。
例えば、何か新しいことにチャレンジするときを想像してほしい。そのチャレンジがそれほど難しくはなかったとしても「100%成功させること」はなかなか容易ではない。新しいチャレンジだからこそ、失敗する可能性もある。
しかし、「願望」と「現実」との区別ができているかどうかで、この失敗の捉え方は異なる。
区別ができていない人は、失敗したことを認められず、「何が悪かったのか」と責任の所在を求める。また、その原因を合理的に分析しようとする。これらの思考は全て悪手となる訳ではないが、将来を予測できない時代では、全てを合理的に理由づけることは困難だ。しかし、「運」の影響を考慮せず、失敗を正しく認めることができないと、現代を上手く乗りこなすことはできないのだ。
反対に、「願望」と「現実」を区別できている人にとって、失敗とは「当たり前に起こり得ること」である。当たり前に起こり得るからこそ、許容し、新しいチャレンジに何度も挑戦することができる。そしてそのチャレンジには「運」が絡んでいるので、何度も挑戦をしていくうちに「成功」することもある。
チャレンジの回数を増やすということは、偶然が起こる機会を増やすということだ。こちらの記事も参考となるので、興味を持った方は、ぜひこちらも読んでもらえると嬉しい。
あなたらしさを活かす「独自性」と、運を味方につけるための「タダ乗り」
好き・得意・需要から考える「独自性」
価値観をアップデートすると、他人の評価から自由になり、「自分なりの生き方」を考えられるようになる。そのために重要なのが「独自性」だ。
本書では、「自分が活躍できるニッチな領域を見つけること」が大切だと説く。成功するために、必ずしも大きな市場や有名企業を目指す必要はない。むしろ、自分の強みを活かせる場所を選ぶことで、成功の可能性は高まる。
もちろん、ニッチであっても世の中のニーズがなければ、「趣味に勤しむ」ことになってしまう。しかし、ニッチとニーズの重なる領域を考える上では、その優先順位が重要となる。
独自性を見つけるには、次の順番で考えるのがよい。
- 好きなこと:自分が楽しく取り組めることを見つける。
- 得意なこと:周囲の反応を参考に、自分の強みを知る。
- 需要があること:社会的なニーズと照らし合わせる。
まずは「好きなこと」だ。これは自分との対話を踏まえ、「幸せな生き方をするために、自分が好きで、楽しく取り組めることはなにか」を考える。
次に、周りの反応やフィードバックから「得意なこと」を見つける。他人にとっては難しいが、自分にとってはそれほど努力せずともできることは、重宝されるものだ。
そして最後に「需要があるかどうか」を考える。好きなことや得意なこととは異なり、需要は社会や競合などのコントロールできない要因によって左右される。最初に需要の有無を考えて、そこに自分を合わせていこうとすると、自分らしさを発揮できなかったり、不得意なことを継続することになるなど、幸せを感じながら成功し続けることが難しくなってしまうのだ。
なお、以下の記事では「得意を継続していくうちに、好きになっていく」という考え方を採用している1冊を紹介している。今回紹介している1冊とは順番が異なっているが、根本にある「自分なりの人生の羅針盤を持つべし」という部分では共通している。
「タダ乗り」は現代における有効な生存手段
ゆるストイックな生き方を実践する上で、「独自性」と同じくらい重要となる考え方が「タダ乗り」である。
タダ乗りというワードに「甘えている」という印象を抱いてしまうかもしれないが、同書で紹介しているタダ乗りは「すでに存在している基盤を最大限に活用する」というポジティブな意味を含んでいる。甘えではなく、現代社会に適応した「賢い」やり方なのである。
すでに存在している基盤とは、プラットフォーム・サービス・ソフトウェア・コンセプトなどなんでも良いが、多くの人にとって最もイメージしやすい基盤は「SNS」となるだろう。
SNSの強みは「拡散力」である。もしインフルエンサーが、YoutubeやInstagramといったSNSを活用せず、自身のサービスを立ち上げていたとしたら、ここまでの「バズり」は起こらなかったのではないだろうか。自前のサービスで拡散される可能性もゼロではないが、コンテンツの質だけがバズるかどうかを決める訳ではない。必ず、運や偶然が絡んでくる。それらを味方につけることは、あなたの独自性を成功に導くために、必要不可欠となるのである。
成長している基盤を活用することは、そのコンテンツに外心力を加えることだ。たとえコンテンツの質(内心力)がそこそこであったとしても、それに外心力を加えることで、誰かの心に刺さる可能性はグッと高まる。独自性の追求にリソースを割くことを意識しつつ、積極的にタダ乗りしていくことで、独自のコンテンツに外心力を持たせていくことが大切なのだ。
まとめ – コントロールできるものに集中し、運を味方につける
VUCAの時代を生き抜くために必要なのは、社会的な価値観に沿った努力ではなく、あなたの独自性を磨くための努力である。独自性を磨くためには、自分自身を管理し、必要な努力を積み重ねる姿勢が求められる。
しかし、成功は努力や才能だけで決まるものではない。どれだけ優れた独自性を持っていても、運に左右される部分があることを忘れてはならない。だからこそ、その影響を正しく理解した上で、既存の基盤を活用する「タダ乗り」の戦略を取ることが重要だ。
人生、白黒だけでは判断することができないことは少なくなさそうである。グレーであることをマイナスに捉えず、柔軟に適応するための強みと考えてみることで、迷うことなく現代社会を歩んでいけるのではないだろうか。
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