「ここだけはおさえて」ポイント
どんな人にオススメ?
- 職場やプライベートで苦手な人との関係に悩んでいる人
- 付き合いを避けられず、どう接すればいいか分からない人
- 「相手が変わってくれたら…」と思いがちな人
ポイント①:苦手の原因は、「相手」ではなく、自身の「評価」
人は同じ状況でも、受け取り方が違う。本書は、「苦手な人がいるのは、その人自身の問題ではなく、自分の評価の仕方によるもの」と説いている。つまり、「苦手な相手」を変えるのではなく、自分の見方を調整することで関係が楽になる。
ポイント②:人間を4つのタイプに分類すると、苦手な人に対するの捉え方が変わる
人を4つのタイプに分類することで、「なぜその人が苦手なのか」が明確になる。タイプごとの特徴を知ることで、相手の行動の理由が理解しやすくなり、不必要にイライラせずに済むようになる。
ポイント③:評価のクセは、セルフトークで変える
「この人は自分を信頼していない」「自分とは合わない」といった思い込みが、人間関係のストレスを生む。本書では、セルフトークを変えることで自分の評価のクセを修正し、苦手意識を和らげる方法が紹介されている。
読みやすさ:★★★★★
人間関係という複雑な事象に対し「あえて4つのタイプに分類する」というシンプルなアプローチを取ることで、苦手な人との付き合い方を教えてくれる1冊。「相手の全てを許容しよう」ではなく、「あくまでも自分は自分、他人は他人」といったスタンスを取っていることも個人的には好印象。ページ数もそれほど多くはなく、難しい内容もないため文章も読みやすい。
苦手な人との付き合い方を学ぶ
学校、職場、友人関係、クラブやサークルなど、どこにおいても苦手な人に遭遇することは避けられない。考えてみれば、「普段関わっている人みんな大好き」という状況はほぼあり得ないだろう。
できれば接するのを避けたいと感じてしまう。しかしながら、なかなかスパッと関係を切ることができないことがほとんどだ。しかも、他人を変えることは大変難しい。
では、どうすればストレスなく接することができるのか。今回紹介する一冊が、その学びを提供してくれる。
【苦手な人と上手につきあう技術】(伊庭正康・著)
伊庭正康
京都府出身のビジネス書作家、研修トレーナー。立命館大学を卒業後、1991年にリクルートグループに入社し、営業職として活躍した。当初は人見知りであったが、4万件を超える訪問活動を通じてこれを克服し、年間全国トップ表彰を4回、累計40回以上の社内表彰を受けた。
2011年、研修会社「株式会社らしさラボ」を設立し、リーディングカンパニーを中心に年間200回以上のセッションを行っている。著書は20冊以上に及び、『できるリーダーはこれしかやらない』や『営業の一流、二流、三流』などがある。
また、YouTubeチャンネル「研修トレーナー伊庭正康のビジネスメソッド」を運営し、ビジネスパーソン向けの情報を発信している。
苦手な人との関係は切れないし、相手を変えることもできない。しかし、相手に対する自身の評価を変えることで、その人とうまく付き合えるようになる。これが本書の最も大きなメッセージだ。
例えば、友人との待ち合わせで遅刻してしまうタイプだろうか。毎回必ず間に合うAさんのようなタイプの人もいれば、毎回絶妙に遅刻してくるBさんのようなタイプも一定数存在する。
Aさんタイプの人の多くが陥りがちな思考は「遅刻はすべきではない」である。そして、Bさんがこの考えにそぐわない行動をしているので、イライラしてしまう。
一方、「遅刻も仕方ないよね」の思考をもとに相手を評価すると、イライラは軽減するか、ゼロになる。相手の行動が一切変化していないのにも関わらず。
このようにして、あなたの苦手な「時間に対してルーズな人」とうまく付き合うのだ。「苦手な人」は「相手」ではなく、あなたの「評価」によって生み出されるのである。
相性マトリクスで人間関係を理解する
同じ価値観を持つ人同士は仲良くなりやすいが、異なる価値観を持つ人と付き合うには工夫が必要だ。
価値観の違いなんて複雑すぎてわからない…と思考を止めてしまいそうだが、こんなときこそシンプルに考えるのが効果的だ。本書で紹介している『相性マトリクス』を紹介する。
相性マトリクスでは、縦軸に「表情が出にくい」から「表情が出やすい」、横軸に「自分のことをあまり話さない」から「自分のことをよく話す」を配置し、以下の4つのタイプに分類する。
自分のことをあまりしゃべらない | 自分のことをよくしゃべる | |
表情が出にくい | 理屈タイプ ・確認が細かい ・やたら根拠を求める ・理屈っぽい | 独裁タイプ ・指示や主張が多い ・プロセスより結果 ・せっかち |
表情が出やすい | 迎合タイプ ・優柔不断 ・人の目を気にする ・ヘラヘラしがち | 感覚タイプ ・感覚で決める(前言撤回も) ・目立つことが好き ・仕事の進め方が雑 |
このようにシンプルにタイプ分けをすることで、苦手な人とうまく付き合うためのアプローチが見えてくる。特に、対角線上に位置するタイプ同士は相性が悪い傾向がある。例えば、独裁タイプと迎合タイプ、理屈タイプと感覚タイプの組み合わせだ。
具体的に、独裁タイプの人から見た迎合タイプの人への評価は以下のようになる。
- 「自分の意見を伝えても、思うように伝わらずイライラする。」
- 「曖昧で主体性がないため、何も決められないと感じ、細かい指示を強要する。」
逆に、迎合タイプの人から見た独裁タイプの人への評価は以下の通りだ。
- 「チーム全員の了承を重視するため、スピード重視の考えを受け入れられない。」
- 「みんなの意見に耳を傾けるべきだとイライラする。」
どちらの考えも正しいからこそ、この問題は難しい。しかし、相性マトリクスのフレームワークを導入することで、こんな考え方ができるようになる。
「やっぱりか…。ま、あのタイプだから、仕方ないか。」
良い・悪いを抜きにして「タイプが違うこと」を事実として受け入れるようになるのである。
次に、苦手な人を生み出す原因である「評価」をもたらす思考と、その解消法をお伝えする。
その苦手、思い込みかも? 4つの思考を変えるセルフトーク
苦手意識につながる4つの思考
人は4つのタイプに分類できる。そしてタイプの違う人を、自分の思考の枠組みで評価してしまう。この評価がストレスや疲れ、落ち込みの原因になる。
その評価のもとになる思考は、次の4つだ。
1. べき思考
「〜すべき」「〜であるべき」と考える思考。たとえば、優先席を空けない人を見てイライラする。また、それを指摘することで、周囲から「騒ぎを大きくして迷惑だ」と思われることもある。
2. 完璧思考
「100点か0点」と極端な評価をする思考。「少しでもダメ出しされたらダメだ」と考えたり、自分の「よかれ」を押し付け、結果としてお互いに疲れてしまう。
3. 読みすぎ思考
相手の言動に「何らかの評価」を加えてしまう思考。たとえば、相手の返事がそっけないと「何か隠し事があるのでは?」と疑い、不信感を抱く。そうした感情をもとに接すると、悪循環に陥る。
4. ネガティブ思考
「悪いのは自分」「自分の力不足」と考えてしまう思考。たとえば、仕事の評価が低かったときに「自分には無理かも…」と落ち込み、相手の期待に応えられない自責の念から「この人とはやりにくい」と感じてしまう。
思考の違いによる苦手意識の例
わかりやすくするために、感覚タイプの人が理屈タイプの人に対して苦手意識を抱くケースを考えてみる。
- べき思考:「理屈タイプの反応が悪い。なぜすぐに理解できないのか」とストレスを感じる。
- 完璧思考:「完璧にできるはずなのに、なぜ理屈の説明が必要なのか」と面倒に思う。
- 読みすぎ思考・ネガティブ思考:「相手は自分を評価していないのでは?」「役に立てていないのでは?」と不安になり、仕事のパフォーマンスが落ちる。
このような思考のクセを取り除くことで、苦手意識は軽減できる。
「セルフトーク」で悟りを開く
思考のクセを修正するために、本書では「セルフトーク」が紹介されている。セルフトークとは、心の中で独り言をつぶやき、思考を整える技法だ。
- べき思考にフィットするセルフトーク
例:「それもありか。」「自分と違って当たり前。」「急いだところで、そんなに変わらない。」
ポイント:多様性を認め、他人に対する余裕を持つ。たとえば、上司に厳しいことを言われたときに「それもアリか」とつぶやくことで、苦手意識を軽減できる。
- 読みすぎ思考にフィットするセルフトーク
例:「受ける指摘は成長の肥やし。」「ムカつくだけ損。」「詮索より、事実を優先。」
ポイント:悪い方向に考えないようにし、必要以上に気にしない。つぶやくことで、マイナス思考にストップをかけられる。
クセになっているということは、「自分に合ったセルフトークの型」が存在するということだ。いくつかのセルフトークを持っておけば、それを拠り所にし、「苦手」と感じることを防げる。仲良くなることは難しくても、結果的にその人とうまく付き合えるようになるのだ。
まとめ – 嫌いになるのは「本能」、嫌いを制御するのは「理性」
嫌いになるのは「本能」、嫌いを制御するのは「理性」
本書のこの言葉が、人間関係の本質を突いていると感じる。苦手な人との関係を改善しようとすると、つい感情的に捉えたり、相手を変えようとしたりしがちだ。しかし、自分の思考や解釈を変えることで、無理なく関係を円滑にできる。
これまでにも「解釈の大切さ」について触れてきたが、本書では人間関係にフォーカスし、その重要性をより具体的に示している。自分の捉え方ひとつで、人との関係が変わるという視点は、多くの場面で役立つはずだ。
なお、解釈の視点に関する別の本についても紹介しているので、興味があればこちらも参考にしてほしい。
本書では、ここで紹介しきれなかったタイプ別の評価パターンや、各思考にフィットするセルフトークの例も詳しく解説されている。すぐに実践できる内容ばかりなので、ぜひ試してみてほしい。
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