「ここだけはおさえて」ポイント
- どんな人におすすめ?
仕事で使える「スマートな意思決定の方法」を学びたい人/チームビルディングに悩んでいる人 - ポイント①
意思決定において重要なのは「責められない環境」と「覚悟」 - ポイント②
「責める」代わりに「ネガティブな情報を共有する」ことが大切 - ポイント③
決断することの目的は「間違わないこと」ではなく「結果的にうまくいくようにすること」 - 読みやすさ:★★★★★
どんな仕事にも意思決定はつきもの。ただ、合理的なやり方を知らないことに気づける1冊。「AもBも正しそうなのに、どうしよう」と迷う場面でも、具体的で実践しやすい手法を学べる。
選べないのは当然?
どんな仕事にも意思決定は付き物だ。しかし、選択肢は「一方が正しくてもう一方が間違い」ということは少なく、どちらも正しく見えることが多い。だからこそ、悩んでしまう。
特にチームや部署で意思決定をすると、意見が割れることがほとんどだ。Aが良いという人もいれば、Bが優れていると考える人もいる。それぞれの意見が合理的に思えるため、どちらを選ぶか迷うのは自然なことなのである。
では、どのようにすれば合理的で納得感のある決定ができるのか。その答えを示してくれるのが本書である。
【パーフェクトな意思決定 ── 「決める瞬間」の思考法】(安藤広大・著)
安藤広大
安藤広大 1979年11月5日、大阪府生まれ。早稲田大学人間科学部スポーツ科学科を卒業後、NTTドコモを経て、ライク株式会社(旧ジェイコムホールディングス)で取締役営業副本部長などを歴任。
2013年に識学と出会い、独立。2015年に株式会社識学を設立し、代表取締役社長に就任。創業から約4年で上場を果たし、企業の業績向上を支援している。
著書に『数値化の鬼』『リーダーの仮面』などがある。
意思決定は、誰の役割か?
「意思決定をしたいか」と問われれば、多くの人は「いいえ」と答えるだろう。特に仕事の意思決定は責任が重く、場合によっては個人の努力ではどうにもならない要素が絡むため、不安を感じるのは自然だ。
逆に考えると「最終的な意思決定をする人 = みんながやりたくない役割を担っている、すごい人」と捉えることができないだろうか。もちろん独断ではなく、周囲の意見を聞き、議論を経たうえで決断する姿勢が重要だ。みんなの意見を聞き、揉まれた上で最終決定をする役割を担っているようであれば、尊敬に値する。
そもそも、なぜ意思決定することが、そんなにもすごいことなのだろうか。なぜ意思決定をすることが「すごいこと」なのか。それは、100%確信を持つのが難しいなかで、「勇気を持って決断する」行為だからである。どっちも正しく見えるのに、それを選択しなくてはいけないから、「すごい」のである。
選べる人は能力が優れていて、AとBのどちらが正しいかをわかっている…。確かにそんなことが全くない訳ではないだろうが、チーム内で意見が割れるような事象に関しては、どちらかが正しいと断言できることは少ないだろう。
みんなと同じような不安を感じつつ、「勇気」を持って人がやりたくないことを実践する。
もし、あなたが最終意思決定者ではない立場なら、その人を責めるのではなく、支えることを意識すべきだ。意思決定には、決める人の「勇気」と、周囲の「責めない姿勢」が欠かせない。
「正しく決める」ための、ネガティブな情報共有
意思決定者以外にも、重要な役割がある。それが情報共有、とりわけ「ネガティブな情報の共有」だ。
責めない姿勢は重要だが、それは最終的な意思決定をした際の話である。決定前の議論では、一見批判に見える意見も必要になる。
それが「ネガティブな意見の共有」である。噛み砕くと「”A”案を選ぼうとしてると思うんですけれども、”A”案にはこんなネガティブな要素も含まれています」と共有するのである。
断言するが、これは茶々を入れることや、意思決定を阻害しようとすることが目的ではない。むしろ、より良い決断をするために欠かせない。最終決定がA案であったとしても、そのリスクを理解した上での決定と、知らずに選んだ場合とでは、意味が異なる。
メンバーの一人であるあなただからこそ知り得る情報はなんだろうか。最終的な判断がA案であったとしても、そのデメリットを認識しての「A案」なのか、認識をしないままの「A案」であったのかは、同じようでいて実は異なる。確固たる信念を持ち、正しくA案を選択するために必要となるのが、あなたが持っているネガティブな情報の共有なのだ。
適切な意思決定を支えるために、自分だけが知る情報を積極的に共有する姿勢を持つべきである。
意思決定は「正しさ」ではなく「結果」
どんなに優れた人でも、常に正しい決定ができるとは限らない。誤った選択をしてしまうこともある。しかし、間違えないこと以上に大切なのは、「最終的に成功につなげること」だ。
たとえば「成功確率85%のA案」と「成功確率25%のB案」があれば、A案を選ぶのが妥当だろう。しかし、それ以上に重要なのは、選んだA案を成功させるためにどう動くかである。
つまり、意思決定そのものではなく、「早く決めて実行し、必要なら修正する」ことに注力するべきである。これがチーム全体の意識になると、意思決定者を責めることなく、成功に向けて動けるようになる。
まとめ – ちゃんとした意思決定ができると、他人にも自分にも本質が見えるように –
「どちらの意見が正しいのか」を軸に議論しがちなあなたに届けたい1冊。意思決定において論理的な思考は必要不可欠だが、その対象を必ずしも意見の”内容”だけに定める必要はない。
「そもそもどんなプロセスを踏むと、チームとして正しい選択ができるのか?」という視点を思い出せる1冊として、手に取ってみてはいかがだろう。
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