「ここだけはおさえて」ポイント
- 「集中力」は一つの能力だけで構成されているものではない
- 集中が得意な人など存在しない
- 集中力のコントロールは「欲望の押さえつけ」ではなく「人生の主導権を握ること」
- 読みやすさ:★★★★(Tipsが沢山記載されている形式のため、好きなところだけ読むつまみ読みが可能。文章の読みづらさはなし。)
集中力の正体は、4つのスキルが絡み合ったもの
英語のリスニング能力、数学の計算能力、文章の読解力。これらの能力は一筋縄では伸ばしていくことは簡単ではないが、少なくともどんなことをすれば能力が向上するのかをイメージすることができる。シャドーイング、100マス計算、読書などなど。では、集中力はどうだろうか。タスク管理?ゾーンに入る?いまいちしっくりこない気がする。ともすればリスニング能力や計算能力よりよほど求めている能力なのに、その正体がぼんやりしているために、伸ばし方がイマイチわからない。
「集中力ってどうすれば持続できるの?」そんなあなたに読んでほしい1冊のご紹介。
【ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45】(鈴木祐・著)
タイトルの通り、集中力を持続させる方法を学べる1冊のご紹介である。それを実現するために、まずは「集中力の正体」から解説する。敵を倒すには敵を知らねば。
まず、集中力とは、次の4つのスキルから構成される。
- 自己効力感
- モチベーション管理能力
- 注意の持続力
- セルフコントロール能力
あなたが受験生であると想像してほしい。まず勉強に取り掛かる前の段階において、やる気が出ずにダラダラと過ごしてしまう状態はイメージできるだろう。この段階で必要となるのが「自己効力感」と「モチベーション管理能力」である。前者は「自分は難しいことでもやり遂げられるのだ」と自然に思える心理のこと、後者は気乗りのしないタスクを前に、気持ちを高めていくスキルのことである。
次に、なんとか参考書に手をつけられた段階をイメージしてほしい。スマホの通知が冷蔵庫のお菓子、買ったばかりのゲームや漫画などが気にならないだろうか。ここで必要となるのが「注意の持続力」、つまり、参考書に意識を向け続けるスキルである。
最後は「セルフコントロール能力」について。あなたは”チンギスハン”という単語から何をイメージするだろうか。ほぼ全ての人が”ジンギスカン”をイメージする。そこから派生し「焼肉食べたいな」「お腹すいたな」「コンビニ行こうかな」などと世界史の人物以外のことに意識が向き、集中力が崩壊していく。このような状態を防ぐ力が「セルフコントロール能力」である。
このように、集中力は、複数の能力が絡まり合って構成される。どれも納得できるものばかりであるが、確かに言われてみないとわからない。集中力とは、これら4つの能力をコントロールすることで生まれるものである。
”集中ができない”という前提を知り、忍耐に頼らない工夫をする
同書では集中力を理解しやすくするため、「獣と調教師」の例を採用している。「獣」とは難しいものを嫌い、(スマホやお菓子などの)あらゆる刺激に反応し、パワーが強い(欲望のままに瞬時に行動する)という特徴を持つ。ここでいう”パワーが強い”とは、「美味しそうな料理の写真を見ると、食欲を起動させる」といった、欲望に忠実かつ抗い難い行動を起こす特徴を指す。「獣」は誰しもが心に飼っており、人間の普遍的な特性と言える。
そして「調教師」、つまり理性的に行動しようとする心理は、「獣」には勝てない。つまり忍耐力によって獣を抑えるけることはできないのである。冒頭で述べた”集中が得意な人など存在しない”理由はこれである。
では、どうすれば集中力が高められるのだろうか?同書では「獣を導くこと」を推奨している。押さえつけるのではなく、上手く導いてやることで、望ましい方向にパワーを発揮させるのである。
獣の特性を活かし、獣を導く
上述の通り、獣を押さえつけることはできない。よって正しく導くためには、獣の特性を活かした工夫が必要である。タイトルの通り、同書には数多くの集中力を高めるハックが記載されているが、その中から自分がビビッときたものをいくつか紹介する。
- マイ儀式を作る
獣は難しいものを嫌い、簡単な、つまり、脳のワーキングメモリを使わない方に流れやすい。だからこそ、特定の儀式を行うことで、獣を上手く導くことができる。具体的には「この動作をしたら大事な作業を行う」と決め、その手順を何度も繰り返すのが良いという。変なダンスだろうが、水を飲むことだろうが、実用的な儀式でなくとも問題ない。儀式を繰り返すことで、獣に「簡単だ」と感じてもらえる状態を作れれば良いのである。
- 記録する
自己効力感を高めるには、「できた」と実感することが大切である。そしてそのためには、記録することが効果的な。同書では
行動を変えたいときは、自分がとった行動だけを、結果を出したいときは、結果への過程だけを記録せよ
と説いている。食事の習慣(行動)を変えたいのであれば、食べ物(とった行動)だけを、体重(結果)を減らしたいのであれば、体重計の記録(過程)だけを記録するのである。減量を目指すのに食事の内容を記録するのは効果的ではない。「できた」を実感し獣を導くには、正しく記録することが必要不可欠であるため、ポイントとして押さえておこう。
集中力を司どることは、人生の主導権を握ること
ここが著者の最も伝えたいメッセージではないだろうかと感じてしまう。上述は同書に記載されているハックのほんの一部であるが、決して忍耐力に頼る工夫ではない。「集中力を持続する=我慢する」というイメージがある人も少なくないが、同書に記載されているハックはこれに該当せず、自分の選択肢を広げ、人生の主導権を握ることに繋がるものばかりである。45個全てを実践するのは難しいものと思うが、ここで記載していないハック(セルフ・イメージングなど)も個人的にはビビッときた工夫である。オール制覇を目指そうとせず、「どれか一つでも取り入れよう」くらいの敷居の低さで是非手に取ってほしい1冊。
コメント