ダイエットを成功に導く、本能の誤魔化し方

脳科学・心理学

「ここだけはおさえて」ポイント

  • どんな人におすすめ?
     痩せたい人、リバウンドしないダイエットを実現したい人
  • ポイント①
     ダイエットは食事が9割。
  • ポイント②
     リバウンドしないダイエットのコツは「いかに本能に逆らわない状態を作るか」。
  • ポイント③
     運動は「痩せる」ではなく「痩せやすくする」。
  • 読みやすさ:★★★★☆
     多くの人に身近な「ダイエット」というテーマで、興味を引きやすい内容。それでいて専門的な言葉を使いすぎず、分かりやすく書かれているため、普段あまり本を読まない人でも手軽に取り組める。耳で聴く形式もオススメで、効率よく学びながら実践のモチベーションも高まる。

こんなにも興味があるのに、意外と知らない「ダイエット」の世界

「痩せたい」。多くの人が一度は思ったことがあるのではないだろうか。特にお正月明けはその気持ちが強くなる時期だ。クリスマス前の体調や体型に戻すまで、年始からしばらくかかるのが常だろう。

「冬は体を温めるために食欲が増す」と聞いたことがあるかもしれない。しかし、その一方で末端冷え性に悩む人が多い。体が冷えるのに食べたものはしっかり吸収され、なかなか体重が落ちない。このギャップにやきもきした経験がある人も少なくないはずだ。

そして、ダイエットといえば「食事」派と「運動」派のどちらが効果的かという論争がつきものだ。「結局は人それぞれなんじゃないか」と感じる人もいるだろう。「食事をガマンできる人もいれば、運動が苦にならない人もいる」と思うのが一般的だ。

だが、効率的で論理的に痩せる方法となると、「人それぞれ」ではないようだ。この分野の専門家が語る成功法は、一つに絞られるという。

ロジカルダイエット 3か月で「勝手に痩せる体」になる】(清水忍・著)

清水忍

1967年群馬県生まれ。大手フィットネスクラブ勤務後、スポーツトレーナー養成学校の講師を務め、独立に至る。指導の際には「なぜ」を徹底的に追求し、ロジカルかつ実践的なアプローチで、初心者からプロまで幅広い支持を得ている。

トレーニングジムIPFのヘッドトレーナーとして、アスリートのパフォーマンス向上や健康増進を支えている。アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP)など、専門性の高い資格を多数保持しており、メジャーリーガー菊池雄星選手らトップアスリートから信頼を集めている。

また、雑誌「Tarzan」の監修やテレビ出演をはじめ、健康保険組合での研修や企業の健康プログラム作成など多岐にわたる活動を行う。さらに、後進の育成にも力を入れ、伝える力を重視した教育を実践している。

著書には『ロジカル筋トレ』『超宅トレ』などがあり、運動初心者から経験者まで役立つ内容となっている。

本書では、「ダイエット成功のための正しい方法」を論理的に示している。「痩せたい」と願う人なら必ず得られる学びがあるだろう。

倍返しどころか差が歴然!「ダイエットは食事が9割」の真実

普段、何気なく食べている食事のカロリーを、どのくらい意識しているだろうか?たとえば、朝食ではご飯にお味噌汁、焼き魚や納豆。洋食ならパンやサラダ、目玉焼きにベーコン、スープが定番だろうか。最近ではグラノーラやプロテインを習慣にしている人も増えているだろう。それぞれ正確なカロリーは難しくても、食品パッケージや社員食堂の表記を見る機会があるので、ある程度の感覚は持っているのではないだろうか。

一方で、「ウォーキング30分の消費カロリーは?」と問われると、意外に答えにくいのではないだろうか。食事のように普段から数値を見る機会は少なく、必要不可欠な行動ともいえないからだ。さらに、運動量による個人差があるという漠然としたイメージも、判断を難しくしている。

本書によると、ウォーキング30分の消費カロリーは約120kcalだそうだ。「意外と少ない」と感じるのではないだろうか。30分頑張って歩いても、ちょっとしたおやつ1つのカロリーを消費する程度なのだ。ちなみに、ジョギングを30分行った場合の消費カロリーは250kcal前後になるという。

さらに、体脂肪1kgを落とすのに必要なカロリーは約7,000kcalである。これを5kg減らしたい場合、35,000kcalが必要だ。仮に毎日1時間ジョギングするとして、

35,000kcal ÷ 250kcal(30分あたり) × 60分 = 70日

70日間、毎日1時間のジョギングが必要となる。しかも、休まず、食べすぎることもなく、の条件付きだ。現実的に考えると、これを日常生活に取り入れるのは時間的に極めて難しく、続けるモチベーションも大きな課題となるだろう。

一方、食事制限で500kcalを減らすことを考えてみよう。

例えば、かつ丼のカロリーは800~1,000kcal程度(本書のデータによる)。これを海鮮丼に置き換えれば、500kcal前後まで抑えられる。つまり、昼食をかつ丼から海鮮丼にするだけで500kcalのマイナスが実現する。さらに、ざるそばなら約350kcal、お茶漬けなら約250kcalと、より大きなカロリー削減も可能だ。

おそらく、「運動よりも食事制限のほうがずっと楽」と感じる人は多いだろう。著者も「運動だけでは痩せられない」と断言しており、ダイエットの成否は食事が9割を占めると強調している。

正しい努力をしなければ結果は出ない――この考え方は、仕事だけでなくダイエットにも当てはまるのだ。

リバウンドしないダイエットの秘訣は「本能に逆らわない」こと

「頑張ってダイエットしたのに、なぜまた元に戻ってしまうのか?」

この問いに対し、本書は「忍耐力の問題ではない」と断言する。むしろ、それを一因に挙げるのは間違いだという。

ダイエット中の「食べたい」という感情、その正体は脳が発する本能の信号だ。私たちの脳には、体脂肪や筋肉量を一定に保とうとする機能が備わっている。急激なダイエットで体重が大きく変動すると、脳が「危険だ!」と判断し、「食べろ!」という信号を送る。この反応がリバウンドの原因だ。本能を抑えることはできないので、気づいたら元通りになってしまう。

リバウンドを防ぐには、脳に「危険だ!」と感じさせないようにすることが重要だ。そのために必要なのは、摂取カロリーを少しずつ減らすこと。急激に減らすと脳が察知してしまうが、わずかな変化であれば気づかない。これこそが、リバウンドを防ぎつつ減量する鍵だ。

具体的な摂取カロリーの計算方法は次の通りである。

34(メッツ・時) × (現体重(kg) – 目標体重(kg))= 1日あたりの減らすべきカロリー(kcal)

たとえば、75kgの人が68kgを目指す場合:

34 ×(75 – 68) = 238kcal

この238kcalはご飯少なめ1杯分程度。大きな我慢が必要ではない印象ではないだろうか。これを日々積み重ねることで、確実に体重を落としていける。ちなみに7kg減量するために必要な49,000kcalを毎日238kcalずつ減らすと、約6~7か月かかる計算だ。ゆっくりと進めるので、脳が危険を察知して「食べろ!」と叫ぶこともなく、リバウンドしにくい。

「メッツ」とは身体活動や運動の強度を示す単位だ。本書ではデスクワーク中心の場合、34(メッツ・時)を基準にする。立ち仕事が多い人、活動量の多い人は、それぞれ38、40(メッツ・時)程度になるそうだ。著者は「少し辛めにつける」のがコツだと言い、迷ったときは低めの数値で計算することを勧めている。

「摂取カロリーを消費カロリーより抑えれば痩せる」という考え方は正しい。しかし、リバウンドを引き起こすかどうかは、本能に関わる問題だ。ポイントは「本能に逆らわず、数値を見える化すること」。この方法で、リバウンドと訣別できるダイエットを目指そう。

適度な運動がダイエット成功のカギを握る理由

ここまで「効率よく痩せるには食事に重点を置くべき」と伝えてきたが、適度な運動も重要である。本書が提案する運動の役割は明確だ。

– 運動は痩せるための手段ではなく、痩せやすい体をつくるためのもの –

人が1日に消費するエネルギーは、以下の3つから成り立つ。

  • 基礎代謝: 約60%(何もしていなくても消費されるエネルギー)
  • 食事による熱生産: 約10%(食事を消化・吸収するときに使うエネルギー)
  • 身体活動による消費: 約30%
    • そのうち、スポーツなどの運動: 約数%
    • NEAT(運動以外の身体活動): 約25%以上

コントロール可能な部分は、30%に相当する「身体活動による消費」のみである。中でも注目すべきは、「NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis)」というスポーツ以外の活動が大半を占めている点だ。このNEATを増やすのが運動の役割なのだ。

運動のイメージは、車のエンジンを大きくする作業に例えられる。エンジンが大きくなればガソリン(カロリー)をたくさん燃やせるようになる。同様に、適度な運動を取り入れることで基礎代謝を高め、痩せやすい体質に近づけることができる。

具体的には次のような運動がおすすめだ。

  • 腹筋や腕立て伏せなどの筋トレ
  • 軽めの有酸素運動

具体的な方法は本書に詳細が記されているので、参考にしてほしい。

ただし注意すべきことがある。「筋力が増えたとしても、日常的な活動量が少なければ消費エネルギーは増えない」。車のエンジンが大きくても走らなければガソリンを燃やせないのと同じだ。運動によってNEATを増やし、日々の生活に積極的に動くことがダイエット成功のカギになる。

まとめ – 知識を武器にするダイエットの新常識 –

この本は、ダイエットに関する「なんとなく知っている」を「明確で正しい知識」に変えてくれる一冊だ。単に痩せる方法だけではなく、「正しく知ること」「効率よく実践すること」の重要性を改めて教えてくれる。その内容はダイエットに限らず、日常や仕事にも通じる深い学びを含んでいる。

これまでうまくいかなかったのは「忍耐力不足」ではなく、「知識不足」が原因だったと気づかされる。正しい知識を得た今なら、リバウンドせずに成功できる自信が湧いてくる。

個人的には耳で聴く形式がさらにモチベーションを高めてくれたため、そちらの活用もおすすめしたい。新しい知識とともに、自分の体と対話しながら実践してみてほしい。

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