覚悟を持つと、言葉は伝わる

技術・考え方を学ぶ

「ここだけはおさえて」ポイント

  • あなたが上手く言葉をまとめ、伝わるコミュニケーションをするために必要なのは「覚悟」
  • 「捨てる覚悟」「言いたいことを言わない覚悟」「強い結論を出す覚悟」が持てれば、メッセージが鋭く響く
  • 読みやすさ:★★★★(内容の難しさ低め。つまみ読みもできる。具体例の比較もあってわかりやすい。)

”伝わる言葉”には特徴がある

今回は自分への自戒の意味も込めたセレクト。ついつい相手の理解度を測らず、こちらから長々と話をしてしまうものの、まとまりがなく結局伝わらない…という悩みを解消したいあなたに向けた一冊。ちょっと自分の弱点と向き合うことは気分の良いものではないが、そんな自分でも取り入れるべき工夫がまとめられている一冊のご紹介。

ひと言でまとめる技術 言語化力・伝達力・要約力がぜんぶ身につく31のコツ】(勝浦雅彦・著

あなたの言葉はなぜ伝わらないのか。それはあなたが口下手だから、緊張しいだからではなく、伝わる言葉の特徴を知らないことが理由かもしれない。

では、伝わる言葉の特徴とはなんだろうか?

  • 短い
  • 相手が言ってほしい内容である
  • 察してもらう要素が入っていない

である。

短さはメッセージを明確にする

まず、「短い」について。10分以上もある校長先生の言葉のメッセージが捉えられないのもこれである。英語の文章を習った時をイメージしてほしいのだが、極端に言えば、主語と述語(動詞)さえあれば、ある程度伝わるのである。形容詞も副詞もあくまで”わかりやすくする”単語であり、相手が質問をしてきた際に追加で詳細を伝えることだってできる。

主語と述語だけにせよ!は極端だし、本質的には「短ければ短いほどよい」とは言えないのだが、最初はあくまでも「短ければ短いほどよい」くらいの意識でコミュニケーションを図ってみよう。「多くの言葉を知っている」=「自分の伝えたいメッセージをより忠実に伝える言葉を選ぶことができる」であるが、メッセージを渋滞させ、伝わらなければ意味がない。まずは捨てる覚悟を。

やっぱり、相手が求めているメッセージほど伝わる

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あなたがマンションに内見にきたお客さんなら、どちらの方が響くだろうか。間違いなく2つめのコミュニケーションだろう。1つ目はマンションの利点を売り手都合に説明しているのに対し、後者は相手のメリットをイメージした発言となっている。要は”自分が言いたいことを伝えるコミュニケーション”と”相手が言ってほしいことを伝えるコミュニケーション”かの違いである。

同書によると、相手が言ってほしいことを言うためには、「相手を見ること」が大切なのだという。言葉を発する前に、相手を見て、メリットを想像する。これがポイントである。

「そうはいっても、難しい」と感じることがほとんどだ。そんな時に著者がおすすめしているのが「相手も自分うれしくなる伝え方はなんだろう?」イメージすることである。上記の例の場合

 相手:マンションを買って、生活が今以上に充実する

 自分:マンションを気持ちよく買ってもらい、営業成績が伸びる

となる。これを一挙両得トークと呼ぶ。自分が言いたいことだけを伝えるコミュニケーションをやめる覚悟を持ち、双方が徳をするような伝え方を意識してみよう。

察してもらう言葉、言い訳がましい言葉は”時間泥棒”となる

「強い結論を出すことは、リスクを背負うことになる」。これは多くの人が持っているイメージである。同書ではこのイメージに対し、「結論が見えない提案こそ、時間泥棒だ」といったスタンスをとっている。

  • 「昨今の〇〇市場を鑑みるに、今の状況では御社は非常に厳しいと言えますので、ここはひとつ大きな決断を持って考え方や方法論の転換を図るのはいかがでしょうか。現状をたとえて言うなら、溺れる犬がわらにしがみついているようなもので、わらではなくまず丸太にしがみつき、陸を目指すことが大事で….」
  • 「今の市場環境では、戦略の転換が絶対に必要です」

伝わりやすいのはどちらであるかが明白である。短いし、相手が言ってほしいこと(どういう戦略を講じるべきか、と言った疑問に対する答え)も出ているのがポイントだ。そしてこれは、自分が”戦略の転換が必要”という強い結論を出しているが故になせる技だ。

強い結論を出すことは、確かにリスクを背負うことになる。しかしながら、物事は他者とのコミュニケーションによるすり合わせや改善で進んでいくものだ。伝わるからこそ良くしていけるし、「時間を浪費しない」という観点で、よほど相手を思いやっていると言える。誰にとってもかけがえのない財産である”時間”を奪わない工夫は、自分自身が強い結論を出す覚悟によって成立する。

伝える言葉への磨き上げ方

伝える言葉へ磨き上げるための具体的な思考法もいくつか記載されているが、その中から1つ紹介する。

  1. 自分の伝えたいことを紙にかく
  2. それに「つまり(それってどういうこと?)」と問いかける
  3. 出した答えがまだまとまっていないなら、また「つまり」と問いかける
  4. 一言になるまで繰り返す

これは、同書で紹介されていた「つまり思考法トレーニング」という手法である。仕事をしている上で「つまりそれってどういうこと?」と聞かれたことがある人は少なくないだろう。メッセージが伝わっていないのである。これを自分自身でメッセージが伝わる言葉に変換していくのがこのトレーニングである。同書には

お葬式って悲しい状況ではあるけれども、よくわかっていない子供たちが駆け回っている姿はなんだかグッとくるな。

↓(つまり)

それって、「家族の未来がつながった」ことの象徴と言えるんじゃないか。

↓(つまり)

お葬式の場面にも、幸福は存在するんだ。

と”つまり”を重ねていき「子どもたちがかけまわる法事は、幸福です。」というキャッチコピーを導く例が記載されている。自分が伝えたいメッセージの本質を浮かび上がらせるテクニックとして、ぜひ取り入れてみてはいかがだろうか。

まとめ -覚悟を持つと、あなたの言葉は伝わる-

  • 余計な言葉を捨てて、短くする
  • 自分の言いたいこと(だけ)を伝えることを捨てる
  • 察してもらうような言葉を捨てる

これだけ聞くとかなりハードルが高そうに思えるが、同書を読むとこの「一見難しそうに思える感覚」が伝わるコミュニケーションを妨げていることが理解できる。ちょっとした工夫を持つことであなたの言葉が「伝わる」のであれば、あなたにも相手にも大きなメリットがもたらされる。だからこそ、まずは同書を通じてその第一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

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