はじめに — 読む前に押さえておきたいこと
あなたはこんな悩みを抱えていないだろうか?
・自分の強みが何かわからず、適職が見つからないと感じている
・どんなに努力しても仕事でうまく活躍できている実感が持てない
・自分に合った働き方やキャリアの方向性をどう見極めればいいか迷っている
仕事やキャリアに向き合う中で、自分の能力や価値を見極めることに悩む人は多い。適職とは何か、強みとは何かという問いに対し、表面的な答えだけでは納得できないことも多いだろう。
本書が示すこと(著者の主張)
・強みとは「変わるものである」という事実に着目し、成長や環境変化に応じて再評価する必要がある
・成功体験の振り返りを通じて、自分の再現性のある強みを具体的に言語化できる手法を提示している
・職種や業界といった外側の条件に焦点を当てるのではなく、自分の内面にある能力に向き合うことの重要性を説く
著者は適職探しにおいて、外的条件に左右されがちな一般的な考え方から一歩踏み込み、自分自身の内側にある強みの理解と更新こそが成功と適職の鍵であると論じている。
本書を読んで感じたこと(私見)
強みは固定的なものではなく、時間とともに変わっていくという視点は新鮮であり、だからこそ定期的な振り返りの重要性を改めて実感した。
また、適職を「職種や業界の選択」として捉えるのではなく、「自分の能力を活かせる環境や役割を見つけ、育てていくプロセス」として捉える視点が、自分のキャリア観を深めてくれた。
この本は単なるノウハウ書ではなく、自分のキャリアを主体的に考え続けるためのマインドセットと具体的な道筋を示してくれる一冊だと感じている。
正しい努力で適職を掴むために
自分の強みを見つけ、それを活かせる仕事に就く。これは一見シンプルで当たり前のように思えるが、実際にこれを実現できる人は決して多くない。能力が重宝され、どの会社でも活躍できる存在になることは、誰もが望むことだ。
しかし、強みを見つけることは簡単ではない。自分では気づいていないことが強みであることは少なくなく、さらに求められる強みは年齢や経験、環境の変化に伴って変わっていく。
つまり、何となく探しても仕事で活きる強みは見つからない。強みは一度見つけたら終わりではなく、成長とともに変化するものだと理解することが肝心である。そのためには正しい分析の手順を踏み、自分の可能性を言語化していく必要がある。
本書は、そんな「仕事で活きる強みの見つけ方」を求める人にこそ手に取ってほしい一冊である。
【適職の結論 あなたが気づいていない「本当の強み」がわかる】(宇都宮隆二(Utsuさん) 著)
宇都宮隆二(Utsu)
キャリア戦略の専門家。大学卒業後、人材業界での経験を経て、独立系キャリアコンサルタントとして活動を開始。多様な働き方やキャリア構築をテーマに、企業研修や個人向けキャリア相談を行っている。実体験と豊富な事例に基づく論理的かつ現実的なアドバイスに定評があり、講演・執筆活動も精力的に行っている。
強みを可視化する「六角形」
日本人は失敗から学ぶことに長けている。過去の失敗を振り返り、反省することで同じ過ちを繰り返さないように努めてきた。
だが、過去の成功を振り返ったことはあるだろうか。「なぜ成功したのか」を深く掘り下げて考えたことはあるだろうか。
多くの人は成功の分析をほとんどしていない。失敗は「うまくやろうとしてうまくできなかった」というイレギュラーな出来事だが、成功は「うまくやってうまくいった」予定通りの結果であるため、振り返りの対象になりにくい。
しかし、どんな成果にも、その人なりの強みが必ず活きている。だからこそ、過去の成功を振り返り、自分の強みを言葉にして整理することが重要である。
そこで役立つのが「強みの六角形」だ。六つの頂点に「分析力」「巻き込み力」など、自分にとって武器となる能力を配置する。
それぞれの能力を「すごく得意」「得意」「まあまあ得意」の三段階で評価することで、形は歪でも、自分独自の強みの輪郭が浮かび上がる。
強みを考える際に大切なのは、「過去の成功をどの能力が支えていたのか」を明確にすることだ。大きな成功でなくても「確かな手応えを感じた経験」でも構わない。六角形を埋めるとは、自分が実感をもって自信を持てる能力を言葉にする作業であり、そこには再現性や実績が伴う。
また、能力を細分化することも重要だ。例えば営業力で結果を出していても「話す力」「聞く力」「決断力」「突破力」と分けることで、より鮮明に強みを捉えられ、転職時などにも活用しやすくなる。
20代のビジネスパーソンにとって、六角形に書かれた能力はその人のポテンシャルを示す。ポテンシャルを把握できれば、自分の価値が理解でき、努力すべき方向が明確になる。
ただし、仕事で評価される能力は年齢や経験とともに変わるため、六角形も定期的に振り返り、更新していく必要がある。
六角形を更新し「自分らしさ」を固める
強みの六角形は、一度作って終わりではない。数年後に振り返ることで、初めてその真価を発揮する。
30代になると、他者との違いがより鮮明になる。つまり「仕事において自分がどのように価値を発揮しているか」が具体的にわかるのだ。
20代に作った六角形は過去の成功に基づくポテンシャルの地図に過ぎないが、年齢を重ねると実際に成果を出している能力が明確になる。
この段階で再度、六つの強みを「すごく得意」「得意」「まあまあ得意」の三段階で評価し直すことが重要である。
著者は「巻き込み力は同僚に限定されていたが、一対一の説得では確実に成功させている」と振り返っているが、多くの人はこのように形が変わるはずだ。
ポテンシャルとしての強みと、実際に成果を上げている強みは必ずしも一致しない。周囲の評価や経験の積み重ねによって強みは変わり、不変ではない。
こうして定期的に振り返り更新を繰り返すことで、自分なりの価値提供の型や勝ち筋が明確になり、適職に近づける。
強みの六角形は、自分らしいキャリアを築くための確かな土台となるのである。
「適職の結論」が示す本質
多くの人は「成功」と聞くと、単に「失敗しないこと」や「うまくいくこと」と捉えがちである。しかし本書が教える本質は、成功体験を丁寧に振り返り、その背後にある自分の強みを具体的に言葉にすることにある。
こうした振り返りによって、自分を支えてきた力の正体が明らかになり、それは再現性のある「自分の強み」として定着する。しかも、それは独りよがりな自己満足ではなく、実際に周囲から評価され、価値として認められるものでなければ意味がない。
また本書は、「強みは時間とともに変わっていくものだ」という、見過ごされがちな大切な事実に気づかせてくれる。経験や役割、環境の変化に応じて強みは成長し、また形を変える。強みとは、自分だけのものではなく、周囲との関係性の中で形作られ、言葉になるものなのだ。
適職を考えるとき、多くの人は「どの職種か」「どの業界か」といった外側の条件に意識が向かいがちだ。しかし、本当に大切なのは、自分の内側、つまり自分自身の強みや価値を深く見つめることである。
未来の理想像を描き、「どうなりたいか(To Be)」を考えることはもちろん重要だ。しかし同時に、過去の成功や経験を振り返り、「自分には何ができたのか」「何が周囲から評価されてきたのか」をしっかりと見極めることも不可欠である。
適職とは、単なる一度きりの目標ではなく、成功を繰り返し振り返り、強みを言葉にして更新し、それを次の場で活かし続ける「成長のプロセス」そのものである。自分自身の変化とともに適職も形を変え、磨き上げていくものである。
本書は、外側に答えを求めるのではなく、自分の内側を言葉にし、周囲との関わりの中で磨き続けることの大切さを示す、まさに「適職探しの新たな視点」を提供してくれる一冊である。
強みと適職を育てるために
本書が伝える最も大きなメッセージは、適職とは固定された正解ではなく、自分の成長と環境の変化に合わせて育てていくものだということである。
強みを見つけ活かすことは適職への第一歩だが、その強みは変わり続ける。だからこそ定期的に振り返り、再評価し更新することが不可欠である。
過去の成功体験を丁寧に振り返り、自分の能力を言語化することは、自己理解の深まりと自信につながる。また、周囲の評価との対話を通じて強みは磨かれ、形を変えていく。
適職探しは外側の条件だけでなく、自分の内側を見つめ続けることが大切だ。成功の振り返りを繰り返し、強みを活かせる場を選び、挑戦を続けていくプロセスこそが、あなたにとっての「適職」を育てる。
これからも自分の強みと真摯に向き合いながら、日々の経験を積み重ねてほしい。そうすれば必ず、自分らしく輝ける道が開けるだろう。
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