あなたの思考力を次のレベルへ!答えのないゲームを攻略する思考法

仕事術・生産性向上
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「ここだけはおさえて」ポイント

  • 「答えのないゲーム」で出された答えの妥当性は、「答えを出すプロセスの妥当性」で判断される。
  • 思考技術は、無意識的かつ反射的に出るものでなければならない。
  • 読みやすさ:★★★★★(非常に読みやすく、物事の考え方に対する引き出しが深まる。ただし、この本の本質は、「読まなくても良くなるレベルまで内容を身につけること」にあるため、習得には努力が必要。)

内容だけでなく、スキル本の読み方までも学べる、思考技術の実践書

本にはさまざまな種類がある。小説なら「自分が知らない感情に触れる」、自己啓発書なら「新たな知識を得る」といった具合だ。今回はビジネス書に分類される1冊で、主に思考技術を身につけることを目的としている。しかし、この本の特徴は、従来のスキル本とは一線を画す点にある。それは、前の章や全体の要点を繰り返し、何度も復習させる構成だ。著者の思いがひしひしと伝わる1冊であり、そのおかげで読者は強いインプット効果を実感できる。

一方で、この本を読んで改めて感じたのは、「スキル本は一度読んだだけではなく、何度も実践し、再読しなくても身につくようにまで読み込むことが大切だ」ということだ。この気づきが非常に大きな収穫であり、本書を読んだことでスキル本への理解が深まった。しかし、その一方で、このパラドックスには少しもやもやした部分もあったが、それもまた思考を深めるきっかけになった。

「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術】(高松智史・著

人生には、答えが定まっていない問題に直面する瞬間が少なくない。そのようなシーンにどう立ち向かい、楽しむかが問われる。本書は、まさにその「答えのないゲーム」を乗り越えるための思考技術を学べる1冊だ。もしもこの内容をすでに実践できているのであれば、「天才かな?」と思えてしまうほど、誰にとっても強みとなる思考技術が詰まっている。

「答えのないゲーム」で出した答えの妥当性は「プロセス」で評価される

ビジネスにおいて、答えのないゲームは避けられない。それゆえ、クライアントや社長、上司も確実な答えを持っているわけではない。このような状況で、あなたが出した答えの妥当性はどのように判断されるか。その答えは、同書において「プロセス」であると示されている。

答えのないゲームにおいて重要なポイントは次の3つだ。

  1. プロセスがセクシーであること
  2. 2つ以上の比較をすること
  3. 炎上や議論は避けられないこと

まず、「プロセスがセクシーであること」について。これは本書を通じてのキーメッセージであり、「答え(本書では”示唆”と表記)の正解と不正解が判別できないのだから、その示唆を導くプロセスが妥当かどうかが評価基準になる」という考え方だ。

思わず「はぇ〜」と唸ってしまった部分だ。確かに、「絶対的な答えがない課題において、どのように自分の答えの妥当性を判断すればいいのか」と感じていた疑問が、ここで解消された。具体的なプロセスについてはぜひ本書を読んで学んでほしいが、この気づきだけでも本書の魅力の一つとして強調しておきたい。

絶対的な答えがないからこそ、「比較」と「炎上・議論」が重要

自分が導き出す示唆は、100%正解があるわけではない課題に対するものだ。したがって、その妥当性を高めるためには、「示唆同士を比較し、より妥当性のある方を選んでいく」といった過程を踏むことが必要だ。このプロセスが、先述の「2つ以上の比較」の意味だ。私自身も、この考えに驚かされた。「絶対を求めるのではなく、相対的な比較を積み重ねることで、絶対に近づく」という思考は、身につけておきたいと強く感じた。

もちろん、比較する示唆がある程度質の高いものである必要がある。さらに、「多くの人が優れていると感じる意見=相対的に優れた意見」と思い込むことは、クリエイティブな業務においては逆効果になることがある。クリエイティブな業務では、時には多くの人に否定される“未知の良さ”こそが重要であることを理解しておくべきだ。

※クリエイティブな業務において、多くの人に否定されがちな”未知の良さ”の重要度については、以下にまとめている。

また、答えを磨き上げるためには、炎上や議論も重要だという。同書は、示唆を出して終わりではなく、お互いの価値観や意見をぶつけ合うことで、答えの妥当性が高まることを教えてくれる。もっとも、ただ相手と意見をぶつけるだけでは意味がない。

同書には、議論を健全に進めるための思考法「B○条件」が紹介されている。ざっくり言うと、「相手の主張そのものを否定するのではなく、その主張が成立する条件を否定し、自分の主張に誘導する」という方法だ。具体的な思考法は同書に記載されているが、習得にはかなりの努力が必要だと感じた。「やり方自体は理解できるが、実践は難しい」といった印象を受けた。それでも、この思考法を習得すれば、効果は絶大だ。「ミュージシャンと結婚したいという娘を否定せず、公務員と結婚させる方法を考える」ことができるようになるのだ。このような成果が得られると考えると、その価値は計り知れない。

思考法を身につけることの価値、1つでも実践できれば大きな差に

著名なコンサルタントの方が書いた書籍だけあって、記載されている内容を全て自分のものとして完全に習得するのは難しい。しかし、どれか1つでも習得すれば、同書を見なくても自然にその思考回路を駆使できる状態に近づくことができるのではないかと思った。

例えば、「ゲーム感覚」について。

資格試験、恋愛、転職活動など、どんな場面でも適用できる考え方だが、あなたが挑むゲームは次のどちらだろうか。

  • 「100分の70」で勝つゲーム
  • 「100分の3」で勝つゲーム

「いつも通りで良いのか」「1発逆転を狙うべきなのか」を見極めることは、ゲームを戦う上で非常に重要だ。これを見極めた上で、自分の取るべきアクションを決めることで、正しくゲームを戦えるようになる。同じゲームでも、「100分の70」と「100分の3」のどちらに該当するかは、個々人の実力やその時の状況によって異なるため、しっかりと見極めよう。

同書では、このような「ゲーム感覚」についていくつかの例も紹介されている。いきなり、セクシーなプロセスを丸ごと習得するのは難しいかもしれないが、このようなゲーム感覚を意識し、必要な時に「今回はどちらで戦うべきか」を思い出して実践することで、すぐに役立つはずだ。私自身もまずはそこから始めてみようと思う。

まとめ – 答えのないゲームを攻略する知恵を手に入れよう –

答えのないゲームをスムーズに解決できるようになるためには、この本の内容をしっかりとインプットすることが大切だ。それが本来のスキル本の使い方だと思うし、実際にそうするべきだと感じている。

ただし、最初からその高みを目指して読み進めようとすると、逆にハードルが高くなり、続けるのが難しくなるかもしれない。このジャンルの書籍において、読みやすさは抜群であり(しかも、ページ数も多くない)、まずは「どれか1つでも取り入れよう」「アウトプットは意識せず、とりあえず読んでみよう」といった軽い気持ちで手に取ることを勧めたい。それが最終的に、答えのないゲームを少しでも楽しめるようになる第一歩につながれば、自分としてもとても嬉しい。

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