子育ての新常識:強みをロジカルに育てる方法

技術・考え方を学ぶ

「ここだけはおさえて」ポイント

  • どんな人におすすめ?
     子育ての悩みを解消したい人/子どもの強みの伸ばし方がわからない人/自分自身の強みを再発見したい人
  • ポイント①
     強みは、ロジカルに伸ばす方法がある。
  • ポイント②
     「気質」「素質」「才能」が強みを構成する3つの要素。「気質」を起点に子どもの成長を考えることが大切。
  • ポイント③
     強みを育てる最終的な目標は、「自信」と「メンタルヘルス」をしっかりと育むこと。
  • 読みやすさ:★★★
     強みのタイプに応じた具体的な行動例が記載されており、性格診断に近い形式で読みやすい。子育てすべてに取り入れるのは難しいかもしれないが、要点を理解して1つでも実践すれば効果的。

強みを伸ばすには「正しい見極め」が必要

かつては「たくさん勉強して、いい大学に入りなさい」という価値観が主流だったが、今では「自分の強みを理解し、それを生かして生きること」が重視される時代である。学歴という絶対的な指標が揺らぎ、自分らしさが求められる時代において、子どもにもその強みを発揮してほしいと考えるのは当然のことだ。

しかし、「この子の強みは何だろう?」と見極めるのは意外と難しい。他人の強みを思い浮かべるだけでも時間がかかることがある。たとえば、同僚Aさんや上司Bさん、お友達Cさんの強みを考えるのに手間取ることがあるなら、成長途中の子どもの強みを見つけるのはさらに難しいだろう。

たとえば、好奇心旺盛な子には、さまざまなことに挑戦させるのがよい。背が高い子にはバスケットボールやバレーボールなどのスポーツ、リズム感のある子には楽器やダンスに触れさせることで、潜在的な才能が芽吹くかもしれない。

強みは誰にでも備わっているが、それを明確に理解するためには、「強み」を細かく分解して考える必要がある。今回は、この分解と育て方を学べる1冊のご紹介。

「強み」を生み出す育て方 】(船津徹・著

気質・素質・才能で見つける子どもの強み

強みは「気質」「素質」「才能」の3つに分類される。

たとえば、以下のように分けることができる。

  • 優しい = 性格的特性 = 気質
  • 背が高い = 身体的特性 = 素質
  • リズム感がある = 技術的特性 = 才能

この中でも、強みづくりで最も重要なのは気質だという。「活発」「優しい」「社交的」「芯が強い」などの性格的な特徴は、一生変わらない普遍的なものだからだ。気質は、何を心地よい、楽しい、興味深い、自分らしいと感じるかといった基盤となる特性である。

本書では、開放性・誠実性・精神耐性・外向性・協調性という5つの観点から気質を分類し、以下の5つのタイプに分けている。

  • 天才気質
  • 研究者気質
  • 商人気質
  • パフォーマー気質
  • 共感者気質

すべての子どもがこの5つの気質を持つが、その中でも軸となる気質を伸ばすことが重要である。本書には診断ツールが含まれており、気質の特性を見極める参考になる。

次に、素質について。本書では素質を「外見的なもの」と「身体能力的なもの」の2種類に分けている。

  • 外見的素質:スタイルが良い、容姿端麗、愛嬌がある、手足が長い、など
  • 身体的素質:バランス感覚が良い、足が速い、手先が器用、柔軟性が高い、など

素質は幼少期から把握し、ポジティブに活用することで、得意分野を伸ばしやすくなるという。ただし、プロスポーツ選手やモデルを目指すような特別な状況でない限り、素質は親目線で評価すれば十分である。親自身の素質と似た要素を探してみると、新たな視点が得られる場合もある。

最後は才能について。才能も気質と同様に分類される。

  • STEM的才能
  • 言語・博物的才能
  • 運動的才能
  • 音楽的才能
  • アート的才能
STEM的才能

STEMはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字。主に数字に強い・パズルが得意といった才能を指す。

どの才能が強いのかを見極めることが、適切な育て方につながる。才能にも診断ツールが用意されており、強みを褒めたり伸ばしたりする具体的な方法が記載されている。これらを活用すれば、子どもの可能性をさらに引き出せるだろう。

子どもが人生を力強く歩むための『強み育て』

強み育てのゴールは、決して英才教育を施し、特定の分野でプロを目指させることではない。その目的は「自信」と「メンタルタフネス」を身につけ、人生を力強く歩めるようにすることにある。

強みを育てる理由を問われたとき、本書はこう答える。それは、成功体験と失敗体験を重ねるためである。自分の意欲で物事に挑み、努力を通じて成功をつかむことで、「自分ならできる」という確かな自信を得られる。反対に、一生懸命取り組んでも失敗する経験は、課題を乗り越える回復力や課題発見力を育む。これこそが人生を前向きに生きるためのメンタルタフネスだ。

強みを育てる過程で、子どもはこれらを少しずつ身につけ、困難にも負けず力強く生き抜く土台を築いていく。本書ではこのプロセスを理論的かつ明快に説明しており、内容は非常にロジカルである。それでも、決して画一的なエリート育成を目指しているわけではない。その柔軟な視点もまた、多くの読者に安心感を与える部分だと感じる。

まとめ – 強みの伸ばし方にも、ロジックがある –

強みを分解し、診断に基づいてそれぞれを伸ばす――こうした理論的なアプローチをとる子育て本は、意外と少ないのではないだろうか。本書は、この分野で新たな視点を提供する一冊である。

もちろん、全ての家庭にこの方法がフィットするわけではない。とはいえ、「どうやって強みを伸ばせば良いのか分からない」「そもそも自分や子どもの強みがよく分からない」といった悩みを持つ人にとって、本書は役立つヒントを与えてくれるだろう。

本書とは異なるスタンスを持ちながらも、親が子どもに愛情を注ぎたいという点では、上記で紹介している本の内容にも共通点する考え方が少なくない。どちらも読む価値のある一冊なので、興味を引かれたら両方に目を通し、自分の共感する部分や実践したいアイデアをそれぞれ取り入れてみてはいかがだろうか。

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