行動できない理由は、“能力”ではなく言葉かもしれない

脳科学・心理学
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はじめに — 読む前に押さえておきたいこと

あなたはこんな悩みを抱えていないだろうか?

「どうせ自分には無理だ」
「また失敗するかもしれない」
「もっと頑張らなければならない」

そんな言葉を、無意識のうちに自分へ向けてしまっていないだろうか。

もちろん、その場ではただの“考えごと”のように感じるかもしれない。しかし、そうした言葉は少しずつ自分の行動や選択に影響を与えていく。

本当は挑戦してみたいと思っているのに、一歩を踏み出せない。
周囲から見れば十分うまくいっているのに、自分では満足できない。
「こうあるべき」という理想に縛られ、気づけば他人の価値観で生きてしまっている。

このような感覚を抱えたことがある人も少なくないはずだ。

我々は、自分の意思で物事を選択しているつもりでいる。しかし実際には、普段使っている言葉や、無意識に受け入れている価値観によって、思っている以上に行動を左右されている。

では、人はどのようにして、自分自身を形づくっているのだろうか。

本書が示すこと(著者の主張)

本書のテーマとなっているのは、「人は、自分が使っている言葉によって現実を形づくっている」という考え方である。

人は日々、自分自身へさまざまな言葉を投げかけている。

「まだ準備が足りない」
「自分には向いていない」
「失敗したら終わりだ」

そうした言葉は、ただ頭の中を流れているだけではない。少しずつ行動や選択に影響を与え、自分自身の“現実”をつくり上げていく。

本書では、こうした状態を変えるために、「会話型」の言葉ではなく、「主張型」の言葉を使う重要性が語られている。

「〜したい」「〜すべき」といった曖昧な言葉ではなく、「自分はこうある」「これは受け入れない」と、自分自身を定義するような言葉を使うことで、人は少しずつ行動を変えていくことができる。

また印象的なのは、「世間的な成功」を無条件に肯定していない点である。

高年収、大企業、有名企業。世間では“正しい選択”として扱われがちなものでも、それが本当に自分にとって必要なのかは別問題である。

他人の価値観をそのまま生きるのではなく、「自分はどうありたいのか」を見つめ直すこと。そのために、自分自身へ向ける言葉を変えていくことの重要性が、本書では繰り返し語られている。

本書を読んで感じたこと(私見)

「人は、自分が思っている以上に、自分自身の言葉に支配されている」という視点が印象的である。

これまで、「性格は簡単には変わらない」「自信がある人だから行動できる」と考えてしまいがちだった。しかし本書を読んでいると、むしろ先に行動や言葉があり、それによって“自分らしさ”が形づくられている側面も大きいのではないかと感じさせられる。

特に興味深かったのは、「何を証明しようとしているのか」という考え方である。

人は無意識のうちに、「自分はダメな人間だ」「自分には価値がない」といったことを証明するような行動を取ってしまうことがある。

一方で、そのエネルギーを別の方向へ向けることもできる。

「自分はやり切れる人間だ」
「自分は継続できる人間だ」

そうした言葉を使い続けることで、少しずつ行動や選択が変わっていくのである。

もちろん、言葉を変えたからといって、人生が劇的に変わるわけではない。しかし、自分自身へ向ける言葉が変われば、物事の見え方や行動基準が変わっていくのは確かだろう。

「なぜいつも同じところで立ち止まってしまうのか」
「なぜ自分に自信を持てないのか」
「なぜ他人の価値観に振り回されてしまうのか」

そんな違和感を抱えたことがある人にとって、多くの示唆を与えてくれる1冊である。

自分なりの“現実”を見つけるために

あなたに最も影響を与える人物は誰だろうか。あなたに最も影響を与える人物は誰だろうか。

両親、兄妹、先生・恩師、婚約者など、人生に大きな影響を与える人物は確かに存在する。

しかし、どんなときでも、最も長くあなたに影響を与え続ける存在は誰だろうか。そう、あなた自身である。

どんなに努力をしても、あなたは自分の考え方や思考から完全に逃れることはできない。普段どんな言葉を自分に向けているかは、気づかないうちに行動にも表れていく。

では、あなたの考え方を変えるには、どのような行動が必要なのだろうか。どうすれば、自分を形づくっているものを変えることができるのだろうか。

自分を形づくるものは何か。その問いを考えるうえで、興味深い1冊がある。

あなたはあなたが使っている言葉でできている】(ゲイリー・ジョン・ビショップ  著 / 高崎 拓哉 訳)

ゲイリー・ジョン・ビショップ

スコットランド出身の自己変革コーチ・著述家。厳しい現実を直視させるストレートな語り口と、行動を促す実践的なメッセージで支持を集めている。精神論だけに頼らず、「人は自分の思考や言葉によって現実を形づくっている」という視点から、自己認識や習慣の変化を促すアプローチを展開。世界各国で読まれ、多くの読者に影響を与えている。

高崎 拓哉

翻訳家。ビジネス書や自己啓発書を中心に、多数の海外書籍の翻訳を手がける。原著のニュアンスや熱量を自然な日本語へ落とし込む翻訳に定評があり、読みやすさと理解のしやすさを両立した訳文が特徴。心理学・思考法・コミュニケーション分野の書籍翻訳にも数多く携わっている。

あなたを動かしている“言葉”の正体

「自分には向いていない気がする」
「どうせ失敗するかもしれない」
「もっと頑張れる人間にならなければならない」

人は、こうした言葉を思っている以上に自分自身へ投げかけながら生きている。
そして、その言葉は少しずつ行動や選択に影響を与えていく。新しい挑戦を避けたり、自分の可能性を狭めたりしてしまうことも少なくない。

このように、人によっては新しいことにチャレンジすることが得意な人もいれば、失敗を恐れてなかなか行動が起こせない人もいる。また、「お金を稼げるようになることこそ成功」「大手企業に入ることこそが大切」と、世の中的な価値観に耳を傾けてしまっている人も少なくない。

新しいことに対して腰が重い人は、「失敗したらどうしよう」という不安を抱えていることが多い。うまくいく可能性が十分にあったとしても、その不安がブレーキになってしまうのである。

また、「年収が高い方が幸せだ」と考えるのも、やはり自分の意識によるものだ。一見、自分自身の考えのように思えるが、その価値観は世間一般の価値観をそのまま受け入れてしまっている場合も少なくない。

つまり、あなたの意識は、あなたが普段使っている言葉からできている。同じ状況であっても、踏み出せる人とそうでない人がいる。その違いを生んでいるのは、能力だけではない自分にどんな言葉をかけているかも、大きく影響しているのである

ただし、自分自身にかける言葉にも工夫が必要である。例えば初詣で「今年はダイエットできますように」と願っても、毎年なかなか続かない人は少なくない。

あなたは、普段どのような言葉を自分に向けているだろうか。

同書によると、「〜するつもりだ」「〜が目標だ」「〜したい」「〜すべき」といった言葉は、行動を変えることにはつながりにくいのだという。無意識のうちに、「それなら今すぐやらなくてもいいか」と感じてしまうからである。

一方で、使うべき言葉として挙げられているのが、「自分は〜だ」「〜を歓迎する」「受け入れる」「主張する」といった言葉である

この二つの違いは、「会話型」か「主張型」かという点にある

会話型とは、自分自身や他人の人生について、意見を言ったり判断を下したりする言葉である。イメージとしては、自分の心の中に流れ込んでくる周囲の声に近い。

一方、主張型は、現在形で自分自身に宣言するような言葉である。周囲のノイズに流されず、「自分はこうある」と定義する言葉とも言える。

特に、やめたいことがあるとき、「自分は〇〇しない」と言葉にすることには意味がある。そうした言葉の積み重ねが、少しずつ自分の行動を形づくっていくのである。

自分を変える“言葉”の使い方

では、具体的にどのような言葉を使って自分を形づくっていけばよいのだろうか。

本書には、自分との向き合い方を変えるための言葉が数多く登場する。ここでは、その中でも特に印象に残ったものをいくつか紹介したい。

本当に大切なものに集中しよう

「やりたい気がする」「やりたくない気がする」といった曖昧な感情ではなく、「やる意志があるかどうか」で物事を見ると、世界がよりクリアに見えてくるのだという

それがよく表れるのが、キャリア選択である。

「年収が高い仕事に就きたい」というのは、多くの人が一度は思い描く理想だろう。しかし、自分がどのような生活を望み、どの程度の収入があれば満足できるのかを具体的に整理している人は、意外と少ない。

そこそこの年収でも、退勤後や休日に自分の時間をしっかり確保できる方が、人生に充実感を与えてくれる人もいるかもしれない。

今は、他人の暮らしや成功が簡単に見えてしまう時代である。だからこそ、「世間的に正しいもの」を、そのまま自分の理想だと思い込みやすい。

しかし、それが本当に自分の人生に必要なものなのかは、改めて考える必要がある。心から求めていないものへ努力を注ぎ続けることは、かなりの苦行だからである。

どんなものにも解決策はある

人が問題に対して頭を抱え、行き詰まってしまう理由の一つは、「目の前の問題を整理できていないこと」にある

例えば会社であれば、売上向上、利益改善、認知度拡大、業務改善を一度に解決しようとしてしまう状態である。

もちろん、一つの施策で複数の課題が改善されることもある。しかし、すべてをまとめて解決しようとすると、何から手をつけるべきか分からなくなってしまう。

だからこそ、一つ一つの問題を切り分け、丁寧に向き合うことが重要になる。問題を整理して考えることで、状況は少しずつ見えやすくなっていく。

とはいえ、「どんな問題にも解決策がある」と言われても、渦中にいるとそうは思えないことも多い。

著者によれば、そのようなときは、問題そのものではなく、「問題に対する印象」に飲み込まれている状態なのだという。

そんなときこそ必要なのが、課題を俯瞰すること、つまりズームアウトである

全体像を見直すことで、「本当の問題は何か」が少しずつ見えてくる。そして、今までとは違う視点やアプローチを考えられるようになる。

問題は、それにまとわりついている感情や印象から切り離されることで、意外なほど整理されることも少なくないのである。

自分は何に勝っているのか?

人間は、何かを証明する戦いに勝ちながら生きている

例えば、物事をギリギリまで先延ばしにすることで、「自分はだらしない人間だ」「時間がないから仕方ない」といったことを、無意識に証明し続けている場合がある。

この言葉を聞いて、どのような感覚を抱くだろうか。

「そんな馬鹿な」と思う反面、どこかで「わからなくもない」と感じてしまう人もいるのではないだろうか。

例えば、自分の不遇な環境を「親のせいだ」と証明したいと思っている場合、人は無意識のうちに、「自分には価値がない」「自分は成功できない」といった現実を補強するような行動を選んでしまうことがある。

大切なのは、今の自分に問いを投げかけることである

なぜその行動を取ったのか。その発言によって、何を証明したかったのか今の自分は、一体どんな戦いに“勝って”いるのか

おそらく、最初に思い浮かぶのは、あまり前向きではないものかもしれない。

しかし、本書が勧めているのは、「何かを証明したい」という欲求そのものを消すことではない。

そのエネルギーを、自分にとってプラスになる方向へ向けることである。

例えば、「自分はスタートは遅いものの、最後までやり切れる人間だ」「自分は同じことを継続できる人間だ」と証明しようとすることで、これまでとは違う領域で行動を積み重ねていくことができる。

人はみな、自分なりの勝ち筋を持っている

大切なのは、それをどこへ向けるかである。自分が力を発揮できる場所を意識的に選ぶことで、その性質は自然と良い方向へ働いていくのである

あなたは、あなたが使っている言葉でできている

人は、自分が思っている以上に、自分自身へ向ける言葉に影響を受けながら生きている。

「どうせ自分には無理だ」
「失敗したらどうしよう」
「まだ準備が足りない」

そうした言葉は、一見ただの思考のように見える。しかし、その積み重ねは少しずつ行動を変え、やがて“自分らしさ”のようなものを形づくっていく。

反対に、「自分はこう生きる」「これは受け入れない」と言葉を変えることで、人は少しずつ選択や行動を変えていくこともできる。

もちろん、言葉を変えたからといって、人生が急激に変化するわけではない。だが、自分に向ける言葉が変われば、見える景色や行動の基準は確実に変わっていく。

本書が教えてくれるのは、単なるポジティブシンキングではない

世間や他人の価値観を無意識に受け入れるのではなく、「自分はどうありたいのか」を言葉によって定義し直していくこと。その積み重ねによって、自分自身を形づくっていくことの重要性である。

普段、自分がどのような言葉を使っているのか。何を証明しようとしているのか。どんな人生を、自分自身へ語り続けているのか。

もし今、自分の考え方や生き方に少しでも違和感を抱えているのであれば、一度立ち止まって、自分の“言葉”を見直してみてもよいのかもしれない。

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