『いい人』ではなく『合う人』の採用戦略

マーケティングとブランディング
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はじめに — 読む前に押さえておきたいこと

あなたはこんな悩みを抱えていないだろうか?

・「いい人」がなかなか採用できず、毎年採用課題に頭を悩ませている
・応募数はあるのに、自社に合う人材が見つからず採用に結びつかない
・従来の採用手法や評価基準で成果が出ず、新しいやり方を模索している

多くの企業にとって、採用は企業の成長や競争力に直結する重要なテーマだ。しかし、「良い人材が足りない」と嘆く一方で、実は自社に合う「本当にいい人」を採れていない場合も少なくない。

本書が示すこと(著者の主張)

・採用の課題は単なる「人材不足」ではなく、採用の基準や評価軸のズレにある
・高学歴や実績のある「ハイスペック人材」ではなく、自社のスタイルに合う人材の採用が成功の鍵
・価値観の一致だけでなく、行動や判断の「スタイル」まで言語化し、具体的に伝えることが重要
・自社「らしさ」を社員の行動や思考から浮き彫りにし、それを基準に人材を見極めるのが効果的

著者は、多様な企業の採用支援経験から得た知見をもとに、従来の常識にとらわれない採用の新しい視点と具体的な実践策を提示している。

本書を読んで感じたこと(私見)

採用の悩みは単なる人材不足の問題と思い込んでいたが、実際は自社に合う人材を見つける基準のズレが大きな原因だと気づかされた。 特に意外だったのは、「カルチャーマッチ」だけでは十分ではないという点だ。価値観や雰囲気が合っていると思っても、行動様式や判断のスタイルが合わなければ、結果的に活躍できない可能性が高い。 この視点は自分の中での採用の常識を覆すものであり、採用基準を行動レベルまで掘り下げて考えることの重要性を改めて認識させられた。

「いい人が採れない」は単なる人材不足か?

なかなか“いい人”が採れない

採用に関わる誰もが一度は感じたことがある悩みではないだろうか。

エントリー数は一定あり、給与水準も決して低くない。企業としての知名度も十分だ。それにもかかわらず、「この人だ」と思えるような人材に出会えない。

この悩みは、業種や企業規模を問わず、実に多くの企業に共通している。たとえ業界トップシェアの企業や有名なtoCブランドであっても、「本当に自社で活躍できる人材」の採用は決して簡単ではない。

この状況を単純に「人材不足」と片付けてしまっていいのだろうか。

実はそうではない。

採用市場にエントリー数があっても、自社が求める「いい人」が定義されていなかったり、従来の採用手法が今の時代に合わなくなっていたりすることは非常に多い

つまり、採用難は単なる「人材不足」ではなく、「何をもっていい人とするか」「どうやって採るか」という根本的な課題の表れなのである

どんな会社も頭を悩ませるこの問題。今回は、これを解消してくれる1冊を紹介する。

これまでと同じ採用手法で大丈夫なのか?と悩んだときに読む 採用の新基準】(秋山真 著)

秋山真

No Company, inc. 代表取締役社長。2021年に同社を創業し、SNSビッグデータを活用した採用広報支援を行う。これまでにスタートアップから大手企業まで100社以上の採用活動を支援し、人事・採用分野での講演や執筆活動も多数。Z世代の価値観や行動変化をとらえた発信に定評がある。

ハイスペック人材より、“合う人材”を探せ

採用活動で多くの企業が目指すのは「いい人材」を獲得することだ。学歴や職歴、スキルといった客観的なスペックの高さに注目しがちである。

しかし、実際に組織で成果を出し活躍する人材は、必ずしも単純にハイスペックなだけではない。むしろ「自社のスタイルにフィットする人材」こそが重要だ

たとえば、大企業で優れた実績を持つ人が、ベンチャー企業で同じように力を発揮できるとは限らない。プロ野球のスカウトが、学歴ではなく「選手のプレースタイル」を重視するのと同じだ。

多くの企業は「いい人」という抽象的な基準で採用競争をし、競合と激しくぶつかってしまう。それは「いい人」が誰にとっても「いい人」に見えるためだ。

では、どうすれば差別化できるのか?

答えは「自社独自のスタイルで人材を見極め、合う人を採ること」に尽きる

たとえば、

  • 「じっくり時間をかけて正確に仕上げる」ことを良しとする会社
  • 「スピード重視でトライ&エラーを繰り返す」会社

では、同じ人材でも活躍できるかどうかは大きく異なる。

つまり、「いい人」の定義は企業ごとのスタイルによって変わるのだ

この視点を持つことが、採用における最大の差別化ポイントである。

価値観よりも、行動のリアルを伝える

「自社に合う人を採りたい」と願う企業は多い。しかし、その判断基準として「価値観の一致」や「カルチャーマッチ」だけに頼るのは危険だ

なぜなら、価値観は似ていても、実際の行動や判断スタイルが異なれば、チームでの働き方や成果に大きなズレが生じることがあるからだ。

重要なのは「どう働くか」だけでなく、「なぜそう働くのか」という背景や理由まで理解し、伝えることだ。

たとえば「成長できる会社」という言葉一つをとっても、

  • 失敗を恐れず挑戦を推奨する文化なのか
  • 実力主義で成果とスピードを重視する環境なのか

では求められる人材像が大きく変わってくる。

そのため、自社のスタイルを表面的なスローガンやパーパスだけでなく、具体的な行動レベルまで言語化し、求職者に伝えることが求められる

どんな場面でどのような判断や行動が評価されるのか。

日常の働き方やチーム内の信頼形成の仕方を具体的に示すことが、自社に合う人材を見極めるための確かな指標となる。

今、採用で必要なのは、抽象的な価値観ではなく、リアルな行動スタイルのすり合わせである

自社の「らしさ」を知る最も確実な方法

採用を成功させるために欠かせないのは、「自社のスタイルに合う人材」を見つけることだ。

とはいえ、自社のスタイルとは何か?そして、他社とどう違うのか?客観的に理解するのは簡単ではない。

そんなときに有効なのが、社内の“活躍している社員”に着目する方法だ。

もし、多くの社員が自社のスタイルにフィットしていると感じるなら、その共通点を探してみよう。

たとえば、

  • 「トライ&エラーを重ねて成長する」姿勢が評価されているのか
  • 「立場に関係なく意見を言い合う文化」なのか
  • 「ノウハウや知識の共有を重視する風土」なのか

こうした実際の行動や価値観は、活躍している社員の中に色濃く表れている。

また、活躍する社員とそうでない社員が明確に分かれる場合は、両者の思考や行動の違いを比較し、評価されるスタイルの輪郭を浮かび上がらせよう。

こうして浮かび上がった自社のスタイルは、経営理念やパーパス以上にリアルで説得力のある指標となる

「我が社を知る」とは、理想を語ることではなく、今の組織で成果を上げている“リアルな人材”を通して自社の本質を理解することだ

この理解こそが、採用における「本当に合う人」を見つける第一歩となる。

これからの採用を成功に導くために大切なこと

採用において「いい人が採れない」という悩みは、多くの企業が共通して抱えている。だが、その原因を単なる人材不足に求めるのは的外れである。

重要なのは、自社の特徴や働き方に合う人材を見極め、採用すること。そのためには、表面的な価値観や履歴書上のスペックだけでなく、実際の行動や判断のスタイルまで理解し、伝える必要がある。

自社の「らしさ」を言語化し、それに合う人材を見つけることが、採用成功への第一歩となる。従来の手法にとらわれず、データや行動に基づいた採用設計が、今後ますます重要になるだろう。

採用には、確かな基準を持ち、戦略的に取り組むことが求められている。

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