「ここだけはおさえて」ポイント
どんな人にオススメの1冊?
- 効率よく仕事のパフォーマンスを上げたい人
- 仕事の進め方を工夫し、生産性を向上させたい人
- 「要領が良い人」と言われる人の行動のコツを知りたい人
ポイント:高いパフォーマンスを実現するための秘訣は、「工夫の連鎖」
「要領が良い」とは、特別な才能ではなく、日々の行動の工夫によって生まれるものである。ある行動を改善することで、別の行動もスムーズになり、結果として全体のパフォーマンスが向上する。この「工夫の連鎖」に着目し、それらを積み重ねることで、自然と高いパフォーマンスを発揮できるようになる。
オススメ度:★★★☆☆
要領よくパフォーマンスを上げるための工夫がシンプルかつ具体的に紹介されている1冊。どの工夫もすぐに試せるものであり、実践しやすい点が非常に使いやすい。さらに、個々の工夫が連携して、より高いパフォーマンスを引き出す仕組みが理解できる。ハイパフォーマンスを目指す人には特にオススメ。
ハイパフォーマンスは、1つひとつの工夫の連鎖から成る
ハイパフォーマーと呼ばれる人物を思い浮かべてほしい。「これだけはずば抜けている」というよりも、「あれもできるし、これもできる」という印象が強いのではないだろうか。コミュニケーション能力に優れ、資料作成が巧みで、指示の出し方も的確。さらに、人材育成にも長けている。まさに全方位的に能力が高い人物像が浮かぶ。
つまり、ハイパフォーマーとは「どの分野においても平均以上の成果を出せる人」のことを指す。
コミュニケーション、資料作成、指示出し、人材育成。これらは異なるスキルセットを必要とするため、一括りに「才能」として片付けがちだ。しかし、果たしてそれは本当に生まれ持った才能なのだろうか。
もし、それらの能力が「1つひとつの要領の良い行動の積み重ねによるもの」であるとしたら。そんなハイパフォーマーに少しでも近づけるヒントを与えてくれる1冊のご紹介。
【要領がいい人が見えないところでやっている50のこと】(石川和男・著)
石川和男
時間管理コンサルタント、税理士、大学講師、セミナー講師、建設会社の総務経理担当部長など、5つの職務をこなす多才なビジネスパーソン。 東京大学工学部を卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省し、資源エネルギー庁や中小企業庁などで多岐にわたる政策に携わった経験を持つ。
著書には、『仕事が速い人は「これ」しかやらない』(PHP研究所)や『G-PDCA勉強術 必ず目標達成できる方法』(明日香出版社)などがあり、時間管理術や効率的な働き方に関する知見を広く提供している。
本書では、そんな著者が要領よく高いパフォーマンスを発揮するための秘訣を公開している。内容は「行動力」「時間の使い方」「やめ方・捨て方・あきらめ方」「コミュニケーション」「環境整備」「問題解決」「自己管理」といった観点から、50の具体的な工夫を紹介するものだ。
本書で紹介される1つひとつの工夫は、シンプルながら効果的なものばかりである。「いつも使うものは、収納場所を決めておく」といった基本的な内容も含まれており、自己啓発書を読み慣れている人にとっては既知の情報もあるかもしれない。しかし、それこそが「誰にでも効果的なハイパフォーマー行動」である何よりの証拠ともいえる。
本書を読み進めるうちに気づくのは、要領の良い人の行動の工夫は、単体ではなく、互いに組み合わさることでより強力に作用するという点だ。ある行動Aができれば、自然と行動Bもスムーズに実行でき、そこから行動Cへと連鎖していく。こうした習慣の積み重ねが、最終的には「才能」として認識されるのではないと思ってしまう。
次章では、この連鎖のメカニズムを具体的に掘り下げていく。
「要領が良い人」の工夫の連鎖の具体例
前述の通り、要領が良い人の行動は、たくさんの工夫によって成り立っている。ここでは「効率よく仕事をこなす」「自己肯定感を高める・維持する」といった切り口から、そのメカニズムを考えてみる。
効率よく仕事をこなすための工夫
日々の業務のルーティンワーク化
継続を自然な行動にすることは、高いパフォーマンスを維持するために効果的である。人は変化を好まないため、歯磨きのようにルーティン化された行動は、無意識に実践しやすくなる。
決断を迫られると、人はつい楽な選択をしがちだ。これを防ぐために、「毎日決まった時間にメールをチェックする」「資料作成のテンプレートを活用する」「タスクの実行順を固定する」など、あらかじめ決めておくことで、効率的に仕事を進めることができる。
初動がスムーズになる環境構築
初動の遅れは、全体の効率を下げる要因となる。「いつもの場所にペンケースがない」などの些細なことで時間を取られ、リズムが乱れてしまう。それを防ぐためにも、使うものを決まった場所に置く習慣をつけることが大切だ。
しかし、すべてを完璧に整理整頓する必要はない。例えば、学習においては「前夜の勉強の続きからすぐ始められるように、本やノートを開いたままにしておく」といった工夫が効果的だ。環境を整えることで、スムーズに作業に取りかかることができる。
2つの締切の設定
締切があるからこそ、人は行動する。例えば、夏休みの宿題を最終日に頑張れるのは、「翌日が提出期限だから」だ。この心理を仕事にも応用できる。
「完成したら見せて」という漠然とした業務は、モチベーションが上がりにくい。そこで、自己設定の締切を設けることが有効だ。
また、「作業の完了」だけでなく、「作業の開始」にも締切を設定すると良い。「火曜日の13時までに着手する」と決めておくと、意識的に行動しやすくなる。「やり始めると意外と進む」という経験があるように、開始のハードルを下げる工夫が生産性向上につながる。
プライベートな行動宣言
プライベートな時間を確保できないのは、「時間があったら〇〇しよう」と曖昧に考えているからだ。
仕事を定時で終えるには、確固たる意志や業務量の少なさ、作業スピードの速さが必要だ。しかし、多くの人にとって仕事は優先順位が高く、なんとなく過ごしているとプライベートの時間は確保しづらい。
そこで、「先にプライベートの予定を入れる」ことが有効だ。スケジュールに書き込むことで、自分に対して宣言することになる。また、周囲に予定を共有すると、達成しようとする心理が働く。「18時から映画を見る」と宣言すると、自然と17時に退勤できるよう工夫するようになるのだ。
自己肯定感を高める・維持するための工夫
付箋よりノートを使う
ToDoリストが増えると、多くの人は付箋を活用する。しかし、付箋にはデメリットもある。
その1つが、「貼りっぱなしで気にならなくなる」こと。視界に入り続けることで、かえって意識しなくなってしまう。
また、優先順位の比較が難しくなるというデメリットも存在する。それぞれの付箋を同じレベルのタスクとして認識してしまい、簡単なものから手をつけてしまう傾向がある。
このように、いくつかのデメリットが散見される付箋だが、実は忘れてしまいがちなデメリットが「振り返りを行うことができない」というものだ。
付箋を消化する作業は気持ちが良いが、「工夫してできたこと」「(以前はできなかったものの)成長した自分ができるようになったこと」を「ただの完了したタスク」として扱ってしまうのが付箋なのである。
過去、特に「良かった過去」をしっかりと振り返ることは、自己肯定感を高めることに寄与する。だからこそ、著者がオススメしているのが、ノートを活用することだ。
ノートを活用すると「過去に自分がやっていたこと」が残る。「どれくらいのスピードであったか」「どんなことができるようになったか」も実際の記録として確認できる。書く対象を変えるだけで、付箋では意識を向けにくい「できたこと」に焦点を当て、自己肯定感を高めることができるようになるのだ。
SNSを自分のために使う
「あなたはなぜSNSを利用しているのか?」と聞かれたら、「情報収集」「コミュニケーション」「自己表現」と答える人が多いだろう。
しかし、いつの間にか「他人の情報を収集し、自分の立ち位置を把握するため」に利用してしまっていることはないだろうか。
SNSはもはやなくてはならない存在となっており、さまざまなメリットを与えてくれるツールでもある。一方、受動的にも世の中や他者の情報が入ってくる状態を実現できるため、いつの間にか「比較する」思考に陥りがちだ。その結果、どうしても劣等感や焦りを感じてしまいやすい。
著者が薦めているのは、SNSを正しく活用し、自己成長に繋げていくこと。「情報収集のため」「コミュニケーションのため」「自己表現のため」に利用し、昨日の自分を超えるためのツールとして使うのが理想的だ。
情報は自分の「外」から得るものだが、それを自分の「内」に還元する意識を持つことが大切だ。特に「SNS=プライベート」と捉えている人は、つい受動的に情報を受け取り、他者と比較する思考に陥りやすい。だからこそ、SNSを上手に活用することを意識してみてはいかがだろう。
まとめ – 小さな工夫がつながると、大きな違いになる
要領よく仕事を進め、自己肯定感を高めるための工夫は、決して特別な才能や環境に依存するものではない。日々の習慣や環境を整えることで、誰でも再現できるものだ。
ルーティン化によって無駄な決断を減らし、初動をスムーズにする環境を整える。締切をうまく活用し、行動を後押しする仕組みをつくる。これらの工夫は、仕事だけでなく、プライベートの充実にもつながる。そして、行動を振り返ることで、自分の成長を実感し、自己肯定感を高めることができる。
あなたの毎日の行動にも、無意識のうちに続けている工夫があるはずだ。もし「もっと要領よく動けるようになりたい」と感じているなら、一つひとつの行動を見直し、そこにどんな工夫を加えられるか考えてみよう。小さな改善の積み重ねが、あなたのパフォーマンスを大きく変えていく。
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